横倉義武会長は11月4日、厚生労働省で塩崎恭久厚労大臣と診療報酬改定の問題等について意見交換を行い、医療における適切な財源確保に関して、(1)診療報酬は「モノ」だけでなく、「ヒト」の評価も必要であること、(2)薬価改定財源を診療報酬本体の改定財源に充当すべきであること、(3)医療等に係る消費税問題を解決すべきであること─を求めた。
(1)では、(1)製造業の1人平均月間現金給与総額は2009年から伸びているにもかかわらず、300万人以上が従事している医療に関しては減少していること(2)医療機関の費用に占める人件費の割合が医薬品や医療材料代に圧迫され、2012年度には2000年度比で約1割減少したこと(図)(3)医療・介護の財源を確保し、医療機関を経営的に安定化させることができれば、医療や介護分野は特に地方において雇用誘発係数が高いため、地方から経済を活性化させることができること(4)最近は調剤医療費、調剤技術料が伸びていること─等を詳細に説明。
更に、医療用消耗品の増加、医療機器の保守管理費用の増大が医療機関経営に大きな負担をもたらしていることを、具体例を挙げて示し、その解決を求めるとともに、後発医薬品に関しては多くの後発品メーカーが販売しており、その使用を促進するためには、「処方時の医師の不安・疑問の解消」「後発医薬品の情報提供体制等の環境整備」が必要だとした。
横倉会長は、また、社会保障費が今後も増加することが見込まれる中で、国民皆保険を堅持していくため、各学会と共に、「生涯保健事業の体系化による健康寿命の延伸」「糖尿病のハイリスク群への早期介入による透析導入患者の減少」等を提言していることを紹介。国の財政が厳しい中で、医療側は診療報酬の引き上げだけを求めているのではないことに理解を求めた。
(2)については、健康保険法において薬剤は診察等と不可分一体であり、その財源を切り分けることは不適当であると改めて強調。
(3)については、医療機関にとって深刻な問題になっているとして、早期の解決とともに、消費税10%引き上げまでの間、設備投資による消費税負担を軽減する税制措置を求めた。
その他、横倉会長は4種混合ワクチンが不足し、混乱が起きていることを問題視。安全性の確保が大前提ではあるが、早期に解決してもらいたいとした。
これらの要望に対して、塩崎厚労大臣は一定の理解を示した上で、診療報酬改定については、「年末に向けて日医の意見も聞きながら、しっかりやっていきたい」と回答。
また、消費税の問題については、「全ての医療機関が納得のいく解決策をまとめることは難しいが、医療機関が継続して医療を提供していけるようにすることが必要だ」として、早期の解決に向け、日医の協力を求めた。
図 医療機関の費用構造の推移
医療機関の費用に占める人件費の割合は2000年度は50.2%だったが、2012年度には46.4%にまで低下し、約1割減少した。