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令和8年(2026年)10月5日(月) / 南から北から / 日医ニュース

実のある暮らし

 実家の庭には父が植えたたくさんの樹木があった。子どもの頃のお気に入りは良い香りの沈丁花(じんちょうげ)と金木犀(きんもくせい)、それから実が食べられるグミやイチジクだった。あの頃は花や果実の香りと味から季節を感じ取っていたように思う。
 その影響か我が家にも季節を感じられる樹木を植えている。梅やサクランボ、柿、柚子の木は娘たちに収穫の喜びを教えてくれた。12年ほど前、新聞に掲載されていた熊本県八代特産の晩白柚(ばんぺいゆ)の木のオーナー制度に応募した。晩白柚は直径5~30センチと柑橘類の中でも最大級のザボンの一種で、1920年に日本に伝わり主に八代地方で栽培されている。12月から収穫が始まり3月頃まではおいしく食べられる。厚い皮に包まれた果肉はさわやかな甘味と酸味が特徴だ。その外観から、まずは飾って見て楽しみ、香りを楽しみ、果肉を食べて楽しみ、厚い皮でお菓子を作ることもできる。
 八代の日奈久(ひなぐ)温泉(600年の歴史をもつ)に宿泊して、果樹園では割り当てられた木の受粉作業(5月)・摘果作業(7月)・収穫作業(12月)に参加した。オーナーになった1本の木から20個ほどの大きな晩白柚の実が収穫できた。初めて参加した年の収穫祭のお楽しみ会で夫がじゃんけんゲームを勝ち抜いた。賞品で頂いた60センチ程の晩白柚の苗木を早速庭に植えた。植樹から2年半後に初めて花が咲いたので受粉してみた。自家受粉では結実が難しいと聞いていたので期待はしていなかったが、立派な実が一つだけ収穫できた。その翌年は実が大きくならずに落ちてしまったが、次の年は何と5個も収穫できた。その後も数個の収穫があった年や、台風で枝や葉が落ちてしまい実らなかった残念な年もあった。
 4年前に植木市で晩白柚の木をもう一本手に入れて隣に植えた。2年前にやっと花が咲いたので他家受粉をすることができた。期待していた昨年は台風にやられて収穫はゼロだった。だが今年は台風の影響が無かったお陰もあり、これまでで最高記録となる6個の実が育っている。年末には収穫祭を行うつもりである。残念ながら八代のオーナー制度は終了してしまったが、我が家の庭の晩白柚の木はこれからも大きな実をつけて私を幸せな気持ちにしてくれることだろう。
 晩白柚の他に柚子やレモンの木からも収穫の喜びをもらっている。柑橘系の木は春に咲く花の香りが気持ちをリラックスさせてくれる。実が少しずつ大きくなってくると愛おしくなる。そして収穫は最高のご褒美だ。実ある暮らしのお陰で実りある暮らしが送れていることに感謝している。

山口県 山口県医師会報 第1985号より

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