閉じる

令和7年(2025年)1月5日(日) / 日医ニュース

「新たな局面を迎えて母体保護法指定医師として考えること」をテーマに開催

「新たな局面を迎えて母体保護法指定医師として考えること」をテーマに開催

「新たな局面を迎えて母体保護法指定医師として考えること」をテーマに開催

 令和6年度家族計画・母体保護法指導者講習会が昨年12月7日、日本医師会館大講堂で令和元年以来、5年ぶりに対面で開催された。
 講習会は担当の濱口欣也常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした松本吉郎会長は「産婦人科医の果たす役割はますます重要になっている」と述べた上で、今回の講習会のテーマについて言及。「令和5年11月に調査研究事業が開始された緊急避妊薬の薬局販売に係る環境整備や、母体保護法指定医師に限定され厳格な運用が定められている経口中絶薬の流通管理を含めた適切な運用の他、不妊治療への保険適用や出産育児一時金の増額、出産費用の見える化など、重要な課題が山積していることを踏まえて決定した」と説明し、出席者に対して、活発な議論を求めた。
 引き続き、渡辺由美子こども家庭庁長官(代読:木庭愛こども家庭庁成育局母子保健課長)、石渡勇日本産婦人科医会長のあいさつの後、「新たな局面を迎えて母体保護法指定医師として考えること」をテーマとしたシンポジウムが行われた。
 落合和彦東京都医師会理事は、自身が委員長を務めた日本医師会「母体保護法に関するWG」での議論の結果、人工妊娠中絶症例の減少や経口中絶薬の使用などを踏まえ、令和6年の春に「日本医師会指定基準モデル」の改定(「技能」の項目の症例数の変更)を行ったことを報告。今期の「母体保護法等に関する検討委員会」では、平成19年11月に同委員会が取りまとめた答申でも指摘された「多胎減数手術」「人工妊娠中絶を行う際の配偶者の同意」「人工妊娠中絶の胎児条項」に加えて、「日本産婦人科医会との連携による問題事例に関する相談への対応」「メフィーゴパックの運用上の問題点」などについても、検討していく意向を示した。
 緊急避妊薬については、まず、中井清人厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長が緊急避妊薬のスイッチOTC化に関して、令和5年11月からモデル的調査研究事業が開始されるまでの経緯や、医薬品の販売方法等に関する国の検討会での検討状況等を説明。「緊急避妊薬のスイッチOTC化には賛否さまざまな意見があるが、調査研究をしっかりやろうということで調査研究を続けている」と述べた上で、今後は産婦人科医療機関と薬局が顔の見える関係を構築することが求められるとした。
 続いて、安達知子日本産婦人科医会副会長は緊急避妊薬の使用について、世界的に増加傾向にある中での日本の状況に関して、(1)増加傾向が見られるものの比較的多い東京と大阪以外はばらつきが見られる、(2)令和5年の家族計画協会の調査では、16歳から19歳の3割が緊急避妊薬のことを知らない、(3)中絶の実施率は減少しているが、緊急避妊薬の使用増加と関連性は見られない―ことなどを紹介。その上で、緊急避妊薬をスイッチOTC化するためには、発達段階に応じた包括的な性教育、薬剤師が性や性暴力に対してゲートキーパーとなるための知識や技能の向上、産婦人科医療機関と薬局との密な連携等が必要になると強調した。
 経口人工妊娠中絶薬については、林昌子日本医科大学多摩永山病院女性診療科・産科准教授がメフィーゴパックを使用するために医療機関が準備すべきことや使用方法、留意事項などを解説。メフィーゴパックは人工妊娠中絶のために選択し得る方法の一つではあるが、安全に使用するためにも、自宅での胎囊(のう)排出や、胎囊排出前後の腹痛や出血に対応できる体制整備が求められるとした。
 濱口常任理事はメフィーゴパックの適切な使用体制のあり方に関する厚労省の薬事審議会の議論に当たって、日本医師会から早急に対応すべき四つの事項(①講習受講の義務化②流通管理体制等のデジタル化③安全性確保のための資材④国民への正しい情報提供)を示し、具体的な検討を求めたことなどを報告。その結果、厚労省とこども家庭庁の連名により留意事項に関する通知が発出され、当分の間、入院可能な有床施設において使用することが継続されることになったことなどを説明。日本医師会としても引き続き、経口中絶薬の使用を適切かつ安全に進めるために協力していく意向を示した。
 最後に指定発言を行った木庭こども家庭庁成育局母子保健課長は母子保健行政の最近の動きとして、産後ケアやプレコンセプションケアに関する取り組みを概説。参加者に対しては、(1)妊産婦のメンタルヘルス対応のために行っている「妊産婦のメンタルヘルスに関するネットワーク構築事業」の活用、(2)人工妊娠中絶実施報告票が一部改訂され、令和7年4月から新たな様式を使用することへの協力、(3)優生手術等を受けさせられたことの認定を受けるに当たって、診断書の作成を求められた際の対応―をそれぞれ求めた。
 その後は、討議が行われ、参加者から文部科学省と厚労省が協力して性教育を進めることや、メフィーゴパックの管理に関する負担軽減を求める意見、産後ケア事業で事故が起きた際の責任の所在に関する問題提起などが行われ、講習会は終了となった。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる