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平成30年(2018年)7月20日(金) / 日医ニュース

「医師偏在」「予防接種」等に関する質問に日医執行部から回答 代表質問

代表質問1 高齢化社会における遠隔医療の健全な運用とその展望は?

 小池哲雄代議員(関東甲信越ブロック)の「高齢化社会における遠隔医療の健全な運用とその展望」に関する質問には、今村聡副会長が、医療の大原則は患者と医師の信頼関係に基づく対面診療であるとした上で、①オンライン診療が平成30年度診療報酬改定での大きな課題の一つとなった②3月に、自身が委員として参加した厚生労働省「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」が「オンライン診療の適切な実施に関する指針」をまとめた③同指針には、日医会内の「情報通信機器を用いた診療に関する検討委員会」の答申に記載された内容が盛り込まれた④中医協で医学管理を診療報酬で評価する場合の《基本的な考え方》を整理し、それを具体化した厳しい要件を設定するとともに、対面診療による医学管理の継続にも有用と考えられるものに対象が限定された―こと等を説明。
 規制改革推進会議の昨今の発言に対しては、「日医は、オンライン診療はあくまでも対面診療の補完であるとの大原則を崩すことなく対応してきており、今後もその方針を変えるつもりはない」と明言した。

 

代表質問2 「医行為と特定行為に係る看護師の研修制度における向後(こうご)の問題について」特に超音波検査

 相原忠彦代議員(中国四国ブロック)からの「医行為と特定行為に係る看護師の研修制度における向後の問題」として、①超音波検査が看護師の特定行為に含まれそうになった場合の対応②柔道整復師が行う超音波検査並びに患者への説明③特定行為への影響を考慮した厚労省に対する新たなアクション―の質問には、松原謙二副会長が回答。
 ①及び③については、看護師の特定行為の検討の中で、当初は「超音波検査の実施」も対象に含まれていたが、議論の結果、「主として臨床検査技師が行っており、チーム医療推進の観点からも看護師の特定行為に含めることは適当でない」との理由で外されたことから、今後、超音波検査を特定行為に追加するという議論にはならないとの考えを示した。
 ②については、検査結果の説明は医師法違反に当たり、また読影の誤りから健康被害につながった事例の報告が見られ、医療安全の観点からも日医として注視しているとした上で、不適切事例は都道府県行政へ情報提供するよう求めた。

 

代表質問3 HPVワクチン接種の積極的勧奨の早期再開にむけて

 髙橋健太郎代議員(近畿ブロック)は、HPVワクチン接種の積極的勧奨の早期再開に向けての日医の方針について質問。松原副会長は、積極的勧奨を再開し、早期に接種率を高めなければならないとの判断から、日医では既に、①2014年に日本医学会と合同シンポジウムを開催②2015年に診療の手引きを作成③厚労省が本年1月に作成した、接種を検討している方、接種を受ける方、医療従事者向け『HPVワクチンに関するリーフレット』を『日医雑誌』4月号に同梱して会員に送付④国に対してはHPVワクチンに関する科学的根拠に基づく知見と最新の情報を国民に正確に伝え、ワクチン接種後の諸症状に適切に対応し、積極的勧奨を早期に再開するよう要望―などを行っているとした。
 その上で、積極的勧奨の再開には国民の理解の醸成が必要で、科学的根拠に基づく情報を届けることが大切であることから、日医が日本医学会と連携し、これまでに得られた知見を分かりやすく示し、理解を深めてもらうための合同フォーラムを開催する予定であることを報告。この開催が積極的勧奨を再開する国の判断につながることに期待を示した。

 

代表質問4 医療機関に与えられるべき「適正な利益水準」について

 橋本雄幸代議員(東京ブロック)からの①キャッシュ・フローも重視した「適正な利益水準」②「地域医療介護総合確保基金」の活用―についての質問には、今村副会長が回答した。
 ①については、「今後の医療提供体制の維持にとって、医療機関の経営の安定、すなわち適正な利益が必要なことは言うまでもない」との考えを示し、診療報酬改定に当たっては、根拠となるデータとして、医療経済実態調査のみならず、TKC全国会のデータ、キャッシュ・フロー等、総合的に検討して臨みたいとした他、「税制も重要な論点であり、年末の税制改正大綱に向けてしっかりと対応していきたい」と述べた。
 ②については、「地域医療にとって必要不可欠な医療機関の経営を安定させることが大原則である」と述べるとともに、私的医療機関への基金の補塡(ほてん)は、医療機関の計画配置につながりかねない懸念もあるとして注意を呼び掛け、基金を活用するのであれば、地域医療の公益性に資する医療機関であることを強く訴えてもらうことが大事であるとの考えを示した。

 

