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平成28年(2016年)1月5日(火) / プレスリリース / 日医ニュース

診療報酬本体のプラス改定に一定の評価

 政府が平成28年度の診療報酬改定の改定率を診療報酬本体で0・49%増とすることを決定したことを受けて、横倉義武会長は昨年12月21日、中川俊男・今村聡・松原謙二各副会長と共に緊急記者会見に臨み、財源が厳しい中で最終的に診療報酬本体がプラスの改定になったことに対して、一定の評価をしたいとの考えを示した。

 記者会見で、横倉会長は、まず、社会保障の充実に向けてご尽力頂いた安倍晋三内閣総理大臣始め、麻生太郎副総理兼財務大臣、菅義偉内閣官房長官、塩崎恭久厚生労働大臣等の各閣僚、自民党の高村正彦副総裁、谷垣禎一幹事長、二階俊博総務会長、稲田朋美政調会長、田村憲久政調会長代理、その他関係議員の方々に対して感謝の意を表明。また、「国民医療推進協議会」「国民医療を守る議員の会」「医療政策研究会」「志帥会」等の各関係者、更には、都道府県において医療における適切な財源確保に向けた決議を頂いたことに対しても、「厚く御礼を申し上げたい」とした。
 今回の改定交渉については、(1)「社会保障・税一体改革」では昨年10月から消費税率が10%に引き上げられる予定であったが、景気への影響を配慮した結果、10%への引き上げが2017年4月へと延期となったこと(2)厚労省が概算要求要望として6700億円を要望する一方で、昨年11月24日に財政制度等審議会が提出した「平成28年度予算の編成等に関する建議」においては、「確実に高齢化による増加分の範囲内(5000億円弱)にしていく」「診療報酬本体について、一定程度のマイナス改定が必要」という提言がなされたこと(3)高齢化等に伴う増加額が社会保障全体で5000億円に抑えられてしまうと、医療以外の介護、年金、その他の約3800億円は、改定や制度改正がないため、支出額が削減できないことから、平成28年度に診療報酬改定がある医療のみが大きく削減される恐れがあったこと─などを挙げ、大変厳しい状況にあったと説明。
 これらの厳しい状況を打破すべく、日医では、「医療経済実態調査の結果を基に、病院・診療所は厳しい経営状況に置かれており、マイナス改定を行えば医療崩壊の再来を招くこと」「医療機関には全国で300万人以上が従事しており、特に医療従事者の比率が高い地方においては経済の活性化に多大な貢献をすることから、医療分野への財源投入は、わが国の経済全体への波及効果も大きいこと」などを、記者会見等を通じて、繰り返し主張してきたとし、「このような趣旨を国民にご理解頂き、最終的に、診療報酬の本体でプラス0・49%となったことに対しては一定の評価をしたい」と述べた。
 その一方で、今回の改定で薬価改定財源の半分以上が診療報酬本体に充当されなかったことについては「極めて残念である」と主張。「健康保険法において薬剤は診察等と不可分一体であり、その財源を切り分けることは不適当である」と改めて指摘するとともに、「薬価改定財源は診療報酬本体財源に充当すべきであることをこれからも強く訴えていく」とした。
 また、これから開始される中医協での具体的な配分の議論に向けては、(1)基本診療料を始めとして、人件費、技術料が包括されている診療報酬項目に重点配分すること、(2)地域包括ケアシステムを推進していくため、医療機関がどのような機能を選択しても地域や患者のニーズに応えている限り、経営が安定して成り立つよう、体制構築に取り組む全ての医療機関を公平に支える、それぞれの機能のコストを適切に反映した診療報酬体系の実現、(3)患者にとって質の高い医療を提供するため、地域包括ケアの中心となる「かかりつけ医」をきちんと評価できるよう、前回改定で新設された「地域包括診療料」「地域包括診療加算」の要件の見直し─等を強く求めていくとした。
 その上で、同会長は、「平成26年度診療報酬改定は、国民との約束である社会保障・税一体改革に基づき、その第一歩を踏み出したものであったが、今回の平成28年度改定は、改革を継続する次の一歩として、次回平成30年度の医療と介護の同時改定に向けて、襷(たすき)をつないでいくものとしなければならない」と強調。「限られた財源の中でも、超高齢社会に対応する上で最重要課題である地域包括ケアの推進に向けて、地域における医療資源を有効活用しながら、必要な財源配分をすることが一層重要になっており、それらを実現することで、ローカル・アベノミクスも実現できるのではないか」との考えを示した。
 更に、同会長は、「急速に少子高齢社会が進展し、人口が減少していく中で国民皆保険を堅持していくためにも、財政主導ではなく、医療側から過不足のない医療提供ができるよう提言し、自然増を減らしていくことが我々医療者の役割でもある」と指摘。
 具体的には、「健康寿命の延伸」「ロコモティブシンドローム対策」や、「糖尿病、COPD等の生活習慣病対策」などを引き続き提言していく意向を示し、更なる理解と協力を求めた。

平成28年度の診療報酬改定
1.診療報酬本体 +0.49%
   各科改定率 医科 +0.56%
         歯科 +0.61%
         調剤 +0.17%
2.薬価等
  (1)薬価 ▲1.22%
   上記の他、・市場拡大再算定による薬価の見直しにより▲0.19%
        ・年間販売額が極めて大きい品目に対応する市場拡大再算定の特例の実施により▲0.28%
  (2)材料価格 ▲0.11%
 なお、上記の他、新規収載された後発医薬品の価格の引き下げ、長期収載品の特例的引き下げの置き換え率の基準の見直し、いわゆる大型門前薬局等に対する評価の適正化、入院医療において食事として提供される経腸栄養用製品に係る入院時食事療養費等の適正化、医薬品の適正使用等の観点等からの1処方当たりの湿布薬の枚数制限、費用対効果の低下した歯科材料の適正化の措置を講ずる。

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