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平成28年(2016年)12月20日(火) / 日医ニュース / 解説コーナー

医師主導による医療機器開発のためのニーズ創出・事業化支援セミナーについて

医師主導による医療機器開発のためのニーズ創出・事業化支援セミナーについて

医師主導による医療機器開発のためのニーズ創出・事業化支援セミナーについて

 今年から日本医師会「医師主導による医療機器開発のためのニーズ創出・事業化支援セミナー」が全国各地で開催されている。
 そこで、これまでのセミナーの内容や今後の見通しについて、羽鳥裕常任理事に説明してもらった。

Qセミナーの概要について教えて下さい。

A日医では、昨年6月に、医療現場の臨床医のニーズに基づくアイデアの発掘を行い、医療機器の開発を支援していくための「医師主導による医療機器の開発・事業化支援業務」を開始しました。
 これまでに全国から117件のアイデアが寄せられ、製造販売企業の紹介や試作品の資金調達の支援など、具体的な支援を行っているところです。
 しかし、日医の支援業務をご存じない先生方も多いことや、地域の先生方に医療機器開発への興味を持って頂くきっかけづくりの場が必要と考え、現在実施しているホームページ(http://jmamdc.med.or.jp/)へのアイデアの直接登録に対する業務に加えて、医療機器開発に携わる医師のみならず、工学系の研究者や弁理士、自治体等の皆さんと接して頂き、全国の先生方に、より積極的にニーズやアイデア登録を行って頂くことを目的として、地域セミナーを開催することにしました。
 このセミナーは、ものづくり企業の医療機器開発を促進している、経済産業省委託事業「地域中核企業創出・支援事業(ネットワーク型)」として実施し、関東経済産業局と連携を図りながら進めています。
 セミナーでは、実際に医療機器を開発されてきた先生方による事例の紹介と、工学研究の先生等を交えたパネルディスカッションを行っています。
 また、セミナーの前後や休憩時間等では、先生方からの個別相談も受けています。

Qこれまでどのような開発事例が紹介されましたか?

A第2回の川崎市セミナーでは、市立病院の先生から、乳がん診療におけるニーズや機器開発の経験を紹介頂きました。
 また、民間病院の院長からは、大学勤務医時代から開発を進めてきた、点滴スタンド不要の輸液装置の紹介がありました。この機器は、今後の高齢社会における在宅医療の推進等、その使用範囲の拡大が見込まれるすぐれたアイデアだと思います。セミナーをきっかけに、テレビでも放映され、開発が進展したそうです。
 第3回の仙台市セミナーでは、3名の先生による講演が印象に残っています。
 東北大学で臨床試験を推進されている先生からは、臨床現場の観察と体験を通じてニーズを幅広く掘り起こし、医療機器の事業化につなげるバイオデザインの取り組みを紹介頂きました。
 山形県の病院の先生からは、豊富な医療機器開発経験に裏打ちされた、技術・医療・営業3者の連携の重要性や、医療技術や患者背景を織り込んだ海外展開に係る留意点について示唆を頂きました。
 福島県いわき市で開業している先生からは、心房細動の心機能を解析するための新たな手法の開発事例を紹介頂き、診療所による臨床データ収集の意義についても教示頂きました。
 また、11月26日に開催された第4回の神戸市セミナーでは、神戸市のこれまでの医療機器開発支援事業の紹介があった他、神戸大学や国立がん研究センターからは、がん治療システムの開発事例や国の審査への対応に関する発表がありました。
 更に、大阪で眼科診療所を開業している先生からは、豊富な医療機器の開発や、ベンチャー起業化の経験を踏まえた提言を頂きました。
 その他、各セミナーでは、本支援事業の窓口を務める日本医療機器開発機構から開発の要点を指摘してもらいました。
 これまでのセミナーで見えてきたことは、大学や病院の勤務医のみならず、診療所の先生方の医療機器開発意欲の高さでした。

Q今後の開催予定を教えて下さい。

A今年度は、平成29年1月28日(土)に埼玉県さいたま市で、2月18日(土)に福岡県福岡市で、これまでと同様、地域で医療機器開発に携わる先生方の事例紹介を中心に講演頂くスタイルで開催する予定です。わずか半日で、多様な開発事例やノウハウを習得でき、個別相談や、企業や行政の適任者と関係を構築することも可能なので、最後まで出席された先生にも満足頂いているところです。
 来年度は、より多くの医師会の先生方に日医の支援業務を知って頂き、アイデア発掘につなげていきたいと考えており、セミナーの開催形態も工夫したいと思います。
 具体的には、今年度のセミナーで技術や素材などを展示されるものづくり企業は、これから開催するものを含め100社を超えており、これらの企業の技術や素材などを積極的に先生方に紹介していきたいと考えています。
 例えば、全国から多くの会員の先生方が集まる全国大会や会議との連携により、休憩時間などに、支援業務を紹介したり、ものづくり企業の展示を見て頂く展示中心のセミナーや、専門分野に特化したセミナー、具体的には地域医師会で開催されている生涯教育セミナーとの連携により、その分野の最先端のシーズを紹介できるようなセミナーの開催も企画しています。
 まずは、先生方に興味を持って頂くきっかけづくりとしてのセミナーを開催できるよう、関係者とも協議しながら進めていきますので、今後のセミナーへの参加をお願いいたします。

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今回のインタビューのポイント
  • 医療機器開発に携わる医師のみならず、工学系の研究者や弁理士、自治体等の皆さんと接するとともに、全国の先生方に、より積極的にニーズやアイデア登録を行うことを目的として、地域セミナーを開催している。
  • これまでのセミナーで見えてきたことは、大学や病院の勤務医のみならず、診療所の先生方の医療機器開発意欲の高さである。
  • 次年度には、全国から多くの会員の先生方が集まる全国大会や会議との連携により、休憩時間などに、支援業務を紹介したり、ものづくり企業の展示を見て頂くなど、展示中心のセミナーや、専門分野に特化したセミナーを企画しているので、ぜひ参加頂きたい。

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