日医では、10月1日から実施される「医療事故調査制度」において、特に院内事故調査を支援する立場から、医師会組織としての体制づくりについて、会内の「医療安全対策委員会」(委員長:平松恵一広島県医師会長)で、昨年10月から検討を重ね、本年4月に、第1次の中間答申「医療事故調査制度における医師会の役割について」を公表、今村定臣常任理事が5月20日の定例記者会見で説明している別記事参照。
同常任理事は、同委員会が、その後も10月の制度施行までに医師会として準備すべきことなどを集中的に議論、8月21日に、第2次中間答申として取りまとめ、横倉義武会長に答申したことを報告した上で、その概要を説明した。
今回の第2次中間答申「医療事故調査制度における医師会の役割についてII~院内事故調査の手順と医師会による支援の実際~」は、院内事故調査を行う医療機関とそれを支援する医師会などの支援団体の、それぞれにとって具体的なマニュアルとなるものを目指してまとめたもので、その目的に従い、実際の事故調査、あるいはその支援の流れに極力沿うような構成がとられている。
第2次中間答申は、1.はじめに、2.基本的な考え方、3.院内事故調査のあり方、4.院内事故調査報告書、5.院内事故調査を支えるための取組み、6.おわりに─からなっている。
- 「2.基本的な考え方」
- 「2.基本的な考え方」では、医療事故調査に関わる関係者がよく理解し、共有しておくべき目的や理念を明らかにし、院内事故調査を実施する医療機関では、関係者が事故の真実の原因を知るために、客観的に広い視野で調査に臨むことの重要性が謳(うた)われている。
また、支援団体としては、医師会が支援の全体の方向性を初期段階でしっかりと定められるよう、各都道府県医師会の中に「医療事故調査支援委員会(仮称)」等を設置し、組織的な対応がとれる体制を構築しておくとともに、個別具体的な事例においては、時間帯や内容に応じて担当役員や事務局が受けるなど、医師会ごとに柔軟に対応する具体的な方法を提示している。
- 「3.院内事故調査のあり方」
- 「3.院内事故調査のあり方」では、医療事故の「判断」の局面と「調査」の段階に分けて、それぞれの項目ごとに、「a.医療機関が行うこと」「b.支援団体が行うこと」を区別して時系列に解説するという構成がとられている。
実際に事案発生の際には、例えばAiや病理解剖の要否についての判断と遺族への説明など、「初期対応」への支援をいかに確実に提供できるかで、その後の「調査」の進め方にも大きな差が出るとして、特に「初期対応」の重要性を指摘している。
次に、「調査」により、解剖所見、Ai読影レポートの他、各種の診療記録、関係者の証言等、必要な情報を集め、それらを整理・分析する「論点整理」の作業の際は、当該診療に関与した医療関係者等から出された疑問点等も随時追加するなど、この過程を充実させることが、実質的な成否を分かつ重要な鍵となると指摘。また、協議のために、医療機関内に設置する事故調査委員会の「委員長や主領域の専門委員は外部委員が望ましい」との考え方が示されている。
- 「4.院内事故調査報告書」
- 「4.院内事故調査報告書」以降の部分では、調査報告書は、当該医療機関が支援団体の協力を得て作成していくもので、そのために関係者間での草稿のやり取りが何回にも及ぶ、といった作成過程での基本的な考え方などを解説。これらのモデルとして同委員会が参考にし、答申全体の基盤となった考え方は、いくつかの都県医師会における先行事例、とりわけ福岡県医師会で近年取り組まれてきた、医師会が中心となり当該医療機関と協働して医療事故調査を行う手法であるとしている。
最後に、今村常任理事は、8月21日に日医会館で開催した都道府県医師会医療事故調査制度担当理事連絡協議会で、第2次中間答申の内容について詳細を報告した別記事参照とし、今後、全国で活用されることに期待を示した。 更に、医療事故調査制度は10月から実施されるが、医療安全対策委員会には引き続き、制度の円滑な運用がなされるよう、取り組みを継続してもらう予定であるとし、「特に、都道府県医師会ごとに初期対応を確実に遂行できる人材を養成していくことは不可欠と思われ、人材養成の適切なあり方についても、改めて検討いただきたいと考えている」と述べた。
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