FACE to FACE

interviewee 西村 有未 × interviewer池上 侃

各方面で活躍する医学生の素顔を、同じ医学生のインタビュアーが描き出します。

furukawa

池上(以下、池):西村さんは僕もスタッフとして参加した*Medical Future Fes (MFF)2014の代表として、イベントを成功に導きました。他にも様々な活動をしていて、特にワークライフバランスを考える医学生の活動においては、トップランナーなんです。

西村(以下、西):そんな紹介をされると、何の迷いもなく課外活動に打ち込んでいる学生だと思われてしまいますね(笑)。私は今でこそいろんな活動をしていてアクティブなように見えるかもしれませんが、最初は悩むことも多くありました。と言うのも、こういうことって少し言いにくいんですが、私は東大の医学部に入学して、周囲から奇異の目で見られる居心地の悪さをずっと感じていたんです。学外では **EAMSC in Japanの運営に関わったり途上国支援をするNPOのメンバーになったりしたのですが、学外での活動をしている東大生は当時は少なかったため、「東大生って初めて見た。」「ちょっと怖そう。」といった感じで、壁を感じる瞬間もありました。学内でも、そういう課外活動をしている人が少なく、変わっているなと思われていました。

:そんな居心地の悪さが解消していったきっかけは何だったんですか?

西:課外活動やMFFでいろんな学生と関わるなかで、「周りの目を気にせず自分の信じた道を突き進んでいる素敵な人」とたくさん出会ったことですね。同級生が研究などに自分の道を見出すのと同様に、自分にとってはこういった活動こそがやりたいことなんだ、と胸を張れるようになりました。そうすると、自然と周囲の目も気にならなくなり、自分がやりたいと思うことに、より主体的に取り組めるようになりました。

:西村さんが力を入れている医師のワークライフバランスについて、関心をもつようになったのはなぜですか?

西:端的に言うと、私自身が家庭と仕事を両立していきたいと考えた時に、「このままだとちょっと難しそうだぞ。」と感じてしまったからです。そのため、学生のうちにワークライフバランスについてみんなで考える場を作り、将来に活かそうと思って始めたのがWLB for JOYという活動です。周囲の女子学生と話をしていると、「家庭と仕事を両立させるロールモデルがない。」という声をよく聞きました。育児も仕事もフルで頑張ったベテランの先輩の体験談を聞くと、すごいと思うと同時に「私には無理なんじゃないか。」とも感じてしまう。だから、今まさに育児と仕事の両立に悩んでいるような年の近い先輩をはじめ、多様な生き方・働き方を選択している先輩医師の話を聞こうと考えたのです。

:WLB for JOYのイベントには男子学生も多く参加しているそうですね。僕自身も関心はもっているのですが、そういったことをちゃんと考える機会はあまりありませんでした。

西:イベントには、共働きのため夫婦で協力しながら働いている男性医師にも来ていただいたんですよ。以前から男子学生と話していると、男女の意識の差を感じることが多く、こういった溝を埋めるのも狙いの一つだったんです。女性医師の割合が増えてきている今、職場でも家庭でも男女がより協力する必要があると思います。そういった意識をみんなが持つことで、全ての医師が気持ちよく働き続けられる環境になればいいなと思っています。

*Medical Future Fes…医療系学生による、全国規模の文化祭。昨年は500名以上が集まり、医療に関する様々なイベントを行った。

**EAMSC in Japan…アジア医学生連絡協議会(AMSA)が主催する、アジア最大規模の国際医学生会議。

F2F

西村 有未 (東京大学医学部6年)
WLB for Joy代表、Medical Future Fes 2014代表、研修医・医学生ネット、ジャパンハート学生チーム元メンバー。すべての医師が個性を活かし認め合いながら、働き続けられる環境を作りたいと思い活動してきました。

池上 侃(防衛医科大学校医学科5年)
いつもチャーミングで素敵な西村さんですが、行動の背景にある考え方に初めて触れ、時間を忘れてすっかり話し込んでしまいました。迷いながらも、自分の歩む道をしっかりと選び取ってきた姿に、僕自身大きな刺激を受けました。今回はありがとうございました!