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令和5年(2023年)11月10日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース

令和6年度診療報酬改定に向けて

 日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は11月10日、前日開催された社会保障審議会医療保険部会での議論を受け、合同で記者会見を行った。

 会見には、松本吉郎会長、高橋英登日本歯科医師会長、山本信夫日本薬剤師会長が出席した。

 松本会長は冒頭、同部会において、構成員である猪口雄二副会長が、財務省財政制度等審議会(財政審)の主張に対し、日本医師会として資料を提出した上で、(1)分析対象となっている、新型コロナウイルス感染症による変動が顕著であった期間、(2)診療所の利益率、(3)利益剰余金への誤った解釈―の3点に対し、意見を述べたことを説明。また、同日開催された公明党の政策要望懇談会においても、与党である公明党に対して、関係役員(松本会長、茂松茂人・角田徹両副会長、釜萢敏・宮川政昭両常任理事)が出席し、日本医師会の診療報酬改定に対する考え方を説明したことを紹介した。

 松本会長は、令和6年度診療報酬改定について、「議論が本格的に動き始めているが、現在、医療界の中を分断するような動きがある」と指摘。そうした中で、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会が揃って会見したことに関しては、「医療界が一体・一丸となって、診療報酬改定の大きな方向性において、声を一つにして、歩んでいくべきという強い想いがあったからだ」と説明した。

 次に、賃上げについて、支え手が減少する中での人材確保が不可欠であり、政府からも持続的な賃上げが呼び掛けられていることを説明。今年の春闘では平均賃上げ率3.58%、人事院勧告では3.3%の上昇が示されていることに触れ、「医療界においても、これらと匹敵する賃上げを実現し、岸田総理が掲げる『賃上げ』という国の重要政策を踏まえて、更に加速すると見込まれる来春の春闘にも匹敵する対応が必要」とするとともに、全従事者の13.5%にも上る医療・介護就業者数約900万人に対し、公定価格の引き上げを通じて賃上げ対応をすることは、わが国全体の賃金上昇と地方の成長の実現につながり、経済の活性化も見込めるとの見方を示した。

 物価高騰対応については、「30年近く類を見ない物価高騰の局面を迎えており、今後も続くことが見込まれる。一時的な支援ではなく、恒常的な対応が必要」と主張。公定価格により運営する医科医療機関、歯科医療機関、薬局等は上昇分を価格に転嫁することができないことから、国民の生命と健康を守るため、医療・介護分野における物価高騰、賃金上昇に対する取り組みを進め、質の高い適切な医療・介護を安定的に国民に提供する必要があるとした。

 更に、そのためには、最低限人事院勧告3.3%に匹敵する賃上げと物価高騰、加えて日進月歩する技術革新への対応のための十分な原資が必要不可欠であると指摘。今後、令和6年度診療報酬改定に向け、原資となる適切な財源の確保をしてもらうためにも、本会見の内容を踏まえた要望書(『令和6年度診療報酬改定に向けて』)を取りまとめ、三師会が一体となって政府・与党に働き掛けを行っていく方針を示した。

 続いて、意見を述べた高橋日歯会長は、まず、財政審の「医療機関は疲弊していない」という旨の主張に対し、強い不快感を示すとともに、「現場のことを見ていないのではないか」と指摘。令和6年度診療報酬改定をマイナス改定にすべきという主張に反論した。

 また、コロナ禍において国が行ったさまざまな支援について、あくまでもコロナと闘うための費用であったことを強調。こうした支援を基に、コロナと闘い収束させたとした上で、「医療界のための原資という誤解をして欲しくない」と述べた。

 賃金上昇に関しては、松本会長と同様に、公的価格であることから賃金上昇が難しく、苦境に陥っている状態であることを説明。物価高騰についても、歯科材料は輸入品も多く、円安の状況もあり負担が大きくなっているとした他、感染予防策に関連し、急増した医療廃棄物の処理が大きな負荷となっていることを指摘した。

 高橋日歯会長は最後に、「国民の幸せと健康を守るために医療を行っており、我々のために原資が欲しいと言っているのではない」と述べ、国民のためにも、しっかりと改定のための原資を確保することを要望した。

 山本日薬会長は、松本会長、高橋日歯会長の意見に「全く同感」とした上で、賃上げが求められる中、医科、歯科と同様に公的価格で運用されている薬局も、価格転嫁等ができず極めて厳しい経営状況であることを説明。加えて、6年連続の薬価引き下げによる急激な資産の目減りや、医薬品供給不足の中で適切な医薬品を備蓄、提供するための費用も増加しているとした。

 また、日薬の調査では、令和4年度の薬局の賃金ベースアップ率は、全産業のアップ率に遠く及んでいないこと、及び直近の医療経済実態調査では、約30%の薬局が赤字であったことを紹介。「ベースアップができる状況にはない」と強調するとともに、一部の大型薬局を除き、大半を占める中小薬局では人材確保にも窮しているとした。

 山本日薬会長は、最後に、「財政審の、薬局も含めて診療報酬をマイナス改定にするという主張は全く理解に苦しむ」と述べた上で、医薬品が必要な方に適切に届くという保証がなくては、国民が安心して働くことや、健康不安の解消もできず、国が目指す経済活動の更なる活発化も望めないとの見方を示し、適切な財源の確保を求めた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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