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令和5年(2023年)10月5日(木) / 日医ニュース

「関東大震災発災から100年~未来に生かされるべき教訓~」をテーマにシンポジウムを開催

 日本医師会シンポジウム「関東大震災発災から100年~未来に生かされるべき教訓~」をこのほど無観客で行い、その模様を収録した動画を9月1日より、日本医師会公式YouTubeチャンネルで公開した。
 本シンポジウムは、関東大震災が発災してから今年で100年になることを受けて、国民に改めて日頃からの備えを呼び掛けるとともに、日本医師会の果たす役割について知ってもらうことを目的として開催したものである。
 冒頭のあいさつで松本吉郎会長は、「災害の発生を防ぐことはできないが、日頃から備えをしておくことで、その被害を最小限に食い止めることができる」と指摘。本シンポジウムが災害に向けた意識と知識をもって、その備えを進めていくきっかけとなることに期待感を示した。

3名の講師による講演

 その後は、まず、3名の講師による講演が行われた。
 福和伸夫名古屋大学名誉教授は、(1)関東大震災において、東京都で被害が甚大となった一因としては、軟弱な地盤に木造家屋を密集させたまちづくりがあった、(2)阪神・淡路大震災では高層になるほど、被害が増えていた―ことなどを説明。今を知るためにも、こうした災害の歴史と向き合い、どのようなまちづくりをすべきか、総合的な視点で考える必要があるとした。
 石井美恵子日本災害医学会理事は、災害が発生した際に、どこで、どのような避難生活を送るのかを想定し、準備しておくことが重要になると強調。平時から家族と話し合っておくよう呼び掛けた。
 また、今後は災害関連死をいかに防ぐかが重要になると指摘。「そのためにも、社会全体の意識を変え、プライバシーや衛生環境が守られた中で避難生活ができる、避難者の生存権が保障された避難所とできるよう、いかに準備を進めていくかが喫緊の課題になる」とした。
 大木聖子慶應義塾大学環境情報学部准教授は、現在、多くの学校で行われている避難訓練が、できるだけ早く校庭に避難する訓練になっていることに疑問を投げ掛けた上で、自身が主に首都圏の学校で、余震や停電が起きることを仮定し、訓練の設定を教室待機に変えたところ、「教員が児童生徒を管理する」訓練から、「一人一人が今すべきことは何かを考え行動する」訓練へと変えることができたと紹介。日頃の防災訓練も、「防災の教育」をするのではなく、「防災を通じた教育」をするといった視点で取り組むことを求めた。

指定発言―細川常任理事

 指定発言を行った細川秀一常任理事は、「JMAT」について、被災地の医師会による活動(被災地JMAT)と、被災地にJMAT(支援JMAT)を派遣する全国の医師会との協働による医療救護活動へと、そのコンセプトが変化していることなどを説明した他、実際の映像を示しながら、日本医師会や都道府県医師会で行われているJMAT研修の模様を紹介した。
 その上で、同常任理事は自身が検案・検視にも携わっていることにも触れながら、引き続き、災害医療に真摯(しんし)に取り組む姿勢を示した。

パネルディスカッション

 引き続き行われたパネルディスカッションでは、都市部が抱える地震への課題や、知っておくべき災害知識などについて、活発な意見交換が行われた。
 久保田毅神奈川県医師会理事は、災害時医療救護本部の設置などの県医師会の取り組みの他、行政が行う個別避難計画の策定に医師会が関与することになった経緯などを紹介。国民に対しては、お薬手帳のスマートフォンへの保存や、突然の災害に備えて、1週間程度余分に内服薬を備えられないか、かかりつけ医に相談すること等を求めた。
 福和教授は、「科学技術が発展し、人間は人工環境の中に住むようになったことで災害の恐ろしさを忘れてしまっている」として、そのことを思い出すよう求めるとともに、自分が住んでいる町を知る手段として、どこにどのような防災施設があるのか、散策しながら探す「防災ピクニック」を提唱した。
 石井理事は、自分が住んでいる場所にはどういうリスクがあり、それに対して自分はどう行動することが最善なのかをしっかり計画しておかなければ、人間はなかなか行動に移すことができないと指摘。いざという時のためにも、東京都が出している「東京マイ・タイムライン」のような防災行動計画等を参考に、自らの行動をあらかじめ整理しておくよう求めた。
 大木准教授は、防災を自分事として捉え、どのような災害が自分に降りかかるのか具体的な状況をイメージしてみることを提案。その際には、例えば、「電車に乗っている時に地震が起きたけれど、モバイルバッテリーや懐中電灯を入れた防災ポーチを持っていたから、外部との連絡に役立った」といった望ましい結果から逆算して、今やるべきことを考えることも必要なのではないかとの考えを示した。
 https://www.youtube.com/watch?v=DxRuSzwelNA

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