令和5年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会が昨年12月14日、日本医師会館小講堂とWEB会議のハイブリッド形式で開催された。
担当の今村英仁常任理事の司会で開会。冒頭、ビデオメッセージであいさつを行った松本吉郎会長は、医事紛争への対応や日本医師会医師賠償責任保険(以下、日医医賠責保険)の運営、新型コロナウイルス感染症対応と通常医療の両立に対する協力に謝辞を述べた上で、日医医賠責保険が昨年7月に50周年を迎えたことについて言及。「日常診療の強力な後ろ盾であり、この安定的な運営ができてこそ、会員の先生方が安心して医療活動に専念することができる」として、今後の円滑な運営への協力を求めた。
また、日本医師会の組織強化については、日医医賠責保険制度が、特に若手勤務医の方々にとって日本医師会に入会する大きなメリットの一つになるとして、令和5年度より医学部卒後5年目までの会費減免と令和6年度からのA②B会員の保険料引き下げを活用し、組織強化に向け、引き続きの支援と協力を求めた。
続いて、(1)日本医師会医師賠償責任保険制度50年の歩み、(2)日本医師会医師賠償責任保険の運営に関する経過報告、(3)転倒に関する分析結果と医事紛争―について説明が行われた。
(1)では、これまでの50年を振り返り、本制度の変遷を説明した。
(2)では、令和4年度の新規付託状況等について説明。令和4年度の審査会件数が前年度と同水準であったことや、有責率がわずかに減少したことなどを報告した。
また、令和4年度は、前年度に比べ解決件数が増加した他、解決金額が高額化していることや訴訟件数が減少していることが示された。
(3)では、今村常任理事が、日本医師会付託事案を基に、転倒・転落の医療事故件数や、医療機関における注意義務を紹介した上で、介護施設内での転倒に関するステートメント(日本老年医学会・全国老人保健施設協会)について概説。「転倒すべてが過失による事故ではない」などの四つのステートメントを紹介した上で、「医療機関側として転倒やそれに伴う障害の予防を行うことはもちろん、老年症候群による身体的・精神的・社会的な機能低下と、それに伴う転倒のリスクについて、患者の家族に理解をしてもらうことが重要である」と述べた。
引き続き、茨城、広島、埼玉、福島の各県医師会から事前に寄せられた質問・要望事項及び当日出された質問(①日医医賠責保険制度の理解を深めるための動画の作成に関する要望②廃業特則周知についての要望③特約保険の補償対象医療施設の範囲に関する意見④都道府県医師会と審査会回答が異なる事案の対応への要望)に対し、今村常任理事及び事務局から回答を行った。
なお、当日は、事務局から「新しい日医医賠責保険特約保険システムと規定・事務改定のポイント」についても概説。新システムでは、「都道府県医師会において加入者検索・加入内容確認、一覧の作成」「日本医師会ホームページから加入・脱退・変更依頼書の作成」が可能になるとした他、規定・事務改定としては、病院・介護医療院(定員20名以上)の掛金規定を簡素化することなどを挙げるとともに、その詳細については改めて都道府県医師会事務局の特約保険担当者へオンライン説明会を開催するとした(昨年12月18、26の両日に開催済み)。
最後に、今村常任理事が、「50周年を迎えた日医医賠責保険制度の会員へのメリットを、特に若手医師の方々にも知ってもらい、日本医師会の組織強化につなげていきたい」と閉会あいさつを行い、協議会は終了となった。
なお、参加者は、全国の都道府県医師会役員87名と事務局職員61名の計148名であった。