横倉義武会長と石井正三常任理事は7月30日、台北市の外交部を会場として行われた調印式に出席するため訪台し、台湾医師会及び台湾路竹会(台湾の海外災害医療支援NGO)との間で、「災害時の医療・救護支援における医師の派遣と支援体制の相互承認に関する日本医師会と各国医師会との間の協定」を、それぞれ締結した。
調印式の冒頭、あいさつした横倉会長は、東日本大震災発災に際して、台湾から多大なる義援金が寄せられたことに改めて感謝の意を表すとともに、6月27日に発生した台湾新北市の水上テーマパークにおける粉塵(ふんじん)爆発事故による多くの熱傷被害者の医療支援のため、全国の会員に義援金を呼び掛けていることを説明した。
台湾衛生福利部、外交部、亜東関係協会(台湾の対日窓口機関)、立法院議員等、多数の参加者の下に行われた調印式では、横倉会長、蘇清泉台湾医師会長及び劉啓群台湾路竹会長が協定書にそれぞれ署名。その模様は、NHKを始め日本と台湾の複数の主要メディアにより報道された。
協定書は、iJMAT(international Japan Medical Association Team)構想に基づいた民間ベースでの災害時の医療・救護活動の国際協力を促進するためのもので、災害事象が生じた際には、両国の医師がその身分を保証された上で、より円滑に被災国の医師と共にその国の法令及び医師の指導の下で医療活動に従事し、被災者の救済に尽力することを可能とする内容となっている。
わが国では、医師法上、外国の医師資格を有する者であっても、国内において医療行為を行うには医師国家試験に合格し医師免許を受けなければならない(医師法第2条、第7条)ことになっている。東日本大震災において、厚生労働省は、外国の医師資格を有する者の医療活動について、「想定されていない緊急事態においては被災者に対する必要最小限の医療行為について、刑法上の正当業務行為として違法性が阻却され得る」との考えを示していたが、台湾を含む30カ国以上から申し入れのあった医療支援のうち、実際に受け入れができたのは、イスラエル、ヨルダン、タイ、フィリピンの4カ国にとどまっていた。
調印式終了後、石井常任理事は記者団に対し、「今回の協定書の締結により、災害事象において両国間で医療協力支援ができるようになる」と協定締結の意義を強調するとともに、「災害支援においては受け入れ側に負担を掛けることもある"プッシュ型"ではなく、いわゆる"デマンド型"で、現地の関係者等の要請を受けてから、追加支援を検討することになる」との見解を示した。
なお、日医では、協定書の締結に先駆け、今回の台湾粉塵爆発事故による多数の熱傷患者の治療に係る医療支援を行った(別記事参照)。
この件では、菅波茂AMDA(The Association of Medical Doctors of Asia:認定特定非営利活動法人アムダ)代表と氏家良人日本集中治療医学会理事長が、7月2日に先遣隊として訪台し、「重症度の高い患者が多いこと」「日本から寄贈された人工皮膚、医療用品等を用いた治療に際し日本の専門の医師の協力が必要であること」などの現状を把握。その後、日医では、台湾医師会及び台湾路竹会からの支援要請を受け、日本集中治療医学会・日本救急医学会・日本熱傷学会の3学会推薦による熱傷治療専門家6名からなる「日本医師会三学会合同熱傷診療支援医師団」を台湾に派遣し(7月12~15日)、支援活動を展開した。
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