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平成29年(2017年)7月20日(木) / 日医ニュース

21の質問・要望に執行部から回答 代表質問

代表質問1 地域医療構想における急性期指標について

 藤原秀俊代議員(北海道ブロック)からの地域医療構想における急性期指標についての質問には、中川副会長が回答した。
 同副会長は急性期指標について、①急性期病院が満たしそうな項目が恣意(しい)的に選ばれている②急性期の項目を点数化して積み上げ病床数で割っているが、分母となる病床数に療養病床も含めている③民間病院に多いケアミックス病院では、実態より低い急性期スコアが計算され、急性期機能が劣っているように見える④地域医療構想では病院の機能分化を病棟単位で進めているが、急性期指標は病院単位である―などの問題点があると指摘。「この指標が独り歩きすれば、地域医療を混乱に陥れるのは明白である」と述べ、今後の議論の俎上(そじょう)に載せることを阻止しているとした。
 また、一研究に過ぎない急性期指標が厚生労働省の検討会で唐突に公表され、都道府県行政だけに提供されたことは、「大きな問題である」と述べるとともに、「行政と都道府県医師会は地域医療を守る車の両輪であり、地域医療構想の達成には、行政と医師会との協力関係が極めて重要である」と改めて強調し、今後も地域医療を守るために尽力していきたいとした。

代表質問2 医師需給、偏在に関して、日医主導による意見集約を

 医師需給、偏在に関して、日医主導による意見集約を求める金井忠男代議員(関東甲信越ブロック)からの質問には、中川副会長が、「近い将来、医師の絶対数は充足する見込みであり、喫緊の課題は医師の偏在解消である」との考えを改めて示すとともに、2015年12月に全国医学部長病院長会議と合同で緊急提言を発表したことに言及。
 緊急提言では、①地域医療支援センターの機能強化②地域枠あるいは地元出身枠の拡充③医師需給の「見える化」―を掲げているが、「今後は、四病院団体協議会、全国医学部長病院長会議とも認識を共有し、内容を精査して更に進化させたい」とした。
 また、地域包括ケアシステムの構築に向けて、かかりつけ医の確保が課題となっていることに触れ、「医師不足、偏在の問題については、病院勤務医の負担軽減を念頭に置きつつ、かかりつけ医の負担軽減についても検討していきたい」と述べた。

代表質問3 若手医師への「医の倫理」教育に対する日医の取り組みについて

 金子洋一代議員(九州ブロック)からの「医の倫理」に関する質問には、横倉会長が回答を行った。
 医学生や研修中の若手医師らによる事件が立て続けに起きていることについては、「誠に残念でならない。一連の事件は『医師の倫理』以前の問題であるが、医師という職を目指す者には、より高い倫理観が求められることは論を俟(ま)たない」と述べ、医学部入学後の倫理教育を徹底する必要性を強調した。
 その上で、日医では、代議員会において「医の倫理綱領」「日本医師会綱領」を採択したこと、『医師の職業倫理指針』を作成し、日医全会員、全国の医科大学・医学部及び卒業生(毎年)に配布していること等を説明。「倫理と信頼という枠組みの中で構築される医師・患者関係の重要性を認識し、医師としての自覚を涵養(かんよう)していくことが、現在の医学教育において最も重要なことである」との考えを示すとともに、「引き続き、医の倫理教育の更なる徹底を求めていきたい」と述べた。

代表質問4 老人保健施設の機能活用並びに医師会との連携について

 平川博之代議員(東京ブロック)からの介護老人保健施設の機能活用並びに医師会との連携についての質問に対して、松原謙二副会長は、改正介護保険法において、介護老人保健施設の役割が明確に示されたことは非常に大きな意味があるとの認識を示した。
 更に、日医かかりつけ医機能研修制度において、かかりつけ医機能の更なる充実に向け、かかりつけ医が介護老人保健施設を含めた、さまざまな地域資源の役割や機能を改めて理解することは極めて重要な視点であることから、代議員の指摘を踏まえ、今後の研修内容を検討していくとした他、特にリハビリテーションについては、介護老人保健施設とかかりつけ医が一層連携を深め、高齢者が地域で生活していくために必要なリハビリテーションを提供していくことは不可欠であると指摘した。
 その上で、「都道府県及び市区町村において地域包括ケアシステムの構築を進める中では、こうした連携体制づくりも含め、行政と医師会とで協議を進めて欲しい」と述べた。

代表質問5 若手医師に選択の自由を!

