保険医療機関の視点
提供した医療サービスの価格を請求
医療機関は患者が支払った3割の残りをどうしているのか、医療機関側から見たお金の流れを見ていきましょう。
医療機関は患者に対して医療サービスを行った後、提供した医療サービスの価格を計算し、その3割を患者に、7割を「保険者」(保険を運営している組織)に請求しています。
手術・検査・処置など、医療サービスの価格は、それぞれ「公定価格」として、厚生労働大臣により定められています。この価格は全国共通で、同じ診療行為に対してはどこの医療機関においても、誰から治療を受けても同価格になります。このしくみが「診療報酬体系」です。
医療機関は医療サービスの診療報酬点数を組み合わせて医療費を計算し、患者と保険者に請求をします。このため医師は診療の際に、病名とそれに対して行った処置の明細をカルテに記載し、診療報酬体系に応じた処置内容の請求をします。
この病名登録と処置オーダーは、みなさんも医師として働くようになった際には、必ず行う必要があります。漫然と行うのではなく、ぜひ保険医療のお金の流れを理解した上で行ってほしいと思います。
医療費の支払い方式
このように診療行為や投薬を行った実績で医療費が支払われる方式を「出来高払い」と言い、外来診療を中心にこの方式が取られています。提供した医療サービスの価格を合算した分を請求できるので、医療機関はその時必要だと思った診療行為を提供することができます。
対して、入院1日当たりの定額医療費を規定する「DPC分類」が2003年から中核病院を中心に導入されつつあります。これは医療サービスごとではなく、診断と処置の組み合わせによって価格が決まる分類体系です。例えば、同じ病気と診断された患者の場合、「出来高払い」では診療の内容によって医療費が変動しますが、DPC分類を採用している病院では、どのような検査・治療をどれだけ行っても医療費は定額となります。このような支払い方式を「包括払い」とも呼びます。
しかし両支払い方式には、それぞれ心配なことがあります。病院経営が苦しくなると、「出来高払い」では過剰な診療、「包括払い(DPC)」では過少な診療、いわゆる粗診粗療になってしまう傾向があるということです。
医療提供体制の維持
誰もが必要な時に医療を受けられる世の中にするためには、医療機関も効率よく医療を提供する工夫をし、できるだけ多くの患者を受け入れられる環境を整えることが求められていると言えます。医療機関は定められた価格体系の中で、医師・看護師などを常駐させ、医療設備を維持する費用をやりくりしながら、医療提供体制を維持していく必要があります。
このように医療保険制度は、医療機関の経営にも大きく関連する制度なのです。
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