中医協総会が1月29日、都内で開催され、厚生労働大臣からの諮問「医療DXに係る診療報酬上の評価の取扱い」に関する答申が即日取りまとめられ、小塩隆士中医協会長から福岡資麿厚労大臣(代理:鹿沼均保険局長)に手交された。
今回の見直しにより、「医療DX推進体制整備加算」については、令和7年4月1日から同年9月30日までのマイナ保険証利用率の実績要件が引き上げられる他、「医療DX推進体制整備加算」「在宅医療DX情報活用加算」については、共に「電子処方箋(せん)管理サービスに処方情報を登録できる体制(原則として院外処方を行う場合には電子処方箋又は引換番号が印字された紙の処方箋を発行すること)」を有しているかによって加算に差が設けられることとなった(見直しの内容は下図参照)。
議論の中で、長島公之常任理事はまず、「日本医師会が目指す医療DXはITを駆使して、適切な情報連携や業務効率化などを進めることにより、国民、患者に安全・安心で、より質の高い医療を提供するとともに、医療現場の費用や労力の負担を軽減し、その結果として、医師を始めとする医療従事者がこれまで以上に患者さんに寄り添えるようにしていくことにある」と説明。スピード感は重要であるものの、拙速に進めるあまり、医療提供体制に混乱、支障が生じてしまっては、かえって国民の安心・信頼を失い、普及の最大のブレーキになると釘を刺した。
また、マイナ保険証に関しては、普及の大前提となる国民、患者からの信頼が大きく不足していることや、小児においてはさまざまな理由で利用率が低いとして、その配慮を求めた。
電子処方箋に関しても、社会保障審議会医療保険部会で示された、医療現場が導入をためらう要因からも明らかなように、医療機関に責任はないとの見方を示し、「医療現場にとって、また国民にとっても、電子処方箋を利用しやすく、安全に運用できる環境整備を行うことが最も重要であり、改めて国に強く要望する」と述べた上で、このような状況を踏まえれば、電子処方箋未導入の場合でも、点数は現在より引き下げるべきではないと主張した。
長島常任理事は更に、「国民が誰一人、日本の医療制度から取り残されないという安心感こそが最大の推進力であり、国民、患者の信頼を勝ち取るために、国、保険者、そして我々医療提供者、全ての関係者が一丸となり、数字だけを求めて性急に取り組むのではなく、丁寧にきめ細かく環境整備に取り組んでいく必要がある」と強調し、これを中医協の総意とするよう要請した。
また、茂松茂人副会長も、昨今の物価高騰と賃金上昇に診療報酬が全く追い付いておらず、医療現場は余裕のない状況にあることを説明し、理解を求めた。
休憩の後、具体的な点数・割合の見直し案を記した答申案が事務局より示され、中医協として了承することになった。
診療側委員を代表してコメントした長島常任理事は、「電子処方箋の利用率が低い中で、未導入医療機関の点数が引き下げられることは遺憾ではあるが、全体として理解したい」とした上で、今後、医療DXを推進していくためにはさまざまな環境整備が極めて重要になるとして、国及び保険者も一丸となって協力していくことを求めた。
なお、答申には(1)医療DX推進体制整備加算に係る令和7年10月以降のマイナ保険証利用率の実績要件の設定に当たっては、マイナ保険証利用率の更なる向上に向け、本年7月頃を目途に、マイナ保険証の利用状況、保険医療機関・保険薬局における利用促進に関する取組状況等、実態を十分に勘案した上で検討、設定する、(2)電子処方箋については、令和7年度夏を目途に見直しを行うこととされている電子処方箋に関する新たな目標の達成等に資するよう、その評価の在り方及び実効的な措置について、次期診療報酬改定に向けて検討する―ことの2点を盛り込んだ附帯意見が付けられた。
その他、当日は、1月15日に諮問された入院時の食費基準額の見直しについても具体案を提示した答申案が示され、了承された(内容については別記事参照)。