 若手医師に選択の自由を確保した上での医師の偏在対策を求める松井道宣代議員(近畿ブロック)からの質問には、今村副会長が回答。「医師の自発的な意思を尊重し、強制的な仕組みを排除しながら、医師偏在の解消に向けて努力していくという思いは我々も同じ」とした上で、国の医師需給分科会が4月に再開されたことに言及し、地域枠で入った学生が今後地域医療に従事していくことになることから、地域医療支援センターの医師派遣調整機能の強化や医学部の地元枠の創設など、合意が得られやすい対策は早急に決定するよう求めていくとした。
 また、臨床研修を出身大学のある県内で行うと、その後の定着率も高いというデータがあることから、その点についても合意が得られるよう努めていく考えを示した。
 更に、今後については、引き続き、我々医師自らが偏在解消策を打たなければ、国による強制的な手段と大胆な規制改革が行われかねないという強い危機感をもって臨んでいくとした。

代表質問6 日本医師会の組織強化策について

 馬瀬大助代議員(中部ブロック)からの日医の組織強化策(①勤務医の就労環境問題②勤務医、女性医師を代表する理事の選出方法③女性医師支援策の強化)についての質問には、横倉会長が回答した。
 ①では、医師の働き方については、医師自らがその議論をリードし、質の高い医療提供体制の維持と医師自身の健康確保を両立するような制度の確立を目指していくことが重要であることから、国への提言を目的に、会内に「医師の働き方検討委員会」を新たに設置したことを報告し、医師の就労環境改善に向け、全力で取り組む姿勢を示した。
 ②では、代議員の提言を踏まえ、各ブロックの代表の方々に検討を強くお願いしたいとした。
 ③では、女性医師支援センター事業や女性医師バンクの活動について説明した他、今後は、SNS(Social Networking Service)を利用した情報発信や、地方自治体並びに地域の医師会との共同により女性医師支援シンポジウムを企画するなど、新たな取り組みも実施していくとした。

代表質問7 「日本の医療が健全に発展するための提言」について

 加藤智栄代議員(中国四国ブロック)からの①医薬品や医療機器の国内外価格格差の解消②院内薬局と院外薬局との価格差解消③オーソライズド・ジェネリック医薬品の活用④日本医療研究開発機構(AMED)の予算増額等―について日医の見解を問う質問には、松原副会長が回答。
 ①については、日本で開発された革新的な医薬品や医療機器はグローバルに展開し、国内の工場でも製造することで内外価格格差解消につながるとの見解を示した。
 ②では、院内薬局と院外薬局との価格差は、患者の受けるメリットに見合うものでなければならないと強調。調剤報酬のあり方について引き続き中医協で議論していくとした。
 ③について、同副会長は、「処方する医薬品の選択は、先発品、後発品(オーソライズド・ジェネリックを含む)の中から医師が総合的に考えて行うものである」と述べた。また、薬局が医師の処方意図を無視することのないよう関係団体に呼び掛けるとした。
 ④については、国は、開発に必要な資金を薬価や医療機器の価格で保証するのではなく、税制や開発支援の政策で工夫するべきと主張していることなどを説明した。

代表質問8 経済財政諮問会議が提言する「かかりつけ医」について

 佐藤家隆代議員(東北ブロック)からの内閣府の経済財政諮問会議が提言する「かかりつけ医」及び、いわゆる定額負担導入に対する日医の対応などを問う質問には、今村副会長が回答。
 同副会長はまず、経済財政諮問会議における「かかりつけ医の定義を明確にすべき」という提言については、あくまで民間議員の自由意見であり、その後も議論等が行われていないことなどを説明。本件を含め、こうした国の議論に対しては、適宜政府や与党に働き掛けを行うとともに、記者会見等で日医の主張を周知しているとした。
 また、「医療機関の外来機能の分化・連携については、従来どおりフリーアクセスを守った上で、引き続き検討を進めていくべき」と述べた。
 その上で、同副会長は、「かかりつけ医」の用語の使用について、日医の提唱する定義を国民にも広く周知させる必要性を強調。制度化するのではなく、国民自らが「かかりつけ医」を持てるよう、かかりつけ医機能を強化することにより、更なる普及と定着を図っていく方針を示した。

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