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令和5年(2023年)10月20日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

財政審財政制度分科会の議論を受けて令和6年度診療報酬改定に対する考えを説明

財政審財政制度分科会の議論を受けて令和6年度診療報酬改定に対する考えを説明

財政審財政制度分科会の議論を受けて令和6年度診療報酬改定に対する考えを説明

 松本吉郎会長は9月29日に記者会見を行い、財政制度等審議会財政制度分科会での議論を受けて、令和6年度診療報酬改定に対する日本医師会の考えを説明。次回の改定は異次元の改定になると指摘するとともに、プラス改定にする必要性を強く主張した(別記事参照)

 松本会長は最初に、「今回の診療報酬改定は、『従来の改定』に、『物価高騰や賃金上昇への対応』『新型コロナへの対応』を加えた3点の論点がある、異次元の改定になる」と説明。
 「物価高騰や賃金上昇への対応」については、これまでデフレ下で行われてきた改定とは異なり、今回は昨今の物価高騰や賃金上昇の中での対応になると指摘し、「約900万人もが従事している医療・介護分野の賃金を上げることで、わが国全体の賃金上昇と地方の成長の実現が見込める」との考え方を示した他、医療機関の給与体系は人事院勧告に準じていることも多く、今年8月に公表された令和5年人事院勧告におけるベースアップの求めにも連動して対応する必要があるとした。
 また、これまで繰り返し主張してきた、昨今の水道光熱費、食材料費等の物価高騰を公定価格である診療報酬では転嫁できない問題については、「従来の改定」とは別に検討する必要があるとの見方を示した。

ストックは賃上げの原資とするものではない

 「新型コロナへの対応」では、「新型コロナに関する医療費について、日本医師会は、医療界が一致団結して、しっかり向き合って対応した証拠だと考えている」と強調。財政審において、コロナ補助金等による内部留保の積み上がりを賃上げ原資等として活用する方策の検討が主張されていることに触れ、「賃上げはフローで行うべきであり、あくまでもコロナ禍という特殊な状況で感染対策に使うためのストックは、賃上げの原資とするものではない」と反論した。
 更に、補助金等の収入は増えた一方で、感染対策等に伴う支出も増えていることや全ての医療機関が補助金を受け取っているわけではないことを指摘し、「コロナ補助金等は、昨今の物価高騰や賃金上昇への対応に充てるべきものではない」と改めて強調。令和6年4月より、恒常的な感染症への対応がなされることについては、同月から施行される改正感染症法に基づく協定を結んだ医療機関が、次の感染症流行に備えた体制整備に活用することを求めた他、コロナ補助金の一部が防衛財源として746億円拠出されていることにも触れた。

一受診当たりではなく、一人当たりの医療費で経営状況を判断すべき

 財政審に提出された資料に記載された内容については、まず、「診療所における一受診当たりの医療費の推移」に関する記載に対し、「財政審は報酬単価や分配のあり方などの見直しの必要性を指摘しているが、受診延べ日数は年々下がっており、コロナ禍において急減して以降、十分に回復していない」と指摘。コロナ禍の影響で、受診控えや長期処方のみならず、治療が中断される場合も出てきているとした。
 また、財政審が、令和4年度医療費は"一受診"当たりで、近年の物価上昇率を超えるプラス4・3%と指摘していることに対しては、"一人"当たりの医療費はコロナ特例分を除いてプラス2・4%であり、近年の物価上昇率の水準を下回っていることを説明。「一受診当たりの医療費ではなく、一人当たりの医療費で見るべき。診療所の一受診当たりの医療費が上がったからといって、経営状況が良くなったとは言えない」と述べた。
 加えて、日本医師会として、新型コロナが単価に与える影響の度合いを見極めるのは難しいと考えていることを説明した他、一般病院と一般診療所の損益差額率を比較したデータについては、病院の方が分母たる売上の金額が非常に大きいことから、その見方について留意するよう求めた。
 次に、「現役世代が負担する社会保険料負担」の記載については、財政審が提出した推計値は、2018年度に試算した2040年度の推計値であることに触れ、「推計値の前提となっている保険料率は現状と既に乖離(かいり)しており、岸田文雄内閣総理大臣の指示を踏まえて賃金が上昇すれば、それに伴って保険料収入の総額も増えるため、過度な料率の上昇は起きない」との見方を示し、「推計値は過大予測になっている。国民に対し、過度な不安を煽(あお)るべきではない」と述べた。
 「我が国の医療保険制度の特徴と課題」の記載については、保険給付範囲のあり方の見直しにおいて、財政審の「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」との主張とは相いれないとした上で、「国民皆保険制度では、既に小さなリスクは『定率負担』をお願いし、大きなリスクは『高額療養費』で対応するという基本的な考え方が組み込まれている。日本医師会は、国民皆保険制度において、この考え方を堅持すべきと考えている」と主張した。
 その一方で、「金融所得・金融資産を勘案した公平な負担」を求める主張については、多くの金融資産を有しているために所得を得ずとも生活できる人よりも、貯金がないことから生活のために所得を得ていることで、負担割合が高くなる人がいることを是正する方向性に関しては、日本医師会も同様の考えだとした。
 コロナ補助金等による内部留保の積み上がりに対して、賃上げの原資等として活用する方策の検討を求める記載については、前半の論点と同様の説明をした上で、「コロナ補助金等は感染対策として既に使途が決まっており、次の感染症流行に備えた体制整備に活用しなければならない」と述べた。
 医療法人等の経営情報に係るデータベースの充実について言及されていることに対しては、本年5月に公布された「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の附帯決議にも触れながら、「できる限り多くの医療機関が提出するためにも、まずは状況をしっかり把握し、その上で、慎重に対応していくことが必要」とした。
 また、「最近の医療費の動向」に関する記載に関しては、予防接種や健診、政策誘導のための補助金については、従来からこの統計の金額には含まれていないにもかかわらず、概算医療費と同じ表で、ワクチン接種支援の費用や病床確保料を追加で記載していることは極めて恣意(しい)的であると指摘。「日本医師会としては、2020、2021年度のコロナ禍による医療費減少のダメージはそのまま残っていると考えている」と反論した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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