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令和6年(2024年)4月20日(土) / 日医ニュース

「こどもの健康と生活~医師会はどうかかわる?」をテーマに開催

「こどもの健康と生活~医師会はどうかかわる?」をテーマに開催

「こどもの健康と生活~医師会はどうかかわる?」をテーマに開催

 「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」第2回シンポジウムが3月10日、「こどもの健康と生活~医師会はどうかかわる?」をテーマに、日本医師会館大講堂とWEB会議のハイブリッド形式により開催された。
 当日は、渡辺弘司常任理事の司会により開会。冒頭、あいさつした松本吉郎会長は、「本シンポジウムは、地域に根ざした医師が診療以外に国民の健康を守るために行っている医師会活動について、広く国民に知ってもらうことを目的として開催しているものである。今回『こどもの健康』をテーマとしたが、シンポジウムを通じて、出生前から小児の救急活動、医療的ケア児への支援など、地域を支えている医師の活動について理解を深めてもらえれば幸いである」と述べ、その成果に期待感を示した。

第1部:こどもの安全・安心を守る~出生前から小児の急患対応まで

 まず、第1部では、座長の河野幸治大分県医師会長が「医師会」という組織について、三層構造になっていることを説明した上で、それぞれの役割を概説。「日頃から地域の健康を守るために、時間外救急、行政との連携、保健活動、多職種連携など、さまざまな活動を行っているが、これらの活動には限界があるため、より多くの地域の医師が参加し、分担・連携することが大切になる」と指摘した。
 その上で、河野大分県医師会長は「大分県のペリネイタルビジットの取り組み」と題して講演。大分県では産婦人科医会と小児科医会の連携の下に、産婦人科医が小児科医を紹介し、育児に関する保健指導を受ける機会を提供していることを説明するとともに、その目的は産後の育児不安を少しでも解消し、安心して楽しく子育てを行ってもらうことにあるとした。
 また、事業推進のため、医師ばかりでなく保健師など多職種の参加の下に、毎月、専門部会を開催していることにも触れ、「今後も多職種連携の取り組みを発展させ、妊産婦の方々への一貫した支援体制を実現していきたい」と述べた。
 続いて、木村眞人福山市医師会前理事(夜間小児診療所担当)が、「福山夜間小児診療所の取り組み」と題して、福山市医師会が運営する夜間小児診療所の開設の経緯や運営上の課題、今後の取り組みなどについて講演した。
 福山市の夜間小児救急医療提供体制の課題解決のため、前橋市医師会の取り組みを参考として2000年に福山市医師会が中心となり、夜間小児診療所を開設。延べ27万人超が受診し、年間1万人以上の受診者数を維持してきたが、近年は受診者数の減少や医師の高齢化による経営悪化が続いており、その解決に向けて、診療時間の短縮や福山市のワーケーション事業への参加により医師の確保を図るなど、新たな取り組みを実施しているとした。
 その他、福山市で行われている医療版ワーケーションの実証事業については、「2022年のゴールデンウィークから本診療所も参加し、お盆や年末年始等にこれまで14名の医師が参加しているが、今後は夜間小児診療所だけでなく、乳幼児健診などの出務にもつながるよう、行政と協力していく必要がある」との考えを示した。

第2部:医療的ケア児を支える

 第2部では、小泉ひろみ秋田県医師会長が座長を務め、医師会の代表的な活動分野とされる医療的ケア児の支援について概説。「医療的ケア児を支えるには、医療・福祉・介護・教育などの多職種の協働や、地域の医師・看護職、行政等との連携が必要であり、医師会はこうした連携を取りまとめる力があるが、地域の行政・医療関係者にとって医師会があまりなじみがないため、そうした連携が進んでいないことが課題である」と述べるとともに、今回の好事例が全国に広がることに期待感を示した。
 豊野美幸秋田県立医療療育センター小児科長は、「キッズナラティブ秋田でつなぐ多職種連携」と題し、秋田県医師会が運営する、医療的ケア児と支援者をつなぐ情報共有ツール「キッズナラティブ秋田」の活用事例等を説明。同ツールは、医療的ケア児の保護者がスマートフォンのアプリを使って子どもの情報を入力し、それを主治医や訪問看護師などの支援者と共有できるものであり、関係者だけが情報共有するのではなく、あくまでも医療的ケア児とその家族が中心となる点が、他のICTシステムと大きく異なる点であることを強調した。
 今後の課題については、「現在の登録患者数は53名、登録施設数は36であるが医療機関の登録数を増やし、災害時の対策を整備することが挙げられる」と述べた。
 次に、野田正治愛知県医師会副会長が、「瀬戸旭医師会『瀬戸旭在宅医療介護連携推進協議会』の取り組み」と題し、同医師会が主催する「もーやっこジュニアの広場」という医療的ケア児とその家族を支援するイベントについて報告。「このイベントは、医療的ケア児ばかりでなく、その兄弟姉妹に映画鑑賞等の楽しみを提供し、保護者同士の交流を促進することを目的として実施しているものである」とした。
 また、「電子@連絡帳」と「もーやっこネットワーク」を活用し、要援護者宅へ訪問し安否確認をする防災訓練を行ったことなども紹介し、「医療的ケア児を地域で支えることは、医師会にしかできない仕事だ」と強調した。
 その後のディスカッションでは、黒瀨巌常任理事の司会の下に、演者と座長による活発な意見交換が行われ、茂松茂人副会長の総括により閉会となった。

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