横倉義武会長は11月19日、財務省で麻生太郎副総理兼財務大臣と会談し、(1)診療報酬の改定、(2)薬価改定財源の診療報酬本体への充当、(3)医療等に係る消費税問題─等について意見交換を行った。
会談の中で、横倉会長は、まず(1)について、11月4日に公表された「第20回医療経済実態調査速報値」の結果を基に医療機関の窮状を訴えるとともに、(1)厚生労働省が示した高齢化等に伴う増加額(6700億円)を財政制度等審議会財政制度分科会(財政審)が主張するように、5000億円まで削減することになれば、平成28年度に診療報酬改定がある医療のみが削減されることになること(2)過去3年間は、診療報酬・介護報酬改定で厳しい抑制が図られてきたため、年間5000億円程度の伸びに収まっていること(3)3年間の社会保障関係費の伸び(1・5兆円程度)の基調を継続していくことは、決定過程の議論を重視し、あくまで「目安」であること(4)医療・介護の財源を確保し、医療機関を経営的に安定化させることができれば、医療や介護分野は特に地方において雇用誘発係数が高いため、地方から経済を活性化させることができること─などを、資料を基に詳細に説明。「今回の診療報酬の改定でプラス改定を行わなければ、医療崩壊の再来を招くことになる」として、プラス改定に対する理解を求めた。
横倉会長は、また、後発医薬品の使用促進の問題にも触れ、使用促進のためには、「処方時の医師の不安・疑問の解消」「同様の後発医薬品を多くの企業が販売していること」等、解決すべき課題は依然として残っていると指摘。加えて、医療機関の新たな負担増加要因として、「保険で償還されない医療用消耗品の増加」「医療機器の保守管理費用の増大」などを挙げ、これらが技術料から包括して償還されているため、人件費が圧迫されているとした。
更に、横倉会長は、持続可能な社会保障の実現を目指して、「生涯保健事業の体系化による健康寿命の延伸」等を提言していることを紹介。日医は、診療報酬の引き上げだけを求めているのではなく、医療費の適正化にも取り組んでいることを強調した。
(2)に関しては、前回の改定では薬価の引き下げ財源が消費税対応に活用されてしまったのではないかと指摘。健康保険法において薬剤は診察等と不可分一体であり、薬価の引き下げ財源は診療報酬本体の改定財源として使用すべきであるとした。
また、(3)については、特に設備投資による消費税負担は医療機関にとって深刻な問題になっているとして、消費税率が10%に引き上げられるまでの間は、仕入税額控除を受けることができる方式を導入して欲しいと要望した。
これらの要望に対して、麻生副総理兼財務大臣は、診療報酬の改定率の問題について、「軽減税率の問題と共に今年の予算編成の大きな問題になる」とした上で、「財源を捻出するということになると、自民党内にもいろいろな意見を言う方もおり、年末までにじっくり考えたい」と応じた。