明けましておめでとうございます。会員の皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。
本年の干支(えと)は、「甲辰(きのえたつ)」です。「甲辰」は、「成功という芽が成長していき、姿を整えていく」という意味があるそうです。日進月歩の医療界において、本年は特にさまざまな変化を迎える、まさに画竜点睛(がりょうてんせい)とも言うべき年であります。今後の医療の発展に向けて、日本医師会は本年も尽力して参ります。
本年7月3日には新紙幣が発行されますが、新千円札の肖像には、日本医師会初代会長の北里柴三郎先生が採用されました。近代日本医学の礎(いしずえ)を築いた北里先生は予防医学の重要性を説かれておりますが、我々もこの北里先生の志を受け継ぎ、治療を中心とした医療のみならず、予防・健康づくりにも引き続き貢献して参ります。
組織強化につきましては、日本医師会が令和5年度より実施した医学部卒後5年目までの会費減免の他、本会常勤役員による都道府県医師会役員への訪問・面会など、本会が実施するさまざまな取り組みに対し、各地域医師会の多大なるご理解とご協力を得る中で、その活動を深化させて参りました。こうした取り組みの結果、会員数も増加し、昨年8月には初めて17万5000人を超えるに至りました。より多くの先生方と共にわが国のより良い医療を実現するため、引き続き組織強化に向けた活動を展開して参ります。
また、患者さんの受ける診療・治療は一連のものであり、医療は各団体の連携によって支えられています。日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会、更に、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会の四病院団体協議会などの各種医療関係団体と共に、医療界は一体・一丸となって、これからも国民の生命と健康を守って参ります。
令和6年度診療報酬改定につきましては、物価・賃金の動向、保険財政や国の財政など、さまざまな主張や議論を踏まえた結果、賃上げ対応としてプラス0・61%、入院時の食費対応としてプラス0・06%、一般的な改定分としてプラス0・46%、これらを合わせてプラス1・13%となった一方、適正化としてマイナス0・25%がなされ、結果として本体改定率はプラス0・88%となりました。
三師会、四病院団体協議会、国民医療推進協議会など、医療界が一体、一丸となって対応した結果だと考えております。
また、各地域において、都道府県医師会・郡市区等医師会が、地元選出の国会議員の先生方に対して、医療が置かれている厳しい現状や医療施策への更なる理解を求める活動を実施頂いたことも大きな力になりました。
一方、本年4月からは医師の働き方改革の新制度が施行され、医師の時間外労働の上限規制が開始されます。医師の働き方改革では、「医師の健康確保」「地域医療の継続性」「医療・医学の質の維持・向上」の三つの重要な課題にしっかりと取り組むことが重要です。日本医師会は、厚生労働省から指定を受けた医療機関勤務環境評価センターの業務を中心に医療機関及び勤務医の先生方を支援して参ります。
新型コロナウイルス感染症は、昨年5月に感染症法上の位置付けが5類感染症に変更されました。わが国は、国際的に見ても、コロナによる人口当たり死亡者数や陽性者の致死率の低さなど、相当の医療実績を積み上げてきました。これは会員の皆様を始めとする全国の医療機関の先生方による懸命な対応の賜物(たまもの)と考えております。深く感謝申し上げます。
特に、診療所で対応したコロナ患者及びコロナ疑い患者数は約7700万人にのぼる上、新型コロナウイルス感染症対応における外来対応医療機関(診療・検査医療機関)の数は約5万施設となりました。更に、これまでの新型コロナワクチンの接種回数は約4億3000万回に達しました。
昨年11月には、厚生労働省と本会を含め八つの医療関係団体と共に「ポストコロナ医療体制充実宣言」を公表し、次の感染症拡大への備えを先手先手で実施するため、新興感染症対応と医療DXの推進を集中的に進めることを表明いたしました。
また、本年4月より、改正感染症法に基づく医療措置協定が施行されるとともに、第8次医療計画が開始されます。日本医師会といたしましても、診療所の新興感染症への対応力を一層高めることを目的に、地域医師会のためのモデル研修を本年3月に実施予定です。
会員の先生方におかれましては、日頃から地域にどっぷりつかり、地域住民の健康を守るため、さまざまな活動を通じて地域を面として支えて頂いており、地域医師会はそうした活動に深く関与しておられます。昨年より、国民の皆さんにそうした医師会活動を知ってもらうため、「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」を開始しました。
その一環として、昨年10月には「有事の医師会活動~地域、住民を守る活動~」をテーマとしたシンポジウムを開催し、大規模災害時やコロナ禍での医師会活動について情報を発信いたしました。本年3月には第2回のシンポジウムを予定しておりますが、今後も引き続き当該プロジェクトを進めて参ります。
昨年も国内では、地震や台風、豪雨など、全国各地で大きな被害がもたらされました。これらの災害によって被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
また、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの対立、隣国の脅威など、国際的にも予断を許さない状況にあるばかりでなく、地球温暖化等による異常気象の影響等についても注視していく必要があります。災害対策基本法上の指定公共機関である日本医師会は、今後とも大規模災害に備えて、組織づくりや災害医療研修の実施等の準備体制を更に進めて参ります。
また、医療DXは、日本医師会が目指す「国民・患者の皆様への安心・安全でより質の高い医療提供」と「医療現場の負担軽減」の実現に資するものでなければなりません。政府に対しては、サイバーセキュリティ対策も含めた、医療DXに掛かるコストに対する公的支援の拡充、並びに現場の負担軽減に向けた取り組みと情報発信を引き続き求めて参ります。
新しい年が会員の先生方お一人お一人にとって充実した幸多き年となりますことを祈念申し上げ、年頭に当たってのごあいさつといたします。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。