

 中医協総会が10月1、8、17日に都内で開催され、次期診療報酬改定に向けて、(1)在宅医療、(2)入院、(3)外来―に関する2回目の議論が行われた。
 (1)では江澤和彦常任理事が、資料の中で機能強化型の在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)に対する加算となっている「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」の算定要件を大きく上回っている医療機関が多数存在するとの記述があることに言及。「機能強化型の在支診・在支病が緊急往診や看取りなどに十分な効果を発揮している証でもあり、この加算要件を引き上げるべきではない」と述べた。
 その他、今後、在宅医療の需要が大きく伸びることが見込まれ、地域全体が総力を挙げて在宅医療を支える必要があるとし、「要件の引き上げではなく、むしろ、より多くの医療機関が積極的に在宅医療に参入できるよう、地域で支える環境を診療報酬で整えていくことが大変重要になる」と述べた。
 「連携型の機能強化型在支診・在支病における24時間往診体制への貢献の度合いに応じて、よりきめ細かく評価する」という論点に関しては、「他の医療機関に夜間等の対応を依頼している連携型在支診・在支病と、そうした医療機関を支援する在支診・在支病の評価を分けて評価することによって、現在、可能な範囲で在宅医療を提供している医療機関が在宅から撤退してしまうようなことが起きれば、本末転倒である」と指摘。各医療機関ができる範囲で在宅医療に参画できるよう、診療報酬で支援していくべきだと主張した。
 (2)では、急性期入院医療と高度急性期入院医療について議論が行われた。
 議論に当たって、急性期一般入院基本料に関しては、「同じ急性期一般入院料1を算定している病院でも、許可病床数当たりの救急搬送件数や手術件数、医師数、収支構造等が病院の機能によって異なる中で、こうした病院の機能や特性を踏まえ、急性期における病院機能を踏まえた評価のあり方について、どう考えるか」との論点が示された。
 この論点について、江澤常任理事は「これまでの病棟単位ではなく、病院としての急性期機能を評価する方向性が示されており、大変大きな見直しとなる」との懸念を表明。現在の病院の経営状況は、過去に経験したことの無い瀕死の重症状態にあり、大きな見直しや適正化を行うと容易に病院は倒れてしまうとして、「大きな見直しや適正化は厳に慎むべきだ」と訴えた。
 更に、許可病床1床当たり及び1施設当たりの救急搬送受入件数別の項目で、医業利益は全ての項目でマイナス、赤字となっており、緊急に診療報酬による支援が必要な状況が明らかになっていることにも触れ、「これらのことを踏まえれば適正化することはないと確信している」と述べた。
 更に、今回の資料は病院における急性期機能を救急搬送件数や全身麻酔手術件数で評価する方向性も見え隠れしていると指摘し、「仮に検討するのであれば、詳細かつ精緻(せいち)なシミュレーションを行い、1カ所残らず、全ての病院がプラスとなるよう確認することは不可欠であり、絶対条件だ」と主張した。
 江澤常任理事は新たな地域医療構想において、医療機関機能報告を行う方向となっている点にも言及。①あくまでも国民に分かりやすく示すことを目的としており、複数機能を有する医療機関は複数の報告ができる仕組みも想定されている②最適な医療提供体制を構築するために、各医療機関が現状の機能を報告するものであり、診療報酬で評価することを想定したものではない―といった状況を踏まえ、「診療報酬で医療機関機能を誘導し、地域医療構想の中でパズルのようにはめ込むことは不可能であり、現状の病院は全く余力がなく潰れてしまう」と危機感を示した。
 その上で次回改定は、医療機関の経営を「治し支える」改定であることが不可欠との見方も改めて示し、「このことを念頭に置きながら、改定議論に臨むべきだ」と訴えた。
機能強化加算の継続を強く要求―江澤常任理事
 (3)では機能強化加算、生活習慣病管理料などについて、議論が行われた。
 機能強化加算に関して、支払側は「初診患者にも分かりやすい形でかかりつけ医機能を評価する診療報酬に、名称を含めてつくり変えるべきだ」と主張。これに対して、江澤常任理事は入院・外来医療等における実態調査の結果を基に、機能強化加算を算定している医療機関には検査体制やポリファーマシー対策など、かかりつけ医機能をより発揮するための効果が現れてきていると指摘。「この有意義な加算を継続して評価していくことが患者のためにも極めて有益であり、地域の最適な医療提供体制の構築のためにも不可欠である」と述べるなど、支払側の考えに強く反論した。
 また、生活習慣病管理料について、支払側が「管理料(Ⅰ)については、検査を始めとする医療資源の投入量を詳細に分析し、実態に合った評価に適正化すべき」との考えを示したことに対して、江澤常任理事は「前回改定での見直しはあまりにも大きな変更で、現場は大変苦労している」とし、「今回の改定では、臨床現場の実態を踏まえた修正を優先すべき」と主張。
 その上で、「生活習慣病の管理を行うに当たって重要なことは、個々の患者に応じた管理ができるようにすることであり、その評価のあり方も柔軟にすることだ」と述べ、その観点に立って療養計画書の記載内容や提供頻度、包括範囲の見直し等を行うよう求めた。
補填状況の修正に猛省と再発防止を要請―長島常任理事
 8日には診療報酬調査専門組織医療機関等における消費税負担に関する分科会も開催された。
 8日には診療報酬調査専門組織医療機関等における消費税負担に関する分科会も開催された。
 分科会では初めに、厚生労働省事務局より、令和2~4年度の補填率の集計において、水道光熱費や公費単独レセプト(生活保護等の公費負担医療)を計上していないなどの誤りがあったことが報告された。
 データを修正すると、令和2年度、3年度は全体の補填率が100%を超えていたものの、4年度は98・9%と補填不足であったことが判明したとのことで、厚労省は陳謝するとともに、今後、ヒューマンエラーが出にくい手法を検討するとした。
 また、令和5年度、6年度の消費税補填状況の把握に関しては、前回(令和5年度)に実施した方法に倣って調査し、本年12月を目途に報告することが提案され、了承された。
 議論の中では、今回の補填状況の修正について、長島公之常任理事は「消費税対応の補填の仕組みそのものへの信頼を大きく失墜させるものである」と指摘し、厚労省に猛省と再発防止策の徹底を強く求めた。
 また、令和6年度改定において診療報酬の上乗せ点数の見直しを行わないと決めた、100%以上補填されているという前提が崩れているとし、物価上昇の背景も踏まえ、現状に合った補填のあり方を検討するよう要望した。
 宮川政昭常任理事は、これまでは税率が上がった時にのみ、補填点数の見直しが行われてきていたが、今回は令和5年度、6年度の補填状況次第では補填点数の見直しが必要となる可能性が高いことを指摘し、必要に応じて本分科会の開催回数を増やすよう求めた。





