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令和8年(2026年)11月5日(木) / 日医ニュース

特別寄稿 ペルー、ブラジルでの国際医療活動報告

アマゾン川巡回診療船にてアマゾン川巡回診療船にて

アマゾン川巡回診療船にてアマゾン川巡回診療船にて

 今号では慶應義塾大学の国際医学研究会に所属する3名の医学生にこの夏、訪問したペルー、ブラジルでの活動内容やその経験を通じて感じたことなどを紹介してもらった。

団体の歴史及び理念

 国際医学研究会〔International Medical Association:IMA(通称アイマ)〕は、慶應義塾大学医学部の公認団体です。1978年より約50年間、医学部教員1名と医学部6年生3名が派遣団を結成し、夏休みに南米を中心とした世界各地で国際医療活動を行ってまいりました。
 「国際的な医者として活躍することを期待される医学部生が、世界を、日本の外を知らずして医者になって良いのだろうか」、これが創立者の理念です。
 IMA団員は地球の反対側にある南米大陸にて、日本では体験することができない文化、社会、そして医療を体験します。
 南米での全く違う価値観との出会いは、自分自身を、そして日本という国を考えさせる大きなきっかけとなります。
 また、貧困や過酷な環境を目の当たりにする中で、自身の無力さを感じ、そして医療のあるべき姿や医師としての社会への貢献について考え始めます。
 未熟ながらも柔軟な学生の心で、たくさんのことを吸収し、その後の人生の大きな糧とする、そのような旅を49年間続けてまいりました。
 また、IMAの大きな特徴の一つとして、学生の主体性が挙げられます。活動地の選定、実習内容、アポイント取り、現地での移動や宿泊の手配、資金集め、広報など、全ての活動を学生3名のみで行います。そのため、渡航を実現させるためには、学生3名で本気で向かい合い、協力し合わねばならず、準備段階を通じても多くのことを学ばせていただけるというのが、IMAの活動の魅力の一つであると確信しております。
 我々は第49次派遣団として、2026年7月4日〜8月28日までの計56日間、ペルー、ブラジルの2カ国にて活動を行ってまいりました。

メンバープロフィール

学生責任者:渡部龍翔(駒場東邦高校出身)
会計:布川淑惠(豊島岡女子学園高等学校出身)
渉外:和気涼翔(慶應義塾高等学校出身)

渡航内容紹介

7/6~9:リマ(ペルー)
●北・南米最古の大学である、国立サンマルコス大学病院にて内科病棟・外科病棟 実習・見学
●日秘総合診療所 訪問・見学
(ペルーの保険システムや、医師の働き方についてご講義いただいた)
●サンマルコス大学眼科学教授 Dr. LuisのPrivate Eye Hospital 訪問・見学
●カジェタノ・エレディア大学 熱帯医療研究所 訪問・見学
(日本には同じ病気を持つ方が少ない熱帯病の患者さんを診察させていただいた)
7/10、11:タラポト(ペルー)
●Centro Takiwasiの訪問
(精神科領域のホットトピックである、サイケデリックスを用いた治療を30年以上行っているリハビリセンターである)
7/18~24:パリンチンス(ブラジル)
●アマゾン川巡回診療船
7/27~30:ボアビスタ(ブラジル)
●ヤノマミ族の方々が利用する医療施設CASAI(Casa de Apoio a Saude do Indio)の訪問
●コーディネーターをしてくださった医師のAsato先生のお勤め先のロライマ総合病院(Hospital Geral de Roraima)とサンタ・テレザ大学の医学部を訪問・見学
7/31~8/1:ブラジリア(ブラジル)
●ホストファミリーの肥田家の三男、Takashiさんが院長として運営しているEye hospitalの見学
●ブラジル 国立国軍病院 訪問・見学
●国会議事堂 訪問
8/5、6:サンパウロ(ブラジル)
● 日伯医学生会議(サンパウロ大学USP)
(ポルトガル語を用いて、日本の学生及びブラジルの学生で医学的なテーマについてプレゼンを行う)
●団長の田中謙二先生 講演会
●ボーイスカウト団体 訪問
●アインシュタイン病院 訪問
8/7~10:ポルトアレグレ(ブラジル)
●森口医師による巡回診療活動への参加
●リオグランデ・ド・スル州立大学病院 見学並びに診療現場へ参加
8/11〜15:ボツカツ(ブラジル)
●日伯医学生会議〔パウリスタ州立大学(UNESP)〕
8/19~26:シングー国立公園(ブラジル)
●遠隔医療システムの見学
●ブラジル先住民の生活の観察
(より詳しい内容につきましてはIMAホームページ掲載のブログをぜひ、ご参照ください)
 https://imakeio.jp/

