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令和6年(2024年)3月20日(水) / 日医ニュース

フォト、エッセー部門の入賞作品を表彰

フォト、エッセー部門の入賞作品を表彰

フォト、エッセー部門の入賞作品を表彰

 第7回「生命を見つめるフォト&エッセー」(日本医師会・読売新聞社主催、厚生労働省・文部科学省後援、東京海上日動火災保険株式会社、東京海上日動あんしん生命保険株式会社協賛)の表彰式が2月17日、都内で開催された。
 本事業は長年にわたり実施してきた「『生命を見つめる』フォトコンテスト」と「『心に残る医療体験記』コンクール」を統合、平成29年度より新たに開始したもので、7回目を迎える今回も多くの作品が寄せられた。
 冒頭、公務により欠席した松本吉郎会長に代わり、主催者を代表してあいさつした黒瀨巌常任理事は、多数の応募への謝意を示した上で、「入賞作品を拝見して改めて生命や絆の大切さに気付かされ、深い感銘を受けた」と述べ、受賞者への祝意を表した。
 また、元日に起きた令和6年能登半島地震について触れ、多くの日本医師会員が日本医師会災害医療チーム(JMAT)として被災地に赴き、被災者の支援を現在も行っていることを説明し、「日本医師会として、これからも国民の皆さんの生命と健康を守るため、各地域の医師を始めとする医療従事者の活動をさまざまな形でバックアップしていく」と述べた。
 浅沼一成厚労省医政局長、大滝一登文科省初等中等教育局視学官他の祝辞に続いて、黒瀨常任理事が、フォト部門2887点、エッセー部門1456編の応募があったことを始め、審査の詳細等も含めた経過報告を行った。
 引き続き表彰に入り、まず、フォト部門「一般の部」では厚生労働大臣賞、日本医師会賞、読売新聞社賞各1名、審査員特別賞1名の受賞者(審査員特別賞1名、入選2名欠席)、「小中高生の部」の文部科学大臣賞1名、優秀賞3名の受賞者に、それぞれ賞状・副賞が授与された後、エッセー部門「一般の部」については、厚生労働大臣賞、日本医師会賞、読売新聞社賞各1名、審査員特別賞2名、入選2名の受賞者、続いて、「中高生の部」並びに「小学生の部」の文部科学大臣賞2名、優秀賞5名の受賞者(「小学生の部」優秀賞1名欠席)に、それぞれ賞状・副賞が授与された。
 その後の審査講評では、フォト部門審査員を代表して熊切大輔日本写真家協会長が、今年度はコロナ禍が多少落ち着き、イベントの開催や撮影機会が増えたことでバラエティ豊かな作品が多く、特に表情が豊かな、いきいきとした顔を捉えた作品が目立ったとした上で、「審査をしていて楽しく、希望に満ちた気持ちになった」と述べ、受賞者を祝福した。
 また、新年早々、生命の尊さを痛感するような出来事が続いた中で、"記憶を留め、永遠にする"媒体としての写真の力を再認識したとして、「ぜひ身近なものや家族、近所の町並み等の写真をたくさん撮り、記憶に残してもらいたい」と受賞者の今後の活動に期待を寄せた。
 エッセー部門では養老孟司東京大学名誉教授が、「知人から、長生きの秘訣は『日に一度感動すること』だと聞いたことがあるが、私は年に一度まとめて感動させてもらっている。何度も感動させられるので、逆に寿命が縮まるのではないかと心配している」と選考の大変さを振り返るとともに、「エッセーという短文の中で、私達の日常を上手に表現するのは非常に難しいが、感動と理屈をうまくあんばいしたような作品も次回にはぜひ読んでみたい。SNS等が盛んになった時代ではあるが短いエッセーというものは大事な分野であり、これからも文章を書き続けて欲しい」と述べた。
 なお、今回の全ての入賞作品は日本医師会ホームページに掲載する他、冊子としてまとめ、『日医雑誌』5月号に同梱して送付する予定としている。

エッセー部門 一般の部 日本医師会賞

240320i2.jpg「天国からの贈り物」
坂野 和歌子(さかの わかこ)

