都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会が3月28日に開催され、本年6月施行の診療報酬改定の具体的内容について説明を行った。
今回の協議会はWEBセミナー形式で開催され、長島公之常任理事が改定内容のポイント等について解説した。
冒頭あいさつした松本吉郎会長は、本体プラス0・88%となった令和6年度の診療報酬改定について、当初、財務省からマイナス1%、医療費ベースで約4800億円の引き下げが求められるなど、厳しい状況下での対応となったことを説明。
その中で、医療・介護の就業者約900万人の、公定価格の引き上げを通じた賃上げの実現や物価高騰への対応、そして、不可欠かつ日進月歩する医療を、全ての国民に提供するため、「今回の改定は異次元の改定でなければならない」と強く主張してきたことに加えて、都道府県並びに郡市区等医師会の活動によりプラス改定が実現できたとして感謝の意を示すとともに、各地域での会員に対する今回の改定内容の周知を要請した。
続いて、医療保険担当の長島常任理事から、日本医師会の動きも交えながら、令和6年度診療報酬改定のポイントとなる点を中心に改定内容の説明が行われた。
まず、総論として、今回改定から診療報酬改定DXによる対応として、施行時期が6月1日からと2カ月後ろ倒しになったこと及び改定率の内訳を説明した上で、決定までの経緯や中医協での議論、改定の基本方針等を紹介。中医協では支払側委員からのさまざまな主張に対して、診療側としてその都度しっかり反論してきたことを報告するとともに、中医協の権限は財務大臣・厚生労働大臣が合意した内容に基づく診療報酬の配分に限られ、政府が改定率を決定することから、日頃の医政活動が大変重要になるとの考えを示した。
各論では、主な改定項目(別表)について説明を行った。
(1)「賃上げ・基本料等の引き上げ」では、「ベースアップ評価料と初・再診料、入院基本料の引き上げから全体像が構成されている」とした上で、前者は、算定することで得られた収入を、医師や事務職員以外の看護職員や薬剤師などの医療関係職種の賃金改善に全て使い切ることが算定要件であり、後者は40歳未満の勤務医師や事務職員等の賃上げに使われることが想定されているものの、各医療機関には裁量があることなどを説明した。
また、説明動画や支援ツールが用意されていることを紹介した他、「医療機関には持ち出しをしてまで賃上げの目標を達成する義務はないため、積極的な算定をお願いしたい」と呼び掛けた。
(2)「医療DXの推進」では、現行の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」について、その名称を「医療情報取得加算」に見直すとともに、オンライン資格確認等システムの導入が義務化されたことを踏まえ、その趣旨も診療情報・薬剤情報の取得と活用に対する評価に変更されたことや、初診時ばかりではなく、再診時にも新たに点数が設定されたことなどを紹介した。
更に、情報通信機器を用いた精神療法に係る評価が新設されたことや、情報通信機器を用いた診療(精神療法に限らず)の初診の場合は、向精神薬を処方しないことをウェブサイト等に掲示していることなどが施設基準として追加されたことを説明した。
(3)「外来診療の機能分化・強化等」では、まず、「生活習慣病に係る疾病管理・適正化項目」について、①現行の生活習慣病管理料を生活習慣病管理料(I)とする②特定疾患療養管理料から糖尿病、脂質異常症、高血圧を除外した上で、検査料等が包括されない生活習慣病管理料(Ⅱ)として再編する③療養計画書の様式を大幅に簡素化する④月1回の算定を廃止する⑤長期処方やリフィル処方が可能であることを院内掲示する―対応が取られることになったことを解説。
①では、名称が変更されたものの、検査等が包括される評価であることに変わりはなく、新たに外来管理加算が包括化されたこと等により増点されているとした。
②では、「生活習慣病が除外された特定疾患療養管理料を引き継ぐような点数である」とするとともに、改定前の生活習慣病管理料を算定している患者への対応についても説明。また、⑤では、長期処方やリフィル処方を行うか否かは、あくまでも医師の判断によることを強調した。
その他、不安の声が多く寄せられていた特定疾患療養管理料の対象疾患の見直しにも触れ、これまで糖尿病、脂質異常症、高血圧で特定疾患療養管理料を算定していた医療機関の大部分は、新しい生活習慣病管理料に移行可能であること等を説明し、理解を求めた。
(5)「ポストコロナにおける感染症対策の推進」では、感染対策向上加算及び外来感染対策向上加算の見直しについて、改定後は第8次医療計画における感染症対応に係る都道府県との協定締結を枠組みとした評価体系に見直されること等を説明した。
(6)「医療機能に応じた入院医療の評価」では、大きな変更点として「地域包括医療病棟入院料」が新設されたことを紹介。その概要を説明するとともに、これまで急性期一般入院料が担ってきた急性期医療や地域包括ケア病棟が担ってきた回復期医療の一部が、今後は地域包括医療病棟に移行していくことが想定されるとの見方を示した。
(7)「働き方改革・横断的事項」では、入院時食事療養費の見直しについて、食材費等が高騰していることを踏まえ、入院時の食費が約30年ぶりに引き上げられることを説明した。
(10)「救急医療」では、下り搬送を評価する点数として「救急患者連携搬送料」が新設されたことに関して、今後の救急医療のあり方として、必ずしも国全体で下り搬送を推進していくものではないことを補足した。
(16)「医薬品の安定供給、後発医薬品やバイオ後続品の促進」では、医療上の必要性がないにもかかわらず、患者が後発品ではなく長期収載品を希望した場合、選定療養として、長期収載品と後発品の差額の4分の1が患者負担に追加されることになることを説明。ただし、医師が医療上の必要性があると判断して処方した場合は保険給付の対象となることに注意を促すとともに、日本医師会として、同仕組みが10月に開始されるまでの間に、患者や医療機関に対する十分な周知を国に求めていく姿勢を示した。
最後に茂松茂人副会長から総括が行われた。
同副会長は今回、改定の施行時期が6月1日と後ろ倒しされたことについて、現場にどのような影響をもたらすのか、まずは見守る姿勢を示した他、厚労省の説明会や集団指導がYouTube視聴に代わるなど、伝達の方法が変わる中で、届出漏れや届出誤りが想定されることから、厚労省や審査支払機関に対して、懇切丁寧な周知と最大限の柔軟な対応をするよう強く要請しているとした。
表[主な改定項目]
(1)賃上げ・基本料等の引き上げ(2)医療DXの推進 (3)外来診療の機能分化・強化等 (4)医療技術の適切な評価 (5)ポストコロナにおける感染症対策の推進 (6)医療機能に応じた入院医療の評価 (7)働き方改革・横断的事項 (8)同時報酬改定における対応 (9)質の高い訪問診療・訪問看護の確保 (10)救急医療 (11)小児医療及び周産期医療 (12)がん医療及び緩和ケア (13)精神医療 (14)認知症 (15)リハビリテーション (16)医薬品の安定供給、後発医薬品やバイオ後続品の促進 (17)DPC/PDPS・短期滞在手術等基本料等 (18)医療資源の少ない地域等への対応 (19)その他 (20)経過措置・届出 |