愛犬Sが天国へ旅立って、今年の夏でちょうど10年になります。茶色のラブラドール・レトリバーの女のコで、生後40日程でわが家へやってきました。やんちゃな仔犬だったSは、当時小学生と幼稚園児だった二人の子ども達と共に育ち、15歳の誕生日を目前にしたある夏の日に突然、天国へ旅立ちました。ラブラドールにしては高齢だったので、そのうち看取ることになるのかな、と漠然と思ってはいましたが、やはり突然の別れにショックを受けました。もっと気を配っていればもう少し長生きできたかな、とか、もっと遊んであげたり、いろいろな所へ連れていってあげれば良かったなあ、などと考えてしまい、しばらくの間はつらくてまともに写真を見ることもできませんでした。
Sが旅立って4、5年程経った頃だと思います。明け方に夢を見ました。夢を見ているな、と自分でも分かっており、その夢の中で私はベッドで寝ていました。すると、まっ白なもこもこの中型の犬が突然ベッドの中に入ってきて私に背中をくっつけてきました。背中にその白い犬の温かくて柔らかで心地良い感触が伝わってきました。その時、私はなぜかその白い犬がSだと確信しました。その犬はしばらく私に寄り添っていましたが、やがて静かにベッドから出るとどこかへ去っていきました。私は夢の中でベッドから出て、家の中や外を探しましたが、白い犬はもうどこにもいませんでした。
その後、現実に夢から覚めた私でしたが、背中には先程の夢の中に出てきた白い犬の感触がまだ残っていて、とても安らかで幸せな気分でした。私は、夢の中でSが会いにきてくれたと確信していましたが、なぜ茶色ではなく白い犬になって現れたのかが疑問でした。
白い犬の夢を見てから、更に数年後のことです。実は私は大のオカルト好き・心霊・怪談好きなのですが(とは言え、大変な怖がりで、霊感は全くのゼロです)、たまたま目にしたYouTubeで、ある霊感の強い方が次のようなことを話していました。「以前飼っていた犬が、死んだ後に全く別の犬になって夢の中に現れた。自分は生まれ変わって新しい飼い主さんの元で幸せに暮らしているよ、と知らせに来たんだと思う」。Sも私の夢の中に出てきて、生まれ変わって幸せに暮らしているよ、と知らせに来たのでしょうか。そう言えば、その白い犬は、とても奇麗で毛並みが良くいい匂いがしていて、とても大事にされているんだなあ、と感じました。
この話を家族にすると、「ただの夢だ」とか「そんなわけない」と一笑に付されてしまいました。もちろん、ただの夢だったかも知れませんが、その夢のおかげで愛犬Sに関する私の負の感情は無くなり、Sのことを思い出すと、寂しさはありますが、楽しかった思い出が浮かび、ふと笑みがこぼれるようになりました。
飼い犬にとっては、自分が死んだことで飼い主さんがいつまでも悲しんでいるのが一番つらいことだそうです。あの白い犬が私の夢の中に出てきたのは、あの時の一度きりです。私が元気に暮らしていると知って、安心したのでしょう。そして、新しい飼い主さんの元で幸せに暮らしているのでしょう。夢の中に出てきたあの白い犬の温かで心地良い感触は今でもはっきりと覚えています。
そんな、愛犬にまつわる不思議な夢の話でした。