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令和7年(2025年)11月5日(水) / 日医ニュース

組織強化に向けた好事例として、3つの医師会の活動を共有

組織強化に向けた好事例として、3つの医師会の活動を共有

組織強化に向けた好事例として、3つの医師会の活動を共有

 令和7年度都道府県医師会組織強化担当役職員連絡協議会が10月8日、WEB会議形式で開催された。
 協議会は城守国斗常任理事の司会により開会。冒頭あいさつした松本吉郎会長は、昨年12月の会員数調査で前年比1450人増となり、過去最高を更新していることに改めて謝意を示した。その一方で、(1)医師数が年4000人以上増加する中で、組織率の維持・向上をするためには毎年2000人超の会員数の増加が必要になる、(2)新政権誕生後も医療機関の厳しい財政状況に対応するための財源を確保するのは簡単ではない―ことを説明し、会員数の更なる拡大と組織の質向上が必要になると強調。今後も日本医師会、都道府県医師会、郡市区等医師会が一体となり、政策提言力を高める必要性を訴えるとともに、各県医師会からの報告が今後の取り組みの参考となることに期待を寄せた。
 続いて、(1)継続的な組織強化に向けて、(2)医師会会員情報システム(MAMIS)の活用を通じた組織強化―について、それぞれ説明が行われた。
 (1)では、城守常任理事が、日本医師会の入会に対する基本的な考え方を説明。①日本医師会は、政府・行政から、医療現場の声を聞き取るための実質的な代表窓口として位置付けられており、医療政策の大きな要請団体として、医療界の中枢的な立場を担っている②日本医師会の発言に問われるのは、その発言が医療現場の医師の声をどれだけ反映しているのかという視点である③日本医師会の組織率を高めることは、その発言力を一層強く、その重みを増すことに直結する―として、会員サービス等のメリットはもちろんのこと、それ以上に「医師会に属することのメリット」を、今一度、全ての医師に考えてほしいとした。
 その上で、当面の目標として、本年12月1日の「日本医師会会員数調査」を挙げ、本年度の調査が日本医師会の代議員数を決定し、また、来年には厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」が公表される中で、組織率を計る際の重要な調査になることを説明。
 特に、地域医師会の会員でありながら日本医師会に未入会の会費減免対象者の入会促進は、比較的着手しやすい課題であるなどとして、短期間での成果を期した、より戦略的な取り組みへの協力を依頼した。
 (2)では、笹本洋一常任理事が、MAMIS公開後1年間の状況として、電子化により入会・異動届の把握が迅速になり、10月2日時点でMAMIS上での会員数は約17万8000人に達していることを報告するとともに、新臨床研修医のオリエンテーション時の二次元コード活用からマイページ作成に至る流れ等、現場での導入手順などを説明。また、今後もMAMISは①医師会業務のDX化②諸手続きの簡素化③会員定着・組織率向上④会員情報管理の標準化―という4本柱の下、生涯教育単位や認定情報、将来的には賠償特約保険や医師年金加入状況の参照まで統合を進め、「12月1日の会員数調査では18万人を目指していきたい」と述べた。
 更に、出席者に対してはオリエンテーションでのマイページ作成支援やコンタクトセンターの活用により、MAMIS定着とWEB手続き化を推進するよう協力を要請した。
 次に、神奈川、静岡、宮崎の各県医師会からの活動報告が行われた。
 小松幹一郎神奈川県医師会理事は、同県の医師数は全国的に見れば多いが、人口10万人当たりでは全国40位と低水準にあり、医師の偏在が課題であると報告。会員数は9965人(令和7年9月1日時点)、組織率は48・4%で、開業医の入会率が約8割であるのに対し、勤務医は3割程度にとどまっているとした。
 また、「若い先生方は『医師会に入って何のメリットがあるのか』『会費に見合うのか』という視点で見ている」と述べ、時間的・金銭的な負担を軽減し、気軽に医師会に関わることができる環境を整えることが必要と指摘。その具体的な例として、臨床研修病院合同説明会や初期研修オリエンテーションでの勧誘、動画や記事による広報、郡市医師会への支援などの取り組みを紹介した。
 今後については、「若手や女性医師が主体的に活動に関わる仕組みづくりを進め、地域に根差した活動を通じて、医師会の存在意義を実感してもらえるようにしていきたい」と述べた。
 齋藤昌一静岡県医師会副会長は、令和6年12月1日時点での会員数や組織率の状況を踏まえ、県内で行っている組織強化策を詳説。県内医師数の母数や郡市会員の構成を示しつつ、県内医師の郡市医師会への入会率が平均以下となっている点が課題であるとした上で、その対応策として診療所の事業承継支援、金融機関(医師信用組合・静岡銀行)との連携による承継相談体制の整備、弁護士による無料法律相談や資格取得支援など、開業医向けサービスの充実を図っていることを説明した。
 また、勤務医・研修医対策としては、①医師バンクの運営や研修医向けオリエンテーション②WEBセミナー③少人数実技系セミナー「屋根瓦塾」―等を実施している他、女性医師向けロールモデル講演会やキャリア支援シンポジウムも展開するなど、世代別・ステージ別に訴求することで組織率向上を目指しているとした。
 大塚康二朗宮崎県医師会常任理事は、宮崎県が地理的にも構造的にも厳しい現状であり、九州で唯一の医師少数県となっていることから、大学・医師会・県行政が一体となって医師確保の取り組みを進めていることを紹介。県内の医師総数は3000人弱で会員は約2000人、入会率は約65%であるが、その促進のため臨床研修医全員を対象にした説明会を実施するとともに、入会承諾書の取得等を工夫することによって、臨床研修医の10%の入会を目指しているとした(令和7年4月時点で61人中59人が入会を承諾)。
 更に、保育支援や中高生向けの啓発活動、大学医局へのランチ説明会など、多層的なアプローチを展開するとともに、地域の強みである大学・行政との連携を生かす体制を整備するばかりでなく、令和6年7月には医師会内に「組織強化・将来構想委員会」を設置。小委員会とすることで機動的に課題を拾い集め、非会員の勧誘と会員離脱防止を同時に行う戦略を進めていることを説明した。
 その後に行われた協議では、「自由診療に対する医師賠償責任保険の適用範囲」「学生会員制度の導入や若手医師へのアプローチのあり方」「三層構造における入会制度や定款改正の課題」などについて、さまざまな議論が交わされた。
 最後に城守常任理事より、「本日の協議会の内容を基に、本年12月1日の会員数調査を当面の目標として、引き続き活発な取り組みをお願いしたい」と述べ、協議会は終了となった。

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