定例記者会見 8月1日
横倉義武会長は、より適切な医学・医療用語の使用について日医の見解を示した。
同会長は初めに、国民の医療に対する関心は高く、社会保障の一部としても政財界から注目され、メディアでもさまざまな形で取り上げられているが、時代とともに治療方法が変化するのと同様に、疾患名の変更が行われることもあると説明。
その例として、①故日野原重明先生が、「成人病」と呼ばれていた糖尿病・脂質異常症・高血圧症・高尿酸血症などについて、生活習慣の見直しにより予防ができることを一般の人が分かるように「習慣病」と呼んでいたことを踏まえ、1996年に当時の厚生省が「生活習慣病」と名称を変更したこと②いわゆるボケ、医学用語で「痴呆症」と呼ばれていた認知機能の低下を示す疾患は、2004年度に厚生労働省が行政用語として「認知症」を用いることを決定し、現在は、医学用語としても使用されていること―を挙げた。
その上で、医療で患者に処方する薬は一般的にはひとくくりに「治療薬」と呼ばれることも多いが、実際は疾患を治すだけでなく、疾患発症の予防や、治癒は見込めないものの重症化を遅らせるために用いられるものもあるとした。
更に、昨今、特に高額な医薬品に関する話題が目立っていたが、中医協で、日医が、対象疾患と治療薬の特性を踏まえて検討する必要性を指摘し、(1)ソバルディ、ハーボニー等、重篤な疾患の治癒を目指す薬剤については、従来の治療による生涯医療費との比較を含めて議論する、(2)オプジーボ、キイトルーダ等、延命効果を期待する薬は、終末期医療のあり方も含め国民と共に丁寧な議論を行う、(3)レパーサ等、生活習慣病治療薬は、従来の医薬品では対応できない範囲に限定する―ことを提案したことを紹介。
また、医薬品のうち、アルツハイマー型認知症はその特性から治癒には至らず、患者に処方される薬も症状を和らげたり重症化の進行を遅くすることが期待されている薬であるという意味で、アルツハイマー型認知症の特に重度の患者に対しては「進行抑制薬」、もしくは「軽度改善薬」といった表現の方がより好ましく、「治療薬」と説明するのは不適切と言えると指摘した。
同会長は、「治療という語句のうち『治』の『なおす』の方が強調され理解されている現状があるが、『療』には『いやす』という意味もあり、それも医療の一環であることを改めて強調したい」と述べ、全ての医薬品が治癒を目的としたものではないことを踏まえ、まずは医師一人ひとりが患者・家族に適切な言葉を用いて丁寧な説明を心掛けることが必要だとし、報道関係者に対しても、治療薬や疾患の特性に応じた言葉の選択を求めた。
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