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令和6年(2024年)7月20日(土) / 日医ニュース

松本会長所信表明

松本会長所信表明

松本会長所信表明

1.はじめに

240720a2.jpg 第157回日本医師会臨時代議員会にご出席頂き、誠にありがとうございます。
 本日は議題として、「令和7年度日本医師会会費賦課徴収の件」を上程しております。代議員の先生方におかれましては、慎重にご審議頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。
 また、昨日開催の定例代議員会におきまして、日本医師会長に再選頂きました。皆様からの多くのご支援に、深く感謝申し上げます。

2.地域から中央へ

(1)現場との連携と情報収集、及び分析と情報発信の充実
 2年前の会長就任時に「現場の声を直接伺うためにも47都道府県医師会に積極的に訪問したい」と述べさせて頂きましたが、この2年間でほぼ全ての都道府県を回らせて頂くとともに、全国の都道府県医師会長と対面や電話・メール等を通じて緊密に月に1回は連絡を取らせて頂きました。
 また、令和5年2月には都道府県医師会役員向け情報発信メールを創設し、速やかな情報提供を心掛けて参りました。
 更に、都道府県医師会長会議も、以前は都道府県医師会間の議論を執行部が拝聴しているだけでしたが、日本医師会からも明確な回答をする形式にいたしました。
 医師会活動においては、情報共有、相互理解、コミュニケーション、共に行動することが重要です。今後も現場との連携を深めるため、引き続き地域医師会とこれまでのような緊密な連携を図って参ります。そして、地域から挙げられた情報を執行部、更には会内委員会で分析・検討するとともに、国の検討会や記者会見を通じて発信して参ります。
 併せて、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の機能の向上にも努めて参ります。

(2)地域に根ざした医師の活動の推進
 令和4年9月には「地域に根ざした医師の役割」を取りまとめ、記者会見を行いました。
 そして、令和4年11月にはかかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて「地域における面としてのかかりつけ医機能」を公表し、その方向で令和5年5月に医療法が改正されました。
 また、国民の皆様にも医師会活動を知ってもらうため、「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」をこれまで2回実施して参りました。
 今後も、産業保健、学校保健などを始めとする地域保健・公衆衛生活動や地域医療をかかりつけ医が中心となって担うよう、かかりつけ医機能を推進するとともに、私どもの機能・能力を高めるという意味で日医かかりつけ医機能研修制度を進めて参ります。
 また、「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」につきましても、引き続き実施して参ります。

3.更なる信頼を得られる医師会へ

(1)国民の生命と健康を守り、医師の医療活動を支援
 新型コロナウイルス感染症は、令和5年5月に感染症法上の位置付けが5類感染症に変更されましたが、国際的に見ても、人口当たり死亡者数や陽性者の致死率の低さなど、わが国は特筆すべき医療実績を積み上げてきました。
 これは、全国の医療機関の先生方による懸命な対応の賜物(たまもの)であり、深く感謝申し上げます。
 また、そのことをもっと国民の皆様方にも知ってもらわなければならないと考えています。
 今後、我々が発熱外来等で患者さんをしっかり診ていく姿勢を示すことが、国民・患者さんからの更なる信頼獲得につながるものと考えております。
 これまでも全国の先生方には入院・外来対応やワクチン接種等でお力添えを賜りましたが、引き続きご協力の程よろしくお願い申し上げます。
 また、国民の皆さんの不安を招いている医薬品の安定供給や食品安全につきましても、しっかりと取り組んで参ります。

(2)顔の見える関係の構築と進展
 これまで日本医師会は、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、四病院団体協議会を始めとした医療関係団体と、一体・一丸となって難局に立ち向かって参りました。
 また、政治とは、特に普段からのコミュニケーションを大事にし、顔の見える関係を構築して参りました。
 更に、経済団体とも、日本健康会議などで連携を図り、国際社会においては世界医師会とも歩調を合わせて参りました。
 私はやはり人と人との付き合いをしっかりと大事にしたいと考えており、医師会のみならず、さまざまな職種や立場の方々と、心と心で人間として付き合っていきたいと考えています。
 引き続き日本医師会は、これまで築いてきた関係を発展させ、執行部一丸となって、更なる信頼を得られる医師会となるため、尽力して参ります。