愛知県・50歳 ※年齢は応募締め切り時点


拝啓
 猛暑もようやく過ぎ去り、朝夕には秋の気配が感じられるようになりました。M先生、お元気でいらっしゃいますでしょうか。
 早いもので春香が旅立ち、3年を迎えようとしています。先生と春香との出会いは、2013年の秋でした。春香は激しい頭痛と嘔吐(おうと)に襲われ、私たちはたまらず救急車を呼びました。救命救急センターのCT検査で脳腫瘍(しゅよう)が発覚し、当時はあまりの病気の重さにただただ体が震え、不安と恐怖に押しつぶされそうになりました。病室に移り、憔悴(しょうすい)しきった私たちに、先生は冷静に優しく病状について説明してくださいました。それから数日で容体が急変し、緊急手術をすることになり、その執刀をしていただくことになりました。その後は、7年にも及ぶ春香の闘病を支えていただき、大変お世話になりありがとうございました。
 当時、小学6年だった春香は、術後、放射線治療や半年間に及ぶ抗がん剤治療を受け、以来、病と向き合う日々が始まりました。中学に入学してからは、学業と治療との両立に必死になって立ち向かい、その姿は、昨日のことのように目に浮かんできます。体調の回復には十分な時間が必要で、なかなか思うように登校できない日々に、次第に情緒も不安定になり、半年ほど不登校にもなりました。そんな状態の中でも、先生にお会いできる定期検診だけは、とても楽しみにしていました。診察日が近づくと、伝えたいことや、見てもらいたい制作作品などを考えていました。実際にお会いすると、それほど多くは語りませんでしたが、心の中ではとてもワクワクしていたように見えました。絵を描くことが大好きだった春香、きっと、自分の想いを表現した絵や作品を、大好きだった先生に見てもらいたかったのではないかと思います。手に取って、「おお、これはすごい!」と言って下さった時の春香の笑みは、喜びに満ち溢(あふ)れていました。決して長いとは言えない診察時間ではありましたが、優しく温かなひと時でした。そんな思い出が蘇(よみがえ)ると、とても幸せな気持ちになります。
 高校生になると、「漫画家になる」という夢をもつようになり、目標に向かって努力する日々が始まりました。しかし、7年目に入ろうとする頃、診察室で先生から「再発の疑いがある」ことを告げられました。あの時ほど、春香との限りある時間を意識したことはありません。再び手術に挑み、成功したものの予告されていた通り右半身麻痺(まひ)と失語症の障害を負いました。治療とリハビリに励む中、次第に精神症状をともなう発作も現れ、本人をはじめ家族もどんどん精神的に追い詰められていきました。その状況の中でも春香は、発作が落ち着いている時間に、左手に絵筆を持ちました。そして、絵を描き続け、亡くなる1カ月前に、『×くん』という絵本を完成させてくれました。それは、存在意義を失いかけていた主人公の×くんが、ある女の子のたった一言で勇気が湧いて、前を向いて進んでいく、そんな物語です。春香自身が、自分の存在意義と必死に向き合っていたのかもしれません。私たちは、春香に喜んでもらおうと、急いで印刷屋さんで5冊のみ製本してもらいました。手に触れることはできましたが、再々発で目が見えなくなっていたので、見ることや読むことは叶(かな)いませんでした。そしてその1カ月後、18歳の若さで天国に旅立ちました。再発からたった1年でした。私たちにとって娘が残してくれたこの絵本は、宝物となりました。
「人の心に何かを刻みたい。」
「人の役に立ちたい。」
 病床の枕もとで、春香は言葉が発せられなくなるまで呟(つぶや)き続けました。その後、多くの方々とのご縁とお力添えにより、今夏、正式な絵本として『×くん』を出版することになりました。春香にとって絵を描くこと、それは生きる力そのものでした。絵本に込めたメッセージを多くの人に届けたいと思います。18歳で旅立ってしまった現実は、なかなか受け入れられるものではありませんが、春香の想いを繋(つな)いでいきたいと思っています。天国にいる春香から、絵本『×くん』のプレゼントです。どうぞ受け取っていただけると幸いです。
 残暑なお厳しき折、どうぞお体を大切になさってください。先生の益々のご活躍をお祈り申し上げます。
かしこ
坂野和歌子
  令和5年9月9日
M様

フォト部門 一般の部 日本医師会賞

240320i3.jpg「ちからをあわせて!」
松政 亜美(まつまさ あみ)

大阪府・35歳 ※年齢は応募締め切り時点


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第7回生命を見つめるフォト&エッセー受賞作品一覧

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