平成30年(2018年)2月5日(月) / 日医ニュース / 解説コーナー
厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」の「第2次中間取りまとめ」を受けて
今村副会長に聞く
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厚労省「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」の「第2次中間取りまとめ」がまとまり、その内容を基に厚労省では医療法等の改正法案を通常国会に提出すると言われている。そこで今号では、取りまとめの内容について、今村聡副会長に説明してもらった |
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Q日医として、どのような姿勢、体制で議論に臨みましたか
A日医では、まず、親会議に当たる「医療従事者の需給に関する検討会」に松原謙二副会長と釜萢敏常任理事が、その下の「医師需給分科会」に私と羽鳥裕常任理事が参画し、万全の体制を取って議論に臨みました。
議論に当たっては、「医師の偏在対策は医師のプロフェッショナル・オートノミーの下で行われなければならない」ということを大前提としました。
後でも述べますが、例えば開業を考えている勤務医に、その地域の医療ニーズや外来医療機能等の情報を可視化することで、適切に判断してもらう仕組みというのも、その観点から出てきたことです。
また、日医ではかねてより「地域で医師を育てること」を掲げてきましたが、この中間取りまとめには、医学部の地元出身者枠の創設やキャリア形成支援といった形でその考えが盛り込まれています。
Q今回、医師偏在対策が議論された背景は何ですか
A医師偏在は地域間・診療科間のそれぞれにおいて、長年にわたり課題として認識されながら、現時点においても実効性のある対策が図られていません。
また、新たな専門医の仕組みについては、平成30年度からスタートすることになっていますが、医師のキャリアや地域医療に対する配慮は、それ以降も継続的になされるよう、安定した仕組みを整えておく必要がありました。
更に、現在議論が進められている医師の働き方改革が、医療現場で混乱なく実行されていくためにも、早急に実効性ある医師偏在対策を講じる必要もありました。
加えて、実際に医師偏在対策を進めていくためには、都道府県が医師偏在に関する客観的で有効なデータに基づき、他の医療政策と整合的かつ主体的に対策を講じることができる仕組みをつくっておくことも求められていました。
これらの課題について解決策を探るため、「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」では、昨年9月から、早急に対応する必要のある実効的な医師偏在対策に関して、法改正が必要な事項も含め、精力的に議論が行われてきました。
Q具体的な対策として、どのようなことが明記されているのですか
A都道府県における医師確保対策の実施体制の強化としては、都道府県内の二次医療圏・診療科別医師数、医療施設・医師配置状況、人口や医療ニーズの変化等の分析を踏まえたあるべき医師確保の方針、「医師確保計画」(内容は3年ごとに見直し)を医療計画に記載することとされました。
地域医療対策協議会に関しては、実効性を確保するため、その役割を明確化するとともに、協議会以外の医師確保に関する各種会議体を原則統合するとしている他、派遣先が公立病院・公的病院などに偏らないよう、地域医療対策協議会において、医師派遣の方針を整理・明確化するとされました。
効果的な医師派遣等の実施に向けた見直しとしては、全ての都道府県でキャリア形成プログラムを策定することを徹底するなど、地域医療支援センターの機能強化策が盛り込まれています。
医師養成過程を通じた地域における医師確保としては、医師が少ない都道府県の知事が、管内の大学を含めた地域医療対策協議会の意見を聞いた上で、管内の大学に対して、入学枠に地元出身者枠の設定・増員を要請することができる制度を法律上設けることが提案されています。
また、新たに開業しようとしている医療関係者等が自主的な経営判断を行うに当たっての情報として活用できるように、地域ごとに外来医療機能の偏在・不足等の客観的な情報を可視化することも求めています。
更に、医師少数区域等に所在し、都道府県知事が指定する医療機関に一定期間以上勤務した医師を、当該医師の申請に基づいて、厚労大臣が認定する制度(認定医師制度)を創設することが提案されました。
この制度に関しては、医師がメリットを感じてもらえるよう、「認定医師であることを広告可能事項に加える」「医師派遣を支える医療機関等に対して経済的インセンティブをつける」「認定医師であることを、一定の医療機関の管理者に求められる基準の一つとする」等も明記されていますが、その詳細については、別途検討されることになっています。
Q取りまとめを受けての感想と今後について教えて下さい
A今回の取りまとめに当たって、最も議論となったのは、「認定医師に対する一定の医療機関の管理者としての評価」に関して、その対象をどこまで広げるかでした。
「実効性を高めるためには、診療所を含めた他の医療機関も全て対象としなければ意味がない」という意見も出されましたが、「対象範囲を大幅に拡大すれば、医師が少ない地域での診療を実質的に義務化することになる」と強く主張し、最終的には地域医療支援病院のうち、医師派遣・環境整備機能を有する病院を対象とすることになりました。
また、無床診療所の開設に対して新たな制度上の枠組みを導入する案も示され、保険医登録の規制を設けるといった意見も出されました。しかし、この問題については、「憲法上の営業の自由との関係の整理や、駆け込み開設の懸念もある他、法制的・施策的な課題が全てクリアされなければならず、そのような枠組みは設けるべきではない」と主張し、その結果、新たな規制を導入するという結論には至りませんでした。
いずれにしましても、今回の取りまとめは数値化やエビデンスに基づいた一歩踏み込んだものとなっており、認定医師制度の件も含め、プロフェッショナル・オートノミーの下で、まずはこの内容で進め、効果を検証した上で更なる対策を検討することが重要と考えています。
今後、厚労省は、今回の中間取りまとめの内容を踏まえて、医師法、医療法の改正案を1月22日に開会した通常国会に提出する意向を示しています。
その審議に当たって、日医では、日医連推薦の羽生田俊・自見はなこ両参議院議員を始め、多くの国会議員の皆さんを通じて、日医の考えを盛り込んでもらえるよう努めていきますので、会員の先生方には引き続きご支援・ご協力の程、お願いいたします。
今回のインタビューのポイント |
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