松本吉郎会長は10月30日、都内で開催された「日本健康会議2024」に、日本健康会議の共同代表として出席。「健康経営に関する取り組みについて」と題し、日本医師会による健康経営に関する取り組みについて講演を行った。
当日は、小林健日本健康会議共同代表/日本商工会議所会頭が冒頭にあいさつ。続いて、来賓の福岡資麿厚生労働大臣、武藤容治経済産業大臣、加藤勝信財務大臣がそれぞれあいさつを行った。
あいさつの中で福岡厚労大臣は、政府が活用を促進しているマイナ保険証について言及。患者本人の健康・医療情報に基づく、より良い医療提供につながるマイナ保険証の活用推進への協力を求めた。
武藤経産大臣は、平成28年度に開始された「健康経営優良法人認定制度」について、認定企業数は順調に増加を続けており、昨年度時点の認定企業数は1万6700社余りとなったこと等を報告。その上で、労働環境の改善や生産年齢人口の維持に貢献することが期待される同制度について、今後もその拡大に注力していく意向を示した。
加藤財務大臣は、自身が立場を変えながらも日本健康会議に関わり続けていることに言及。国、経済界、医療団体、保険者、自治体と、多様な関係者が参画することで、健康経営のみならず、健康づくり、健康なまちづくりといった考え方も一般化してきたとして同会議の意義を強調した。
次に、渡辺俊介日本健康会議事務局長が「健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025」の各項目の2024年における達成状況を報告した。
引き続き、松本会長が「健康経営に関する取り組みについて」と題して、(1)日本医師会とは、(2)健康経営の取り組み、(3)社会に向けた健康に関する情報発信―について講演を行った。
(1)では、日本医師会の成り立ちと会員数、都道府県、郡市区等医師会との関係性並びに医師会が果たしている役割等について説明した。
(2)では、日本医師会が健康経営優良法人として認可されるべく2018年度から活動を開始し、現在、5年連続で認定されていることを報告。更に、具体的な健康経営の取り組みとして、①特定保健指導の実施率改善②職員への情報提供・研修実施③ストレスチェックの有効活用④参加型イベントの開催による運動習慣定着⑤社員向け施設の充実化―等を図っていることなどを紹介した。
(3)では、まず、健康や医療に関わる内容の動画を数多く公式YouTubeチャンネルに掲載していることを紹介。
特に「女性の健康課題についてのオンラインセミナー」シリーズはいずれも20万回前後の視聴回数となっている他、釜萢敏副会長が、女子高生とその保護者との対談形式で子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)のキャッチアップ接種の推進を呼び掛ける動画が、多く視聴されていることを報告した。
その他、「世界禁煙デー」に合わせた東京タワーのライトアップイベント、キッザニア東京への期間限定出展等の健康啓発活動も紹介。引き続き日本医師会として、各地の医師会や医療法人が健康経営優良法人を取得するよう働き掛けを行っていく意向を示した。
会議の最後には、南亮経済産業省商務・サービス審議官より、「健康経営の足跡と目指すべき姿」と題した講演が行われた。
まず、ヘルスケア政策の目指すべき姿と施策として、(1)健康寿命を2040年に75歳以上、(2)公的保険外のヘルスケア・介護に係る国内市場を2050年に77兆円、(3)世界市場のうち日本企業の医療機器獲得市場を2050年に21兆円―にすることを目指していることを紹介。その上で、世界に先駆けて高齢化と人口減少が進行している日本においては、今後、健康寿命の延伸とともに、人々の健康増進や医療の質の高度化等に貢献する産業市場の拡大が重要になると指摘した。
また、2040年時点で健康寿命を75歳以上に延伸することで、生産年齢人口減少がある程度カバーできる見通しを示した他、日本に遅れて高齢化が進行する諸外国において、ヘルスケア分野で新たな需要を創出できる可能性などを強調した。
更に、制度の開始から10年を経た健康経営が企業等に与えている影響について概説。健康経営度調査の回答を経年で見た場合、①コラボヘルスや働き方改革関連法と連携②経営トップのコミットメントの大幅な増加③健康経営に関する取り組みを開示する企業の増加④社員の喫煙率低下―等の良い影響があることが明らかになってきているとした他、今後の展望について、デジタル技術を活用した健康経営の可視化、健康経営の拡大に伴う新たなマーケット創出、国際的なPR、小規模法人への浸透・定着等に国として取り組んでいく意向を示した。