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令和8年(2026年)3月20日(金) / 日医ニュース

「子育て支援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して~この子らの笑顔のために~」をテーマに開催

「子育て支援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して~この子らの笑顔のために~」をテーマに開催

「子育て支援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して~この子らの笑顔のために~」をテーマに開催

 「子育て支援フォーラムin高知」が2月28日、日本医師会、SBI子ども希望財団、高知県医師会の共催により高知市内で開催され、子ども達を社会全体で虐待から守るべく熱い意見が交わされた。
 本フォーラムは子育て支援とゼロ歳児からの虐待防止に向けて、平成23年度より、全ての都道府県での開催を目指して行ってきたもので、通算36回目となる。
 当日は、中澤宏之高知県医師会副会長の司会で開会。冒頭のあいさつで松本吉郎会長(代読:渡辺弘司常任理事)は、増加の一途をたどっていた児童虐待相談件数が、令和6年度は初めて減少したものの、22万3691件と依然として高止まりしている状況に触れ、「悲劇が繰り返されないためにも、虐待の根底にある社会的な要因に目を向け、できるだけ早期にさまざまな関係者が適切な対応を取ることが必要である」と強調し、理解と協力を求めた。
 続いて、あいさつした野並誠二高知県医師会長は、ゼロ歳児の被害が多いという現実は、大人が真摯(しんし)に向き合わなければならない大きな課題であると指摘。「妊娠、出産、そして子育ての段階においても、周囲の支えがあれば救える命があり、守れる笑顔がある」と述べ、本フォーラムでの学びや気付きが身近な子どもや家庭を支える力となるよう期待を寄せた。

基調講演
「『こども真ん中』支援の実践のために」
中島香織あさひの風法律事務所・子どもシェルターおるき理事 弁護士

260320d2.jpg 引き続き、野並高知県医師会長が座長を務め、中島氏による基調講演を行った。
 中島氏は日本の子ども達の現状について、(1)小中高生の自殺者数が2025年暫定値で532人、(2)いじめの認知件数は2024年度で76・9万件、(3)小中学校の不登校児童数は2024年度で35・3万人―であるばかりでなく、9人に1人は貧困な環境にあり、世界的に見ても精神的幸福度が低いことなどを示し、この数字は日本における子ども達の生きづらさの表れであるとした。
 虐待に関しては、「児童福祉法」でうたわれている福祉と権利では救われない子どもを守るため、「児童虐待の防止等に関する法律」が制定され、虐待の定義(①身体的②性的③ネグレクト④心理的)が明確にされたことを説明。また、法律の中に、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、市町村、福祉事務所、児童相談所に通告する義務が盛り込まれたことにも言及し、「虐待通告という言葉は強く、そんなことをして良いのかという気持ちになるかも知れないが、この通告はその子どもや親へのサポートのきっかけづくりとなる」とし、証拠の有無などを心配せずに実践することを求めた。
 更に、中島氏は通告を受けた側の対応について、児童相談所が調査や指導、保護などを行うことになるとする一方で、市町村には民間団体、福祉・教育関係、医療関係、警察・司法関係などからなる「要保護児童対策地域協議会」の中で情報交換しつつ支援内容を協議して対応していく仕組みもあることを紹介した。
 一方、子ども自身が選ぶ子どものための居場所として、女子児童専用のシェルターを運営していることを紹介。シェルターに来る子どもについては、「家に居られない具体的な理由を言って、自分を差し出すことで初めて守ってもらえるかも知れないというところにたどり着く。しかし、それは子ども達にとってとても過酷なことなので、シェルターで安全を実感してから理由を言えるようになるのを待つ姿勢で臨んでいる」とした。
 また、入所した子ども達への対応については、子ども一人につき一人の弁護士が付き、弁護士が親権者との交渉を担い、シェルターのスタッフは生活支援や受診同行を始め、自立に向けたサポートなどを行っているとし、シェルターの住所は非公表であることを説明した。
 更に、夜間に安心安全な居場所のない子どもや若者に向けたアウトリーチ事業として、街に出向いて声掛けをするとともに、家に帰れない子どもが狙われる危険を回避するため、10~20代のための休憩場所としてカフェの活動も展開しているとした。

シンポジウム

 その後のシンポジウム(座長:船井守高知県医師会副会長、吉川清志高知県医師会常任理事)では、まず、「児童虐待防止対策の推進」と題して、矢部律子高知県中央児童相談所地域支援部長が講演した。
 矢部部長は虐待について、愛着障害や落ち着きのない状態になったり、暴力性を高めて認知のゆがみを生じさせるなど、社会での生きにくさにつながる影響を子ども達にもたらすものであると指摘。児童相談所が介入する頃には問題が複雑化していることも多いとして、保護者の生きづらさの背景に目を向け、予防的観点により初期段階からの関与を始めていくべきとの考えを示した。
 「子どもが自分らしくいられるために~みんなで子どもを育む~」と題して講演した武樋保恵児童家庭支援センター高知みそのセンター長は、令和5年度の虐待相談対応22万5509件のうち、保護されなかったのは19万4695件であり、不適切な養育のリスクのある子どもの大多数は家庭で育ち、地域で生活していることを強調。同センターでは、相談や訪問、同行支援、心理療法を始め、子育てセミナーや多胎の集いを開催するなど、相談者とつながった子育て支援を行っているとした。
 「家庭内子ども虐待の現状・課題と求められる新たな子ども家庭福祉~この子らの笑顔を育むために~」と題して講演した加賀美尤祥社会福祉法人山梨立正光生園理事長は、「虐待の世代間伝達を防止するためにも、在宅支援を基本とする社会的養育システムを再構築すべき」と主張。日本の0~6歳の子ども達の98%は、保育所、幼稚園、認定こども園を利用していることから、これらの施設をアタッチメント形成を基本とする発達保障の場とすべく、保育士の配置基準などを再考すべきだとした。
 「笑顔のための子育ち・子育て~虐待の親子関係から学ぶ~」と題して講演した明石こどもセンターの稲垣由子氏は、発達行動小児科医として児童虐待臨床から学んだことは、「児童虐待は人間関係障害の姿である」ということであり、虐待臨床の目標は子どもを健やかに成長させるとともに、親との関係性を自分の中で整理統合する過程に寄り添うことにあると力説。その際には、共に考える姿勢を示すことが求められるとし、「子どもを死なせることなく、加害者(養育者)を乗り越えて自立させることによって虐待の連鎖は断ち切ることができる」と述べた。
 最後に、世耕久美子SBI子ども希望財団理事長が、「子どもに対する愛情と温かさにあふれた講演を聞き、皆さんの取り組みが子ども達にとってどれほど大きな救いになっているのかと思うと胸が熱くなった。生まれてきて良かったと感じてもらえる社会を皆さんと共に引き続きつくっていきたい」と述べ、フォーラムは終了となった。

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