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令和6年(2024年)10月5日(土) / 日医ニュース

北里柴三郎先生が肖像画に採用された新千円札発行を記念してシンポジウムを開催

対談「北里柴三郎の功績と日本医師会の果たす役割」対談「北里柴三郎の功績と日本医師会の果たす役割」

対談「北里柴三郎の功績と日本医師会の果たす役割」対談「北里柴三郎の功績と日本医師会の果たす役割」

 日本医師会シンポジウム「受け継がれる北里柴三郎の志~新千円札発行を記念して~」を9月15日、日本医師会館大講堂で開催した。
 当日は、1,100名を超える応募者の中から抽選により当選した約500名の参加者が会場に集い、北里先生の偉大さを改めて実感するとともに、日本医師会の果たしている役割や生活の中で必要とされる感染対策、感染症と日本人の戦いの歴史などを学んだ。

 本シンポジウムは新千円札の肖像画となった北里先生の功績を振り返る中で、日本医師会の果たしている役割を知ってもらうとともに、コロナ禍を踏まえ、今後、いつ起きるか分からない新興感染症に備えて何が必要なのかを共に考えることを目的として、開催したものである。
 
241005a2.jpg 冒頭あいさつした松本吉郎会長は北里先生が新千円札の肖像画に採用されたことについて、「野口英世先生に続き肖像画に医師が選ばれたことは、医療が社会にとって欠かせないものであることの裏付けである」と強調。今後も北里先生のスピリッツを受け継ぎ、「人生100年時代」に向けて、治療を中心とした医療のみならず、「予防・健康づくり」にも力点を置き、健康長寿社会の実現に尽力していく考えを示した。

241005a3.jpg 引き続きあいさつした北川雄光日本医学会副会長/慶應義塾常任理事は、コロナ禍において慶應義塾大学病院では、初代病院長でもあった北里先生の「基礎・臨床一体となって一家族の如く医学を追求せよ」との教えに従い、基礎・臨床一体となって対応したことを紹介。「北里先生の業績を本日お集まりの皆さんと共に振り返ることができることは大変うれしく思う」と述べた。

241005a4.jpg その後は、まず、北里先生のひ孫である北里英郎北里柴三郎記念館館長と釜萢敏副会長による対談が行われた。
 対談の中で北里館長は、(1)当初、北里先生は医師になるつもりはなかったこと、(2)オランダ軍医のマンスフェルト先生や福沢諭吉先生との出会い、(3)北里研究所の立ち上げ、(4)日本の猫ブームの先駆けをつくった話、(5)日本医師会の設立―などを、エピソードを交えながら説明。
 釜萢副会長は、「北里先生が100年も前から予防医学の重要性を提唱していたことに頭が下がる思いである」と述べるとともに、大変な苦労の下、日本医師会を設立したことに感謝の意を表明。現在の日本医師会においても北里先生の志は受け継がれ、「国民の生命と健康を守る」「医師の医療活動を支える」という二つの大きな目的の実現に向けた役割や、災害時における日本医師会災害医療チーム(JMAT)の派遣など、さまざまな活動を行っていることを紹介した。
241005a5.jpg 新型コロナへの対応に関しては、釜萢副会長が会員の先生方と一体一丸となって対応した結果、日本ではG7加盟国の中でも、新型コロナ累積陽性者数、死亡者数共に低い水準に抑えられたことを強調。新たな感染症への対応については、「感染を封じ込めることが大事であり、まずは感染症指定医療機関がその役割を担った上で、その間に可能な限り多くの一般医療機関でも対応ができるように準備をしておくことが求められる」とし、日本医師会でも診療所を対象とした新興感染症対応に関する研修を始めたことを報告した。
 一方、北里館長は北里先生が一般の人々に正しい知識を伝えることで感染を防ごうとしていたことを紹介。「今後新たな感染症が出現した際にもこの考えは重要になるのではないか」と述べた。
 その他、北里館長が日本医師会が情報弱者も含めた人々に正しい知識を伝えていくことに期待感を示したことに対して、釜萢副会長は日本医師会ではYouTubeやLINEなどで、健康に役立つ情報等を配信していることを説明し、その活用を求めた。
 続いて、二つの講演が行われた。
241005a6.jpg 本郷和人東京大学史料編纂所教授(歴史学者)は、(1)奈良時代には天然痘が大流行し、亡くなられた人々の鎮魂を目的として奈良の大仏が建立されたとも言われている、(2)江戸時代にはコレラが流行し、少なくとも10万人が死亡したことが江戸幕府滅亡の要因の一つとも考えられている―ことなどを紹介。
 昔はワクチンもなく、天然痘の感染拡大を防ぐことが難しい中で、感染対策が可能になった要因の一つとして、神道の「清らかであれ」という教えが大きく影響しているのではないかとの考えを示した。
 また、江戸時代に人口が大きく増えたことにも触れ、それには地域の有力者が頭脳明晰(めいせき)な子ども達を、当時最先端の医療が行われていた長崎などに派遣し、その子ども達が最新の医学知識を学び、医師として地元に帰って、病人の治療に当たるなど、地域で子ども達を育てるといった伝統があったことが大きかったのではないかと分析。今後は歴史家として、それらの人々の功績も明らかにしていきたいとした。
241005a7.jpg 菅原えりさ東京医療保健大学大学院教授は昨年、感染者がほとんど出ていなかったマイコプラズマ感染症、手足口病がこの夏、人と人との接触が増えたことにより、爆発的な感染の拡大を見せたことを紹介。「このことは、我々が感染症と向き合いながら生活をしていかなければならないことの現れだ」とし、今後感染拡大を起こさないためにも、(1)手洗い、(2)マスク着用、(3)換気、(4)具合が悪ければ登校や通勤はできるだけ控える―といった、コロナ禍を踏まえた対応を継続することが求められると強調した。
 更に、菅原教授はこれらに加えて、新型コロナウイルスワクチンを接種することで入院患者が減ったデータを示しながら、ワクチン接種の重要性を説明。「高齢者や基礎疾患を持つ人達はぜひ、ワクチン接種をお願いしたい」と呼び掛けた。
 その後には、Q&Aセッションが行われ、「北里先生が大きな成果を挙げられた要因」「これまで感染症が人類に影響を与えた出来事を一つ挙げるとすればそれは何か」「感染症はなぜ撲滅しないのか」「超高齢社会におけるこれからの医療はどうあるべきか」など、事前に寄せられた10の質問に、演者が回答。最後には抽選会が行われ、当選者に松本会長らから日医君グッズなどが手渡された。

お知らせ
241005a8.jpg 今回行われたシンポジウム「受け継がれる北里柴三郎の志~新千円札発行を記念して~」の模様は、後日に採録を朝日新聞全国版に、動画を日本医師会公式YouTubeチャンネルにそれぞれ掲載する予定となっています。
 ぜひ、ご覧下さい。

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