日本医師会定例記者会見 11月22・29日
城守国斗常任理事は、本年10月に実施した「医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査」の結果について報告(資料は日本医師会ホームページの「プレスリリース」に掲載)。働き方改革によって約3割の医療機関が「将来、自院の宿日直体制の維持が困難」と回答するとともに、地域医療提供体制においても救急医療体制や専門的な医療提供体制の縮小・撤退の懸念が示されたとした。
本調査は、医師の時間外労働に係る上限規制の実施が目前に迫る中、各医療機関の準備状況や医師派遣に関する動向、宿日直許可の取得状況に加え、医師の働き方改革が自院や地域医療提供体制に与える影響を把握するために実施したものである。
調査期間は10月17~31日。調査対象は全有床診療所及び病院で、1万4128施設のうち4350施設から回答(回答率30・8%)を得ており、全ての地区ブロックから約3割が回答、病床規模別の医療機関数では7割強が199床以下の有床診療所及び中小病院となっている。主な結果は以下のとおり。
【研修施設等の指定状況】
「臨床研修病院(協力型)」が多く、次いで「専門研修施設(連携施設)」が多くなっている。
【診療機能別の回答状況】
「いずれでもない」を除くと、救急告示病院、輪番制の二次救急医療病院の順であり、診療機能別の回答数が全国の承認等を受けている施設数に占める割合は、救急告示病院を除いて50%を超えている。
【特例水準の指定申請予定状況】
372件が対応(予定)しているとし、申請予定の特例水準はB水準が81・5%と最も多くなっている。
【今後の医師派遣・受け入れの状況】
「専ら医師を受け入れている医療機関」が60・7%で、「専ら医師を派遣する医療機関」が3・2%。
医師派遣をする医療機関が今後の医師の派遣予定について派遣先へ伝えた内容は、「継続する」68・1%、「一部縮小する」5・7%、「伝えていない」26・2%となっている。一方、医師を受け入れている医療機関が今後の医師の受け入れについて派遣元から伝えられた内容は、「継続する」69・0%、「一部縮小する」5・6%、「中止する」0・3%、「連絡なし」25・1%。
【宿日直許可の取得状況】
76・2%が「宿日直許可の取得あり」または「取得に向け対応中」となっている。有床診療所では31・1%、病院では94・8%が宿日直許可を取得または取得に向けた対応中であった。
【働き方改革の制度開始以降の懸念事項】
①自院の医療提供について(複数回答)
医療機関全体では、「特に変化なし」54・0%を除くと、「宿日直体制の維持が困難」30・0%、「派遣医師の引き上げ」25・1%、「救急医療の縮小・撤退」14・4%の順で懸念が示された。
内訳を見ると、有床診療所・病院共に「宿日直体制の維持が困難」「派遣医師の引き上げ」についての懸念が高く、その次の関心は、有床診療所では「周産期医療の縮小・撤退」で、病院では「救急医療の縮小・撤退」であった。
また、有床診療所・病院でブロック別に見ると、有床診療所は「宿日直体制の維持が困難」「派遣医師の引き上げ」「周産期医療の縮小・撤退」ともに九州、関東甲信越、中部の順で多い。一方、病院は、「宿日直体制の維持が困難」「派遣医師の引き上げ」が関東甲信越、九州、中国・四国の順で多く、「救急医療の縮小・撤退」が関東甲信越、近畿、九州の順で多い状況であった。
②地域の医療提供体制について(複数回答)
医療機関全体では、「特に変化なし」37・7%を除くと、「救急医療体制の縮小・撤退」30・0%、「専門的な医療提供体制の縮小・撤退」19・9%の順で懸念が示された。
内訳を見ると、有床診療所では「周産期医療体制の縮小・撤退」19・9%、「救急医療体制の縮小・撤退」18・5%、「専門的な医療提供体制の縮小・撤退」15・5%の順となり、病院では「救急医療体制の縮小・撤退」34・6%、「専門的な医療提供体制の縮小・撤退」21・7%、「その他の地域医療連携体制の縮小・不備」15・3%の順となっている。
また、有床診療所・病院でブロック別に見ると、有床診療所は「周産期医療体制の縮小・撤退」が九州、関東甲信越、中部の順で、「救急医療体制の縮小・撤退」が九州、関東甲信越、中国・四国の順で、「専門的な医療提供体制の縮小・撤退」が九州、関東甲信越、中部の順で多い状況であった。一方、病院は、「救急医療体制の縮小・撤退」が関東甲信越、九州、近畿の順で、「専門的な医療提供体制の縮小・撤退」「その他の地域医療連携体制の縮小・撤退」が関東甲信越、九州、中国・四国の順で多い状況であった。
城守常任理事は、今回の調査結果を踏まえ、「医師の派遣や受け入れの状況について、現時点で縮小もしくは未定が約3割も存在し、今後の派遣状況によっては地域医療の提供体制に大きな影響が出る可能性がある」とするとともに、医師の働き方改革が将来の地域医療提供体制に及ぼす影響を「把握できていない」と回答した割合も高かったことを危惧。
今後、都道府県別に集計した本データを都道府県医師会にフィードバックするとし、行政と共有して地元の医療機関支援への検討材料にするよう期待を寄せた他、時間外労働規制スタート直前の状況を見るため、来年2月をめどに再度、調査を行う意向を示した。
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