今回の経験を踏まえて感じたこと

261105i2.jpg 最後に今回の活動での一番の学びや気付き、活動が終わった今考える「医の原点」、今後それをどう生かし、どう深めていくかについて紹介させていただきます。

●活動での一番の学びや気付き
■想像力は働かせようとし続けなければ、すぐに止まってしまうということ。目の前で起きていることや、そこにある物を見て、何となく理解した気になっていないだろうか。
 自分が相手だとして、1日単位で考えたら、1カ月単位で考えたら、どのような生活をしていて、そこに対して自分は何ができるだろうか。考え続けなければいけないし、考え続けたいと思った(渡部)。
■大学病院で教授をされている森口先生は、診療はもちろん、研究やWHOの業務もされるほどパワフルな方であり、その原動力は「全ては患者さんのため」とおっしゃっていた。
 先生の生き様と心構えを感じ、できる限りのことをするその真意を実践できるよう、今後精進したい(布川)。
■東京での忙しない日々でいかに自分が自分自身を追い込んでいたのか、追い込まれていたのかを理解できた。
 ブラジルは物理的に日本から離れており、また精神的にも「渡航中は渡航に集中しよう」という気持ちであったため、「あれをしよう、これをしよう」と思い立つことはなかった。
 良い意味で「何もできない、することがない」2カ月であり、幼少期のような心の平穏を取り戻すことができた。日本に帰国してからはそれを強く感じている。
 これから、学生から社会人へと立場が変わり、環境も大きく変わることと思う。向上心を持つことは大切ではあるが、それで自分を追い込みすぎることがないように、心に常に余裕を持っていたいと思った。
 そして、その余裕がペルー・ブラジルで見た人たちの明るさ、優しさにつながると思う。南米人の朗らかさを目指して、これからも邁進(まいしん)していきたい(和気)。
●活動が終わった今考える「医の原点」、今後それをどう生かすか、どう深めていくか
■私にとっての医の原点とは、他者の役に立ちたいと思う気持ちだ。
 IMAの旅を通じて出会った医療者は、様々な異なる環境で医療を提供しており、裕福な方も、そうでない方ももちろんいたが、皆、真剣であった。疲れていても、信じられないほど忙しくても、皆、真剣なのだ。
 どのような状況でも真剣になれるのは、他者の役に立ちたいという感情がとても大きく、医療者は仕事を通じてそれを満たせるからだと思う。だからこそ今後重要なのは、本当に患者さんの役に立てているか省み続けることだ。
 そのためには当然、勉強しなくてはならないし、自分が行っている医療行為の妥当性には常に疑問を抱かなくてはいけない。医療者としての万能感など一生持ってはいけない。常に謙虚に、常に真摯(しんし)に(渡部)。
■医療は人と人をつなぐものであり、医の原点は人の原点とも言える。人のために自分の最大限をすることを当たり前のようにする、人の人を想う温かい心こそが医の原点、人の原点であると思う。
 IMAで今回出会った方々とそこから得た経験・学びを基に、医師としての自分らしい情熱を持ち続け、どんな状況でもこれから出会う方々を想い、最善の医療をしていきたい(布川)。
■共にブラジル・アマゾン川に同行してくださった医師の松島先生がおっしゃっていた。学生が考える「医の原点」「医療とは」といった価値観は学生視点のものであり、実際に臨床現場に出てみると大きく違うことがある、と。
 そのため、ここであえて「医の原点」とは何かを断言することは避けようと思う。
 そして、以前会長の中原先生が学生に向けておっしゃっていたように「医療とは何か」を問い続けて医療を探究すること、それが医師としての使命であると考えている。
 ただ、この旅でしか得られなかったことは必ず「医の原点」の探索に重要だと考える。
 ホストファミリーの肥田家の方々を始めとした日系人の温かさや思いやり、森口先生の献身的な姿勢、そして同じ国民同士で助け合うブラジル人の国民性、ブラジルの雄大な自然の中で感じた心の平穏、どれをとってもかけがえのない学びであった。
 一生涯を掛けてこの旅での思い出を消化し、内省しながら、仁術である医療に取り組んでいきたい(和気)。

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