4.医師の期待に応える医師会へ

(1)超高齢・人口減少社会へ向けた、時代に即した改革
 令和6年度診療報酬改定では、十分に満足できるものではありませんでしたが、本体改定率プラス0・88%となり、初再診、入院基本料等の基本診療料を中心に点数の引き上げを行うことができました。初診料は20年ぶり、入院時の食費は約30年ぶりの引き上げとなりました。
 医療財源につきましては、税金による公助、保険料による共助、自己負担による自助の三つのバランスを取ることが大切であり、自己負担のみを上げないことが求められます。
 6月21日には「経済財政運営と改革の基本方針2024」、いわゆる「骨太の方針2024」が閣議決定されました。
 高齢化の伸びというシーリングに制約された「歳出の目安」という考え方を改める必要があるという主張を繰り返し行ってきた結果、注釈ではなく本文に「日本経済が新しいステージに入りつつある中で、経済・物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程において検討する。」と記載されました。
 一定の前進が見られたと思いますが、まだまだ不十分であると考えております。
 物価高騰や賃金上昇への対応も喫緊の課題であり、診療報酬のみならず、補助金や税制措置など、あらゆる選択肢を含め、今後も医療政策を提言し、実行して参ります。
 一方、医師の偏在対策につきましては、年末に掛けて丁寧な議論が必要になると思います。
 日本医師会といたしましてはまずは不足している地域の声に耳を傾け、それに対し国は必要な財政支援、好事例の横展開、研修等で支えることが基本であり、自主的な気運の醸成や働きやすい環境の整備等が必要であると考えています。
 財務省等による、「都市部の報酬単価を下げる」といった主張は言語道断であり、ディスインセンティブで行うのではなく、補助金によるインセンティブを設けるのが大前提と考えております。そうした考え方の下で、しっかりと提言して参りたいと考えております。
 更に、時代に即した改革に向け、若手医師の想いを共有するため、シンポジウム「未来ビジョン″若手医師の挑戦"」をこれまで2回にわたり開催いたしました。大変好評であり、今後も引き続き、本シンポジウムを実施して参ります。

(2)働き方改革、医療DXの推進や会員の福祉向上
 医師の働き方改革につきましては、厚生労働省指定の医療機関勤務環境評価センターにて490件の評価受審申込を受け付けるなど、医療機関及び勤務医の先生方を支援し、本年4月からの働き方改革を予定どおり迎えることができました。
 医師の働き方改革については、大学病院や病院団体などの医療関係者と共に、新制度施行後の状況を把握・検証し、その課題解決に引き続き取り組んで参ります。
 その他、日本医師会医師賠償責任保険制度への医療通訳サービスの付帯や、サイバーセキュリティ支援制度の実施等に取り組むとともに、医師年金や医師賠償責任保険を安定的に実施し、充実させて参りました。
 今後も、日本医師会生涯教育制度の充実や、専門医制度の議論を深める他、医療安全対策についても引き続き推進して参ります。
 更に、医療DXに掛かるコストに対する公的支援の拡充、並びに現場の負担軽減に向けた取り組みと情報発信を、引き続き政府に強く求めて参ります。

5.一致団結する強い医師会へ

(1)組織力の更なる強化
 2年前に日本医師会長に就任した後、会費減免期間を医学部卒後5年間まで延長するなど、医師会の組織強化に尽力いたしました。その結果、令和5年12月現在で会員総数は17万5933名、対前年度比2172名増となりました。2000名以上の増加となるのは平成13年度以来、22年ぶりのことです。
 会費減免期間終了後も医師会員として定着して頂くことが重要であることから、日本医師会は、都道府県並びに郡市区等医師会と一体となって、好事例等を共有しながら、医師会員であることが実感できる取り組みを積極的に進めて参ります。
 まずは会員手続きの簡素化等のため、本年10月に運用を開始する新会員情報管理システム「MAMIS」(マミス)を活用した会員情報の一元化などに取り組んで参ります。
 日本医師会は医師全員を代表する日本で唯一の組織です。若手医師、勤務医、研究職等のご意見をしっかり受け止め、更なる参画を今後も進めて参りたいと思います。

(2)災害への備え
 これまで日本医師会は、自然災害等の被災地の皆様の生命と健康を守る活動を都道府県医師会の協力の下に行って参りました。
 本年1月に発生した令和6年能登半島地震での日本医師会災害医療チーム(JMAT)の派遣は5月末をもって終了いたしましたが、会員の先生方には大変なご協力を頂きました。
 また、国民の皆様に向けて支援金の呼び掛けを行ったところ、総額で5億6470万円あまりの支援金が寄せられ、被災地域の県医師会に配賦させて頂きました。
 更に、去る4月3日に発生した台湾東部地震を受けて、被災地で医療支援活動に当たっている台湾医師会を支援することを目的として、日本医師会から国民の皆様に支援金の呼び掛けを行いましたが、この呼び掛けに対しましても、総額8556万円あまりの支援金が寄せられ、台湾医師会に配賦することができました。
 これらのご協力に対しまして、改めて御礼申し上げます。
 日本医師会は災害対策基本法上の指定公共機関として、今回の能登半島地震における震災対応の経験を踏まえて、JMATの活動報告会を開催する他、被災地との緊密な連携の下でJMATの統括機能を強化するばかりではなく、迅速な活動ができるよう、訓練や研修の見直し、体制づくりの強化等を行って参ります。
 そして、実際の災害の際にも、被災地や全国の都道府県医師会と連携し、多数のJMATを効率的に派遣できるよう取り組んで参ります。

6.最後に

 本執行部では、「地域から中央へ」「更なる信頼を得られる医師会へ」「医師の期待に応える医師会へ」「一致団結する強い医師会へ」という四つの柱の下で、その柱を強化し、運営を進めて参りたいと考えております。そして、全国の医師会の意見を聞きながら、攻めるところは攻め、守るところは守るなど、攻防一体となって、活動して参ります。
 結びに当たりまして、本会の新たな執行部に対し、皆様方からの絶大なるご支援を賜りますよう切にお願い申し上げ、私からのあいさつとさせて頂きます。

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