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令和7年(2025年)1月20日(月) / 日医ニュース

「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見案」を了承

 社会保障審議会医療部会が昨年12月18日に開かれ、「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見案」について審議し、文言の修正を座長一任とすることで了承することとなった。
 意見案では、基本的な考え方として、「新たな地域医療構想の策定を進め、医師偏在の是正を総合的に推進し、医療分野のデジタル・トランスフォーメーションを確実かつ着実に推進することで、より質の高い医療やケアを効率的に提供する体制を構築する必要がある」とした上で、「新たな地域医療構想」「医師偏在対策」「医療DX推進」「美容医療への対応」「オンライン診療推進」に関する改革内容について触れられている(各項目の具体的な内容は別掲を参照)。
 このうち「新たな地域医療構想」や「医師偏在対策」については、「新たな地域医療構想等に関する検討会」の「とりまとめ」等の内容のとおりとするとされている。
 検討会のとりまとめの中では、「新たな地域医療構想」について、医療計画の上位概念として位置付けるとした上で、病床機能に関しては「回復期機能」を日本医師会が提案していた「包括期機能」という名称及び定義に見直すとしている。
 また、地域医療構想調整会議については、在宅医療や医療介護連携等に関しても議論の対象となることを踏まえ、日本医師会が要望していた介護や市区町村関係者も参画すること及び、厳しい医療機関経営の状況を鑑み、それらも踏まえながら協議を実施するとされている。
 その他、基準病床数と必要病床数の整合性の確保等については日本医師会が反対していた、既存・許可病床数が基準病床数・必要病床数を上回る場合に、都道府県の要請・勧告・公表の対象とするといった記載は見送られた。
 一方、「医師偏在対策」に関しては総合的に実施し、全ての医師にアプローチするとともに、へき地保健医療対策を超えた取り組みを行うこと等が示されている。
 外来医師過多区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等の仕組みの実効性の確保については、保険医療機関の不指定や指定取消という規制的手法を求める意見と、日本医師会が主張していた「保険医療機関の不指定や指定取消は、憲法上の職業選択の自由や営業の自由に抵触する恐れがあるもので、認める余地はない」等の意見が両論併記となっている。
 当日の議論の中で、角田徹副会長は「新たな地域医療構想」において、「回復期機能」が「包括期機能」に名称変更されることに関して、「日本医師会がかねてより主張していたことである」として改めて賛意を示すとともに、国民や患者、病床機能報告を行う地域の医療機関への周知に協力する考えを表明。また、地域医療構想の策定に当たっては、「各医療機関が地域の実情の変化や機能報告を見ながら地域での将来の立ち位置を検討し、自主的に考えていくこと、地域の関係者で協議し、地域の将来の医療提供体制を方向付けていくことが基本であり、重要になる」とした。
 「医師偏在対策」に関しては、「日本医師会の医師偏在対策に関する6項目の提案が盛り込まれた内容になっている点で基本的に評価している」とした上で、「今後は、通常国会に提出される医療法等の改正法案等で国民皆保険を堅持し、良質で安全な医療提供体制につながる制度改革にしていくことが重要になる」と強調した。
 更に、ドイツの例を紹介し、医師偏在の解消のために規制的な手法を取ることは効果がないことを改めて強調した。
 黒瀨巌常任理事はまず、基本的な考え方に対して、「高等教育の段階から、社会保障や医療のあり方について、しっかりとした教育プログラムを受けた上で医学部に進学をしてもらうことで、医師偏在や養成システム等に関する理解のある医師を養成できるのではないか」と指摘。「新たな地域医療構想」については、「民間病院が経営的にも危機に瀕している中で、安易にその病床を制限する、あるいはその病床の転換を迫るといったことは閉院につながる危険がある」と述べるとともに、地域の実情を見ながら将来予測を丁寧に立てるよう求めた。
 また、「医師偏在対策」の具体的な取り組みとして、外来医師過多区域における新規開業希望者に対し、開業6カ月前に、提供予定の医療機能等の届出を求め、協議の場への参加、地域で不足する医療や医師不足地域での医療の提供の要請を可能とし、要請に従わない医療機関に対しては勧告・公表、保険医療機関としての指定期間を短縮するとしていることについては、「強制的な手法はそぐわない」と述べた上で、「医療レベルを担保するためにはある程度しっかりと研修をしなければならない医療機能があることから、都道府県によっては、その機能を習得する期間の猶予を与えるといった判断ができるようにする必要もあるのではないか」と提案。更に、地域の医師会が医療機能の習得の相談や支援を行う取り組みの必要性も強調した。
 今回、意見案が了承されたことを受けて、厚生労働省では昨年12月25日に「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を公表。これらを基に次期通常国会に関連法案の提出を目指す予定としている。

2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見(案)

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