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令和7年(2025年)6月5日(木) / 日医ニュース

「国民医療を守る議員の会」の決議を基に石破総理に医療の危機的な状況を打開するための対応を要望

「国民医療を守る議員の会」の決議を基に石破総理に医療の危機的な状況を打開するための対応を要望

「国民医療を守る議員の会」の決議を基に石破総理に医療の危機的な状況を打開するための対応を要望

 松本吉郎会長は5月14日、都内で開催された「国民医療を守る議員の会(自由民主党の議員連盟の1つ)」総会に出席し、医療機関の窮状を訴えるとともに、改めて補助金と診療報酬の両面からの対応を強く要望。更に23日には「国民医療を守る議員の会」の田村憲久顧問、武見敬三会長代行、古川俊治事務総長と共に総理官邸を訪れ、総会で取りまとめられた決議を基に石破茂内閣総理大臣に医療の危機的な状況を打開するための対応を求めた。

「国民医療を守る議員の会」総会には、松本会長を始め常勤役員や都道府県医師会の役員等117名の他、衆参の国会議員137名が出席。「骨太の方針2025」の取りまとめに向け、医療の危機的な状況を打開するための要望について議論が行われた。
 総会では、まず、田村顧問からあいさつが行われ、「自民党の社会保障制度調査会長として、医療関係者の厳しい状況は理解している」とした上で、病院や診療所の収支が悪化しており、特に地方の医療機関の経営は厳しい状況にあると強調。医療・介護・福祉業界で働く900万人以上の人々の賃上げが、日本経済の再生にとって不可欠であるとの考えを示した。
 続いてあいさつした岸田文雄最高顧問は、今年の春闘の結果でも昨年を上回る高い賃上げ率となったことに触れ、「次期診療報酬改定では、経済成長の果実を医療分野にもしっかりと還元していかなければならない」と述べた。

医療機関の窮状を訴え、別次元の対応を求める―松本会長

250605a2.jpg 総会に出席した松本会長は資料に基づき、(1)医療機関の経営状況、(2)賃上げの状況、(3)骨太の方針の策定に向けて―の3点について説明を行った。
 (1)では、病院・診療所の令和6年度の経常利益率を機械的に推計した結果を基に、病院と無床診療所の経常利益率が令和4年度から5年度に掛けて低下し、令和6年度の推計では病院、有床・無床診療所の経常利益率の最頻値がいずれもマイナスとなっていることを説明。
 また、債務償還年数の分析結果を見てみると、半数の病院が破綻(はたん)懸念先と判断される30年を超えていることにも触れ、①物価や賃金の上昇に対応できる仕組みを構築する②社会保障予算に関する財政フレームの見直しを行う③社会保障関連費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する取り扱いを改める―ことが不可欠であると主張した。
 (2)では、令和6年春闘の結果、全産業での賃上げ合計額は5・1%上昇しているが、令和6年度診療報酬改定で創設されたベースアップ評価料は2・5%分の引き上げに過ぎず、全産業の賃金の伸びには到底及ばない状況にあると指摘。賃金上昇を踏まえた別次元の対応が必要であると訴えた。
 (3)では、「まずは令和6年度補正予算を早期に執行するとともに、補助金と診療報酬の両面からの対応が必要」と強調。
 また、消費税収が増加していることに触れ、経済成長の果実である消費税収増を社会保障に活用すべきと訴えた。
 更に、令和8年度診療報酬改定に向けては、①経済成長の果実の活用②「高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という社会保障予算の目安対応の見直し③診療報酬等について、賃金・物価の上昇に応じた公定価格等への適切な反映④小児医療・周産期医療体制の強力な方策の検討―が必要だとして、協力を求めた。
 厚生労働省から出席した鹿沼均保険局長は医療機関の非常に厳しい経営状況に理解を示した上で、その対応として補正予算の編成、無利子無担保融資、入院時食事療養費の引き上げ等を行ってきたことを説明。「補正予算は単年度の対応であるため、恒常的な対策として診療報酬改定が重要になる」と強調した。
 また、診療報酬を1%増やすには1000億円の財源が必要となるが、高齢化の伸びの範囲内に社会保障費の伸びを抑制するという枠組みがある中での財源確保は厳しいとの認識を示した。
 引き続き、総会では当日の議論を踏まえ、「骨太の方針2025」の取りまとめに向け、医療の危機的な状況を打開する方策として、(1)経済成長の果実の活用、(2)「高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という社会保障予算の目安対応の見直し、(3)診療報酬等について、賃金・物価の上昇に応じた公定価格等への適切な反映、(4)小児医療・周産期医療体制の強力な方策の検討―の4点の対応を求める決議を採択することが提案され、了承された。

決議の内容について熟慮する姿勢を示す―石破総理

 その後、松本会長は5月23日、今回取りまとめられた決議を提出するため、「国民医療を守る議員の会」の田村顧問、武見会長代行、古川事務総長と共に官邸を訪問し、石破総理と会談を行った。
 会談の中では田村顧問、武見会長代行が決議の内容等を説明。松本会長は、(1)病院では約7割が赤字で、実際に閉院となる病院もある他、診療所でも3割程度が赤字となっている、(2)医療機関では人材確保も厳しい状況となっている―ことなど、その窮状を改めて訴えた上で、「物価・賃金の上昇、日進月歩する医療の高度化等への診療報酬での対応とともに、緊急的な補助金での対応をお願いしたい」と要望した。
 これに対して、石破総理からは決議の内容を熟慮する姿勢が示された。

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