代表質問5 有効な医師偏在対策について

 徳永宏司代議員(中部ブロック)からの医師偏在が深刻な状況を迎え、都道府県の自主的な対策も限界を迎えつつある中で、真に有効な対策を問う質問には、中川俊男副会長が回答。
 同副会長はまず、「地域枠」について、その成果を分析し、次の対策につなげるとした他、将来の地域別の医療需要等に関して、日医と厚労省で分析したデータを都道府県に提示していくとした。
 医師偏在対策については、日医の各種取り組みを紹介した上で、「地域医療対策協議会における都道府県医師会の役割は極めて重要」との認識を表明。「新たな専門医の仕組みが偏在対策に資するのか」という懸念に対しては、「少なくとも医師偏在を助長することは絶対に回避しなければならない」と強調した。
 同副会長は最後に、「かかりつけ医機能を高め、全ての医師が、どの地域でも地域医療や地域包括ケアを担っていけるようにすることが究極の医師偏在対策ではないかと考えている」と述べ、国による強制的な仕組みを求める声が絶えない中、医師の自主的な判断を強力に支援する仕組みを模索することが偏在解消につながるとの見解を示した。

 

代表質問6 医師偏在是正に向けた医療法・医師法改正案について

 牧角寛郎代議員(九州ブロック)からの医療法・医師法改正法案成立後の、①臨床経験を多く積める地域医療の意義・魅力の発信②現場での労働環境の整備③昨今の若者気質を勘案した医学生・若手医師への倫理教育―を踏まえた日医の医師偏在対策を問う質問には、中川副会長が回答。
 ①については、各地の成功事例や問題点を日医で分析し、各都道府県医師会の取り組みを支援していく方針を示した。
 ②については、日医の「医師の働き方検討会議」で慎重に議論しているとした上で、問題解決のためには国民への受療行動のあり方に関する啓発や地域医療連携・多職種連携が重要との見方を示した。
 ③については、「日本医師会綱領」の理念をいかに行動レベルに落とし込むかが課題であり、医学生、若手医師のみならず、全ての医師と理念を共有し、行動変革につなげていきたいとした。
 また、同副会長は、これらを踏まえた対策として、医師少数区域で勤務する医師に対する所得税の優遇措置の検討に着手したこと等を紹介。「『あるべき医師配置への自主的な収れんを目指す』との方針の下、地域医療を守るという思いを共有しながら、医学生や若い医師を地域であたたかく育てていきたい」と述べた。

 

代表質問7 地域別診療報酬について

 藤原秀俊代議員(北海道ブロック)からの①地域別診療報酬に対する日医の対応と、都道府県医師会の今後の対応②医療保険の給付率・患者負担率を自動的に調整する仕組みの導入に対する具体的な日医の行動―を問う質問には、横倉義武会長が回答。
 ①については、既に「高齢者の医療の確保に関する法律」で規定されているが、都道府県ごとに関係者と「健康会議」を設置し、都道府県医師会でも住民の予防・健康づくりに積極的な取り組みを見せ続けることが診療報酬の特例の活用の抑止策になるとするとともに、「医療費削減ありきではなく、健康増進を目的とした政策の結果として医療費が削減されるという取り組みを地域において進めていくことが重要」と強調した。
 ②では、今回は自民党の「財政再建に関する特命委員会」の最終報告書を踏まえて「骨太の方針2018」からも文言自体は消えたものの、今後も同様の主張が繰り返されることへの警戒感を示し、引き続き「国民の安全な医療に資する政策か」「公的医療保険による国民皆保険を堅持できる政策か」という2つの判断基準に照らし合わせて、主張を展開していく方針を示した。

 

代表質問8 日医は国民の受療行動変革への積極的取り組みを

 橋本省代議員(東北ブロック)からの働き方改革に向けた対応や国民皆保険の維持のため、国民の受療行動の変化を訴えるための取り組みに関する質問には、横倉会長が回答した。
 国民の受療行動の変革については、これからの超高齢社会、人口減少社会に向け、現行の公的医療保険制度の下で、かかりつけ医機能を推進することが重要とした。
 また、大病院の直接受診の是正について、「再診時の定額負担の厳格化を求めることも考えられる」との見解を示した。
 更に、国民の側にも意識改革を促し、受療行動の変革につながるアクションを行う必要性にも言及し、「国民が適切な医療のかかり方をすることは、ヘルスリテラシーの一つ。そのリテラシーを高めることは医師会の使命である」と強調。国に対し、学童期からの社会保障や医療に関する教育も求めていくとした。
 その上で同会長は、「これからのまちづくりは、『地域包括ケア』『地域共生社会』がキーワードとなる」として、適切な医療を受けられる体制や各種広報を強化していく方針を示した。

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