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令和7年(2025年)3月5日(水) / 日医ニュース

スイッチOTC

 「いつものシャンプー無いから買っておいてね」「はい、はい、分かりました」と長年勤めて85歳を優に超えたお手伝いさん。どこを探しても買ってきたはずの品は見当たらず「やれやれ」。夜、車でひとり大手のドラッグストアへ。久しぶり。一番手前は化粧品、シャンプーは一番奥だっけ。
 「あれ?」その途中の商品を見て驚いた。前に来た時はサプリメントやプロテインが数多く陳列されていた場所には、「みず虫薬」「にきび」「しっしん」や他の疾患名の立て札と共に商品がごっそり。近づいて見るといわゆる「スイッチOTC」がいっぱい。「ふえーっ」。
 日常診療で使うお薬はいつまで経っても流通不足。あちらが足りてくるとこちらが品薄。薄いだけならいつかは出てくるかも知れないが、流通しなくなってから一度も見たことがないものもある。製造中止ではないので薬価もある。しかし、流通が全くないお薬が目の前にスイッチOTCとして並んでいる。摩訶不思議。本末転倒?
 医療費削減を企図する政府が進める『セルフメディケーション』の柱となる『スイッチOTC医薬品』。理屈は理解できる。薬がもたらす副作用や患者さん自ら判断することの弊害には、この際思い切って目をつむろう。しかし、その結果『保険診療で使用する医薬品』の流通が不足・止まるということには黙ってはいられない。診療時に医師が困るだけでなく、保険診療において、私を含め保険料を支払っている被保険者の『医療を受け、その利益を享受する』という権利を奪うことになるからである。医療政策のきめ細かい見直しを望む。

(翔)

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