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令和5年(2023年)12月20日(水) / 日医ニュース

適切な財源確保を求める決議を参加者全員の総意として採択

適切な財源確保を求める決議を参加者全員の総意として採択

適切な財源確保を求める決議を参加者全員の総意として採択

 国民医療を守るための総決起大会(主催:国民医療推進協議会、協力:東京都医師会)が12月4日、日本医師会館大講堂で開催された。
 大会には、約1,100名の参加者(国会議員約200名含む)が集い、参加者全員の総意として、医療・介護分野における物価高騰・賃金上昇に対する取り組みを進め、国民に不可欠、かつ日進月歩している医療・介護を提供するため、適切な財源の確保を求める決議が採択された。

 大会は、釜萢敏日本医師会常任理事の司会により開会。冒頭、国民医療推進協議会長としてあいさつした松本吉郎日本医師会長は、「物価高騰、賃金上昇の中で、安全かつ質の高い医療を安定的に提供するためには、医療・介護従事者への賃上げを行い、人材を確保することが不可欠であり、診療報酬の思い切ったプラス改定しかない」と強調。更に、賃上げについては、「どこかを削って、それを財源に回すといった発想ではなく、医療従事者を始めとする全職種の賃上げを果たすことが重要であり、それが経済の好循環につながる」と述べるとともに、賃上げと物価高騰への対応を行うことにより、医療・介護従事者の比率が高い地方を含む国内の経済が活性化され、ひいてはそれが地方創生をもたらすと指摘し、その実現に向けた理解と協力を求めた。
 引き続き、あいさつに立った協力団体である東京都医師会の尾﨑治夫会長は、「現在、医療や介護分野で働いている方達を他の産業に流出させないようにすることが大事であり、そのためにも医療、介護の報酬を引き上げなければならない」と述べ、参加した国会議員らに理解と協力を求めた。
 来賓あいさつでは、まず、田村憲久自民党政務調査会長代行が、財務省が診療報酬のマイナス改定を主張していることに触れ、「政府が賃金の3%の引き上げを求める中でマイナス改定を主張するのは驚きでしかなく、その内容は開業医を狙い撃ちにしたものになっている」と批判。「こんなことをすれば、日本の医療は崩壊してしまう。何としても賃金を上げる財源を確保しなければならず、年末に向け、日本の健康を守るための闘いに協力して欲しい」と訴えた。
 伊佐進一公明党厚生労働部会長は、「今回の改定はコロナ禍における皆さんの頑張りにお応えする改定にしなければならない」とするとともに、「政府が3%の賃金の引き上げを求めるのであれば、まずは医療従事者の賃金を引き上げるべき」と強調。また、「これまでの診療報酬改定のやり方は限界にきている。皆さんと一緒に新しいやり方を考えていきたい」と述べた。
 その後は、国会の会期中にもかかわらず、多くの衆参国会議員が駆け付け、参加者に対して「共に頑張っていこう」と呼び掛けた。
 引き続き、資料を基に本大会の趣旨を説明した茂松茂人日本医師会副会長は、まず、2023年度は春闘の平均賃上げ率が3・58%、人事院勧告が3・3%で実現されているが、医療・介護分野の賃金上昇は一部に限定されたことにより、公定価格の下で半分程度の水準(1%台)にとどまるなど、他産業に大きく遅れを取っていると指摘。公的価格を引き上げることは、他産業への更なる原動力となるばかりでなく、就業者全体の13・5%にも上る医療・介護分野の従事者約900万人の賃金を上げることで、わが国全体の賃金上昇と地方の成長の実現により、経済の活性化を見込むことができるとした。
 加えて、「岸田政権が賃上げを重要政策としていることを踏まえれば、今年の春闘や人事院勧告の上昇分との差を埋めるだけでなく、更に上がると見込まれる来春の春闘に匹敵する対応が必要だ」と述べるとともに、過去30年近く類を見ない物価高騰や賃上げの局面を迎えている現状においては、これまでとは明らかにフェーズが異なっており、近年の診療報酬改定の取り扱いとは全く異なる対応が求められると強調した。
 医療・介護分野における人材確保の状況については、医療現場では、高齢化等により需要が増加しているにもかかわらず、医療・介護分野とも、人材確保の状況が悪化するとともに、有効求人倍率は全職種平均の2~3倍程度の水準で高止まりしていることを説明。「特に介護分野では、大きな離職超過が生じており、他産業への人材流出が見られる。診療報酬、介護報酬という公定価格により運営する医療機関・介護事業所等が、人材確保や賃上げに対応するには十分な原資が必要になる」とした。
 その他、茂松日本医師会副会長は、(1)診療報酬上昇率と物価上昇率の差は明らかである、(2)コロナ禍において、医療従事者は、まさに休日・夜間返上でコロナに立ち向かい、累計対応患者数は約7700万人、累計コロナ入院患者数は約403万人に上っている、(3)これまでの新型コロナワクチンの総接種回数は4億回を、令和3年7月には一日の最大接種回数170万回をそれぞれ超えている、(4)現在、地域医療を支えてきた医療機関の閉院が続くという問題が発生している―ことなどを紹介。「患者さんの受ける治療・診療は一連のものである。医療界が一体・一丸となって、声を一つにして、国の経済対策と歩調を合わせて進んでいく」とした。
 続いて、参加団体の代表として、国民医療推進協議会の副会長でもある高橋英登日本歯科医師会長、山本信夫日本薬剤師会長、高橋弘枝日本看護協会長が適切な財源確保に向けた決意を表明。その後、加納繁照日本医療法人協会長が、本大会の決議案を朗読し、同決議案は満場の拍手をもって採択された。
 最後に、角田徹日本医師会副会長の掛け声の下、参加者全員が起立して「頑張ろうコール」(写真)を行い、会は終了となった。

今回の決議等を基に関係各方面へ上申する意向を表明―松本会長

 総決起大会終了後には四師会の会長がそろって記者会見に臨み、改めて、診療報酬引き上げの必要性を強調。更に、松本日本医師会長は、今後について、大会の所期の目的を達成し、国民皆保険制度の恒久的堅持に向けた政策につながるよう、今回の大会の決議並びに全国で開催されている同様の集会で採択された決議をもって、関係各方面へ上申していく考えを示した。

決 議
 長らく続く物価高騰には、一時的ではなく、恒常的な対応が必要である。また、支え手が減少する中での人材確保が不可欠であり、政府からも持続的な賃上げが呼び掛けられている。
 しかしながら、公定価格により運営する医科歯科医療機関、薬局、介護施設等は、その上昇分を価格に転嫁することができない。物価高騰と賃上げ、さらには日進月歩する技術革新への対応には十分な原資が必要である。
 国民の生命と健康を守るため、医療・介護分野における物価高騰・賃金上昇に対する取組を進め、国民に不可欠、かつ日進月歩している医療・介護を提供しなければならない。
 よって、適切な財源を確保するよう、本協議会の総意として、強く要望する。
以上、決議する。
 令和5年12月4日
国民医療を守るための総決起大会

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