令和7年(2025年)6月5日(木) / 日医ニュース
釜萢副会長が医療介護現場の経営状況の厳しさを説明し骨太の方針への対応に協力を求める
第33回日本医師会・日本臨床分科医会代表者会議
- 000
- 印刷
第33回日本医師会・日本臨床分科医会代表者会議が5月14日、日本医師会館小講堂で開催され、日本医師会からは松本吉郎会長を始めとした役員が出席。医会側からは幹事を務めた日本小児科医会を始め、13の医会等の代表者が参加し、日本医師会からの報告や各医会等からの日本医師会への要望などに係る意見交換が行われた。
冒頭、開会あいさつを行った伊藤隆一日本小児科医会長は、比例代表の日本医師連盟の推薦候補者である釜萢敏副会長の更なる支援に向けて、各医会等に対して、引き続き広報・宣伝への協力を呼び掛けるとともに、本会議で有意義な議論がなされることに期待を寄せた。
続いて議事に移り、日本医師会より(1)中央情勢報告、(2)骨太の方針に向けた対応、(3)新たな地域医療構想等に関する検討会の審議経過、(4)医師の地域偏在・診療科偏在への対応、(5)かかりつけ医機能報告制度の状況―について報告した。
(1)では、釜萢副会長がまず「医療・介護現場の経営状況は極めて厳しく、今後、持続可能性のある形で次世代につなげていくことができるのか危うい状況にある」と指摘。具体的には、①無床診療所の経常利益率の最頻値は令和5年度で0・0~1・0%であったが、令和6年度はマイナス3・0~マイナス2・0%に更に悪化する見込みである②医業利益の赤字病院割合は69%まで増加、経常利益の赤字病院割合は61%まで増加している③急性期、慢性期、精神科、いずれの病院も医業利益率は経年的に悪化している④介護現場においては、物価高騰の影響が大きい―こと等を詳説し、「このままでは医療や介護の事業継続は極めて困難になり、崩壊する医療機関も出てくるが、一度崩壊してしまえば取り返しがつかなくなる。また、最も懸念されるのは、国民が求める医療や介護を提供できなくなることだ」と訴えた。
その上で、(2)ではその解決策として骨太の方針に向けた対応について説明。釜萢副会長は、「補助金と診療報酬の両面からの対応」などの他、令和8年度診療報酬改定に向けては、①経済成長の果実の活用②「高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という社会保障予算の目安対応の見直し③診療報酬等について、賃金・物価の上昇に応じた公定価格等への適切な反映④小児医療・周産期医療体制の強力な方策の検討―を要望しているとし、日本医師会としても引き続き国へ働き掛けていくとした。
(3)では、江澤和彦常任理事が2023年度病床機能報告について、2025年では119万床が見込まれる他、急性期が若干減り、回復期が増えていることから、一定の進捗があったとの評価がなされていると説明。
その上で、新たな地域医療構想においては、医療機関機能に着目するとともに、「治す医療」を担う医療機関と「治し支える医療」を担う医療機関の明確化等を目指すとし、病床機能報告の「回復期」については、日本医師会がこれまで提案していた「包括期」へと名称と定義の変更がなされることを改めて報告。その他、今後は在宅医療・介護との連携も見据えて「地域医療介護構想」が求められることや、2040年の必要病床数等の推計は、直近の実績を踏まえた見直し修正も可能であること等を概説した。
更に、江澤常任理事は、過去に経験のない経営危機に瀕(ひん)していることに加えて、病床機能の変更が行われることで医療機関には更なる経営リスクや労力が伴うことになるとして、危機感を表明。調整会議においては医療機関の経営が成り立つかという視点での議論も今後必要になるとした。
(4)では、今村英仁常任理事が医師の地域偏在・診療科偏在について、昨年12月に公表された厚生労働省「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」の策定の経緯に触れ、本パッケージでは「総合的な対策」「全ての世代の医師へのアプローチ」「従来のへき地対策を超えた取組」を基本的な考え方として、医師確保計画の実効性の確保など五つの取り組みを掲げているとし、日本医師会の考えも盛り込まれていると説明。「医師偏在には一つの手段で解決するような魔法の杖は存在しない。あらゆる手段を駆使して複合的に対応する必要がある」と改めて強調した。
(5)では、城守国斗常任理事が、かかりつけ医機能に関する議論の流れや報告制度の概要等について説明した上で、「報告は強制ではないが可能な限り報告をして欲しい」と要請。更に「本報告が行われることで、その地域でどのような機能が充足し、また不足しているのかが可視化される。更に、不足している機能をどのように補うかについても、市町村、都道府県での協議の場で議論が可能になることによって、地域住民もかかりつけ医機能を享受することができる」と強調し、協力を呼び掛けた。
また、今後については日本医師会生涯教育制度をブラッシュアップしていくとした他、かかりつけ医機能報告制度にかかる研修の修了申請・承認作業は医師会会員情報システムMAMISを活用することを報告した。
その後、公務のため遅参した松本会長があいさつに立ち、自由民主党の社会保障制度調査会、「国民医療を守る議員の会」や公明党の社会保障制度調査会等で「骨太の方針2025」に向けた議論が開始されていることに言及。各会議の中では医療機関経営の窮状を訴え、補助金と診療報酬の両面での対応を求めるとともに、「OTC類似薬の保険適用除外」等に対して反対する姿勢を示したことを明らかにし、参加者に対して理解と協力を改めて求めた。
続いて、13の医会等から、各々の取り組みや現状、課題などについて報告がなされ、会議は終了となった。
次回は10月15日に開催される予定となっている。