日本医師会定例記者会見 9月20・29日
松本吉郎会長は、2024年4月1日に医療措置協定に関する改正感染症法が施行されるとともに、「新興感染症対策」を「5疾病5事業」の6番目の事業とする第8次医療計画が開始されることを見据えて、日本医師会としても積極的に診療所による新興感染症対策を支援していく意向を示した。
松本会長は、まず、「改正感染症法による、医療措置協定を中心とする感染症の医療提供体制と医療計画の新興感染症対策は一体となっている」とした上で、医療措置協定の考え方については、コロナ対応をベースにしており、①新興感染症発生初期は、従来の特定・第一種・第二種の感染症指定医療機関が対応②次いで、特別な協定を締結した流行初期対応を担う医療機関が加わって対応③新興感染症発生の公表から3カ月後をめどに、公立・公的医療機関等が中心に参画④公表から6カ月後をめどに、一般の協定締結医療機関が多数加わり対応―とされていることを説明。「一般の医療機関が多数参加する段階では、各地で感染症がまん延し、多くの方々が不安を抱いている状況が想定される。その一方で、感染防御や検査方法の研究開発が進展し、PPE(個人防護具)が一定数供給されていることが期待されることから、その時のウイルスの性状や強毒性にもよるが、感染拡大に対して地域の診療所の努力により、各地で多数の患者を診察する体制を築くことは可能」との考えを示した。
多くの診療所では、保健所等の行う感染症の発生状況・動向の把握調査にも協力するとともに、重症化リスクを抱え、継続的な医療が必要な患者を守る責務があるとし、建物の構造上、ゾーニングができない場合等には、通常医療を分担したり、地域医師会が行う臨時の発熱外来に参画できるとした。
更に、松本会長は、国際的な比較から、コロナによる人口当たり死亡者数や陽性者の致死率の低さなど、日本が相当の医療実績を積み上げてきたことにも触れ、「全国の診療所の医師が懸命に対応し、平時から地域に根差して住民の健康を守り、かかりつけ医としてご尽力されてきたことの表れでもあると言える」として、診療所の果たした役割の重要性を強調。
その上で、「日本医師会は、次のパンデミックに向けて、全国の都道府県・郡市区等医師会の協力の下、協定締結医療機関か否かを問わず、平時では地域医療の第一線を担い、有事でも相応の役割を果たしている診療所の新興感染症への対応力を更に高めていく」と述べ、その方策として、診療所の医師や医療従事者を主な対象とした研修を企画していることを明らかにした。
具体的には、本年7月30日に日本医師会館で実施したJMATの感染対策研修を基にプログラムを検討し、全国モデルとする方向であり、都道府県・郡市区等医師会に対して、eラーニングのシステム及び教材等のコンテンツの提供やマネキンなどの研修機材の貸し出しも行う予定であることを報告した。
また、松本会長は、「新興感染症対策は医療措置協定だけで捉えるべきではない」と指摘。地域の診療所や病院が新興感染症対策に力を注げる環境づくりも大切だとして、①国に対しては、平時の備えとともに、有事には内閣感染症危機管理統括庁や日本版CDCである「国立健康危機管理研究機構」から最新の情報を現場に迅速かつ的確に提供する②PPEや検査キット、治療薬、ワクチンが十分に供給される―ことを求めた他、医療従事者に対する風評被害、差別的な取り扱いの防止策の徹底も併せて要請していく考えを示した。
プロジェクト委員会を設置
なお、この件に関して、日本医師会では10月3日に開催された令和5年度第19回常任理事会において、「診療所における新興感染症対策研修検討委員会(プロジェクト)」を医師会役員や有識者により設置することを決定した。
本プロジェクト委員会は、地域に根ざして診療活動を行っている全国の診療所がコロナ対応に尽力してきたことを踏まえ、全国の都道府県・郡市区等医師会と共に、診療所の重要性を対外的に発信することに加え、診療所の新興感染症への対応力を一層高める取り組みを行うことを目的としており、「診療所を対象とした新興感染症対策研修」のプログラムや研修実施方法等を検討していくことになっている。
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日本医師会地域医療課、健康医療第二課 TEL:03-3946-2121(代)