日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は2月14日、同日に開催された中医協総会で、令和6年度診療報酬改定について答申されたことを受けて、合同で記者会見を行い、今回の診療報酬改定を迎えるまでの活動を振り返り、各団体としての受け止めや見解を述べた。
会見には、松本吉郎会長、高橋英登日本歯科医師会長、山本信夫日本薬剤師会長が出席した。
松本会長は冒頭、元旦に発生した令和6年能登半島地震について、「医療支援が長期化することが見込まれているが、医療界として引き続き全力で支援していく」とした上で、地域医療の再興に向け、国民の誰もが必要な医療を過不足なく受けられるよう、あるべき医療の姿の実現のため邁進していくとの姿勢を示した。
今回の改定については、医療・介護の就業者約900万人に対して、公定価格の引上げを通じた賃上げの実現や、過去30年間、類を見ない物価高騰への対応、日進月歩する医療を全ての国民に提供するため、「今回改定は異次元の改定でなければならない」と主張してきたことを説明した上で、「急激なインフレ下での診療報酬改定がどうあるべきかという、ターニング・ポイントとなる改定であった」と振り返った。
次に、改定率に関する所感として、昨年12月に本体プラス0.88%と決定されたことについて、各地域における都道府県医師会・郡市区等医師会が、医療が置かれている厳しい現状や医療施策への更なる理解を求める活動を行ったことが大きな原動力となり、三師会、四病院団体協議会、国民医療推進協議会等を後押しし、医療界が一体・一丸となって対応した結果と考えているとした上で、「物価・賃金の動向を踏まえれば、十分に満足できるものとは言えない部分もあるが、さまざまな主張や議論も踏まえた結果であり、多くの方々にご尽力頂いたものでもあり、まずは素直に評価をさせて頂き、改めて深く感謝申し上げる」と述べた。
また、同答申について、医科は「医療従事者の賃上げ対応」「医療DXの更なる推進」「入院料の見直し」「薬価制度等の見直し」「医療技術の評価」「改定の後ろ倒し」―の6つがポイントであったとした上で、令和6年度からの医療提供体制に向けては、「これまで三位一体の改革と言われていた地域医療構想、医師の働き方改革、医師偏在対策を始め、総力を挙げて取り組んでいくことが必要であり、全ての基本となる診療報酬はもちろんのこと、税制、補助金、支援金、更には文部科学省からの大学病院への運営費交付金・私学助成金など、あらゆる手段を全て活用する必要がある」と述べた。
その上で、松本会長は今後について、今回の診療報酬改定にかかる医療現場の影響を適正なタイミングで検証しつつ、国の施策が誤った方向に進まないよう正しく導いていきたいとの考えを示した。
高橋日本歯科医師会長は、今回の改定に向けた対応を振り返り、物価高騰への対応や医療従事者への賃上げに向けた取り組み、医療DXや働き方改革、新型コロナウイルスの5類移行による環境の変化等、さまざまな課題の下で、「口腔機能管理の推進」「口腔疾患の継続管理と重症化予防の重要性」「在宅歯科医療の更なる推進」「リハビリテーション、栄養管理、口腔管理の一体的な取り組みの重要性」「新規医療技術、新規材料の開発及び保険収載」「歯科固有の技術の再評価」―等を強く求めてきたことを説明。
同答申については、財源の厳しい中で一定の評価ができる改定であったとし、「歯科衛生士や歯科技工士など関連職種への賃上げ対応にもしっかりと取り組み、国民に寄り添った歯科医療の提供にこれからも努めていく」と述べた。
続いて、山本日本薬剤師会長は、「薬局が地域の医薬品提供拠点としての役割を担い、地域医療に貢献して行くために不可欠な体制整備や人材確保、そのために必要な職員の賃上げ等に対応していく観点から、必要な対応がなされた」と同答申の内容を評価するとともに、「医療DX推進の体制整備に係る評価が導入されたことは、マイナ保険証を基盤とする電子処方箋、電子薬歴等をより一層推進していく上でも非常に重要だ」と述べた。
その他、今回の改定を受けて、職員の賃上げや医療DXの推進等、喫緊の重要な事項に積極的に取り組んでいくが、急速な物価高騰や医薬品の供給不足は依然として続いているとして、今後も第8次医療計画を踏まえた医薬品提供体制の確立や医療安全の確保、医療の質の向上、地域共生社会の実現等に向けて、薬剤師・薬局に対する期待に応えていく姿勢を示した。
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