横倉義武会長は昨年12月20日、厳しい国家財政の中、平成30年度の診療報酬改定が診療報酬本体でプラス0・55%(医科プラス0・63%)となったことを受けて、記者会見を行った。
冒頭、同会長は、社会保障の充実に向けて尽力頂いた安倍内閣総理大臣をはじめ、関係閣僚、自民党の関係議員等に対して感謝の言葉を述べるとともに、「国民医療を守るための総決起大会」等による、医療における適切な財源確保に向けた決議にも謝意を示した。
その上で、同会長は今回の改定について、厚生労働省が概算要求要望で高齢化に伴う自然増として6300億円を要求したのに対して、財務省側は、一度価格が設定されると、その設定水準以下に下げることが難しい状態となる「下方硬直性」も踏まえ、「2%半ば以上のマイナス改定が必要」と主張するなど、厳しい改定を求めていたと説明。
そのような中で、日医は、①医療経済実態調査やTKC医業経営指標に基づく経営動態分析の結果により医療機関が大変厳しい経営状況に置かれている②他の産業が賃上げを行う中で全就業者の約1割を占める医療従事者に適切な手当てを行う③医療の高度化は政府の成長戦略として別財源を充てるべき―ことを踏まえ、「社会保障の充実は国民不安を解消し、経済の好循環につながる」と繰り返し主張してきた結果、最終的には診療報酬本体で前回改定を上回るプラス0・55%(医科プラス0・63%)とすることができたとして、一定の評価をするとともに、前回改定より引き続き日医が主張してきた「モノからヒトへ」の評価でもあると考えているとした。
また、同会長は、今後の中医協での議論にも言及。「平成30年度は各都道府県で策定された地域医療構想が実行に移されるが、それに寄り添う診療報酬改定でなくてはならない。地域を支える医療機関の経営は基本診療料によって成り立っており、基本診療料をしっかりと評価すべき」と主張した。
平成26年度に904億円で創設されて以降、毎年同額で推移してきた地域医療介護総合確保基金の医療分が、今回初めて積み増しされることについては、「同基金は各地域の実情に応じ、地域に根ざした看護職の養成強化を含めた医療従事者の確保など、地域包括ケアシステムを推進するためのものである」として、地域の実情に応じた配分と柔軟な運用を求めた。
更に、医科・歯科・調剤の配分が1:1・1:0・3とされたことに関しては、「学会等から中医協に医科の新たな技術が提案され、それを活用する一方、調剤には新たな技術は少ないとされている。門前・チェーン薬局の調剤報酬の適正化を含めて、調剤報酬の中で病院薬剤師の業務を評価することも今後検討すべき」と述べるとともに、「薬局の形態はさまざまだが、社会保障の財源を株主に配当するのではなく、社会保障を充実する再生産費用として還元すべきと考えている」との見解を示した。
診療報酬改定について 1.診療報酬改定本体 +0.55% 各科改定率 医科 +0.63% 歯科 +0.69% 調剤 +0.19% 2.薬価等 ①薬価 ▲1.36% ②材料価格 ▲0.09% なお、上記の他、薬価制度の抜本改革(国費▲300億円程度)、いわゆる大型門前薬局に対する評価の適正化の措置(国費▲60億円程度)を講ずる。 |
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