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令和6年(2024年)6月5日(水) / 日医ニュース

過疎地域での奮闘やメディア発信など若手医師の取り組みを紹介しつつ意見交換

過疎地域での奮闘やメディア発信など若手医師の取り組みを紹介しつつ意見交換

過疎地域での奮闘やメディア発信など若手医師の取り組みを紹介しつつ意見交換

 令和6年度シンポジウム「未来ビジョン"若手医師の挑戦"」が5月11日、日本医師会館小講堂で開催され、都道府県医師会からのZoom参加に加え、公式YouTubeチャンネルによるLIVE配信も行われた。昨年度に続き2回目となる今回は過疎地域での医療や勤務医としての医師会活動、メディア発信など、さまざまな分野で活躍する若手医師の取り組みを紹介しつつ意見が交わされた。

 今村英仁常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした松本吉郎会長(角田副会会長代読)は、「新しい視点とエネルギーを併せ持ち、これからの医療を切り開いていくという熱意をもった若手医師達の取り組みが、次世代の医療を牽引(けんいん)していくことになる」として、本シンポジウムに期待を寄せた。
 続いて、松井道宣京都府医師会長を座長として以下の4題の講演並びに指定発言、意見交換が行われた。

(1)医療過疎地域で活躍する若手医師の取り組み

「やぶ医者と過疎地医療」 阿部智介(七山診療所長/唐津東松浦医師会理事)
 阿部講師は、父親が昭和55年に無医村に開業した診療所を引き継ぎ、故郷で地域医療に従事しており、令和5年には兵庫県養父市にいた名医にちなんで命名された「やぶ医者大賞」を受賞したことを紹介。開業している地域に関しては、当時3360人だった人口が約44年で半減し、高齢化率は46・6%、高齢独居世帯の増加や老老介護の常態化、認知症患者の増加、世帯収入の減少など厳しい状況になっているとした。
 その上で、このような過疎地での医療においては、患者の経済面や住環境、家庭環境といった生活背景の把握が欠かせないことから、診療所の外に出て住民の生活に触れていくことが重要になってくると強調。必要に応じて地区の集会所での巡回診療や在宅医療、オンライン診療の他、集落ごとの教育活動に取り組んでいるとした。
 同講師は「私が関わっているのは、その人にしかない唯一無二の人生。最期にどう死ぬのかではなく、最期までどう生きていくのかという命の物語を共につづっている」と述べるとともに、その前提には行政や多職種との連携があるとした。

(2)都道府県医師会役員として活躍する若手医師の取り組み

「医師会が広げてくれた夢と働き方」 滝田純子(宇都宮病院病棟診療部長/栃木県医師会常任理事)
 滝田講師は、医師会とまだ関わりのなかった勤務医時代、東日本大震災で勤務先の病院が被災しつつも福島県からの避難患者を受け入れていた状況の中で、避難患者の初期対応は県医師会役員が総出で行っていたことを知り、医師会に対して畏敬(いけい)の念を抱いたことを述懐。
 その後、栃木県医師会の理事となったことによって、医療保険制度や健診、学校医などの仕組みを知り、行政と医師会のやり取りなども見えるようになったとし、「勤務医と医師会の世界の両方に身を置くことによって視野が広がり、考え方が柔軟になった」と強調した。
 一方、コロナ禍における各種対応は医師会にいたからこそ見えた仕事であったが、未加入の医師だけではなく、一般の人達にもその部分は見えていないのではないかと指摘した。
 今後については、医師会員だからこそ可能になる提案型の医療制度改革について発信していくことに意欲を示すとともに、個人的見解として、日本医師会若手支援基金(ファンド)の設立と開業・継承セミナーを実施することを提案。「物事を変えたいと思ったら、変える力のある集団にいるということも大切である」と述べ、医師会への参画を呼び掛けた。

(3)メディアで活躍する若手医師の取り組み

「若手の皆さん、恐れずにメディアで発信しよう」 宋美玄(丸の内の森レディースクリニック院長)
 宋講師は、2004年に帝王切開手術を受けた産婦の死亡をめぐり担当医が逮捕された福島県立大野病院事件(後に無罪)や、妊婦のたらい回しなどとメディアに医療現場が叩かれた時代に、医療の実態についての理解を求める発信をブログで始め、2008年に「妊娠の心得11カ条」の記事が注目されたことなどを契機として、各種メディアに出演し、他業種とも関わるようになったことを紹介。
 現在は、X(旧Twitter)に12万人ほどのフォロワーがおり、TikTokやInstagramでも発信しているとし、それぞれのSNSの特徴などを解説。「一般的・普遍的な医療に関する情報よりも時事ネタの方が話題になりやすい。医師の世界で有名でなくても、面白そうだなと思われるとメディアに取り上げられることもある時代だ」と述べ、発信の"受け"が鍵となるとした。
 実名で発信することについては、所属組織や医療機関に確認が必要であり、患者のエピソードの掲載も難しいとする一方、匿名であっても特定される危険があることにも注意を促し、良識ある内容にすべきとした。
 その上で、若手医師の視点による発信は貴重であるとし、発信によって同業者や他業種の人達と知り合えるメリットもあると強調。「まずはSNSでインフルエンサー医師をフォローすることから始めて欲しい」と期待を寄せた。

(4)先輩医師から若手医師へのエール

「To teach is to learn:誓いをつなぐ」 小山弘(京都医療センター総合内科診療科長/臨床研修屋根瓦塾塾長)
 小山講師は、若手医師と京都府医師会によって形づくられた汎臨床研修病院的な学修環境「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」について概説した。
 まず、卒後3~10年の医師が、卒後1~2年の医師に何を教えたいかを話し合って課題を作成し、教える内容はアクティブラーニングになるように工夫していることを紹介。
 研修当日は、異なった臨床研修病院から来た臨床研修医が4~5名のチームを作って課題に取り組むとともに、シミュレーターを使った電気的除細動・気管挿管などの手技に臨み、その結果により上位チームを表彰しているとした。
 同講師は、塾生は他の病院の人と話すことで刺激が得られ、塾講師には指導医の教育モチベーションとスキルの向上があるなど、双方にメリットがあることを強調。
 その他、大きな急性期病院が中心となっている医師育成に、医師会も積極的に関与していく診療参加型臨床実習への参画を提案し、プロフェッショナリズムをつないでいくことが専門職集団である医師会から若手医師へのエールにもなるとした。

(5)指定発言

小柳亮(日本医師会未来医師会ビジョン委員会委員長/新潟県医師会理事)
 小柳委員長は、医師偏在指標(2023年度)で全国45位となっている新潟県で地域医療に携わっていることを紹介。自院での取り組みにとどまらず、地域医療を面として捉え、さまざまな種をまいていきたいとの意気込みを示した。
 未来医師会ビジョン委員会については、松本会長からの諮問「若手医師の期待に応え続けていく医師会のあり方」に対する答申において、若手医師の期待に応える活動として、キャリア支援体制の充実、既存の医師向け情報サイトとの協働、デジタル医師資格証アプリの利用促進などを打ち出していることなどを説明。同委員会が自民党青年局と意見交換したことなども報告し、「日本医師会は常に未来ある若い医療人の意見を幅広く受け止め、伝えている」と強調した。

 その後の意見交換では、メディアでの発信のあり方や若手・中堅医師へのアプローチ方法などをめぐり活発な議論が交わされた。
 なお、本シンポジウムの模様を収録した動画は、日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載されているので、ぜひ、ご覧頂きたい。

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