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令和7年(2025年)2月5日(水) / 日医ニュース

地域医師会立看護師等養成所が直面する存続の危機

 2000年、全国には看護師・准看護師養成所が1263校、看護大学・短大が151校ありました。それが2024年には養成所が814校、看護大学が310校と、大学は2倍以上に増加する一方で准看護師課程や看護師2年課程の養成所は大きく減少しています。
 特に准看護師学校養成所は平成29年から令和6年までに50校が閉校となり、地方の看護教育に大きな影響を与えています。
 医師会立養成所では、令和5年度に准看護師課程2校、看護師2年課程6校が募集停止、令和6年度には准看護師課程10校、看護師の2年課程6校、3年課程1校が募集を停止しています。
 この背景には、18歳人口の減少に伴う人口減少地域での経営難が挙げられます。准看護師学校養成所は地方に多く設置されており、その地域特有の厳しい環境にさらされてきました。
 また、家庭ごとの子ども数が減少し、ある程度は学費を捻出できる家庭が増えたことが大学進学の増加につながっていると考えられます。
 しかし、親の援助が難しい社会人や、人生の再スタートをしようとする人々にとって、准看護師資格は生活を立て直すための重要なステップと言えます。その資格取得の場が激減していることで、彼ら彼女らの選択肢が狭められているのが現状です。
 更に、養成所を廃止する際にはいくつかの課題があります。最後の卒業生を送り出すまで運営を続ける必要があり、その間、教員や職員の雇用を維持しなければなりません。
 また、学校施設の処分方法も重要な課題であり、これらのコストは地域医師会にとって非常に大きな負担となります。
 全国の地域医師会は、看護職の養成を通じて地域医療を支え、日本人の健康の増進や疾病リスクの解消、医療の平等化を推進してきました。しかし、21世紀に入ってから、都市部と地方の格差が顕著になりつつあります。
 どこに住んでいても平等に医療を受けられる「国民皆保険制度」は日本の平等の象徴とも言える制度であり、医療機関と医師や看護職の存在が不可欠である一方、それを支える看護師等養成所が存続の危機に立たされているのが現状です。
 医師会立の養成所の廃止が相次ぐことで、地域で働く看護職は更に減少し、病院や診療所の運営が困難になっていくでしょう。地方の看護職不足は、その地域の医療機関の閉鎖を招き、結果として人口の流出が進むという悪循環を生み出します。このように医療機関の喪失は、地域の存続そのものに深刻な影響を及ぼしてしまうのです。
 この根本的な問題を解決することは簡単ではありませんが、少なくとも地域の看護師等養成所存続を支援することは国や地方自治体の責務ではないでしょうか。


(日医総研副所長 原 祐一)

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 日本医師会総合医療政策研究機構(日医総研)の研究員の報告書やワーキングペーパーは日医総研のホームページからご覧頂けますので、ご活用願います。
 https://www.jmari.med.or.jp/

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