日医は12月14日、自由民主党・公明党より「平成31年度税制改正大綱」が公表されたことを受けて、長年の懸案であった「医療に係る消費税問題が解決」とする別掲のコメントを公表しました。
平成31年度与党税制改正大綱を受けて
2018年12月14日
公益社団法人 日本医師会 本日、自由民主党・公明党より「平成31年度税制改正大綱」が公表されました。今回の税制改正大綱をもって、長年の懸案であった「医療に係る消費税問題について解決」と考えております。 この問題の解決に向けて、都道府県医師会より各地域から選出されている国会議員の先生方に地域の実情を訴えていただいたことが実を結んだ結果であります。また、ご尽力いただきました、自由民主党の宮沢洋一税制調査会長、野田毅税制調査会最高顧問、後藤茂之税制調査会幹事をはじめとした税制に造詣の深い国会議員の先生方に深く感謝申し上げます。 昨年度の税制改正大綱では、医療に係る消費税のあり方について、「平成31年度税制改正に際し、税制上の抜本的な解決に向けて総合的に検討し、結論を得る」と明記されました。 非課税還付方式は消費税の基本的な仕組みと相容れないとの指摘があり、また、医療に対する消費税の課税について国民の広い理解を得ることは困難であったことから、本年8月に三師会・四病院団体協議会(四病協)で「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言-消費税率10%への引き上げに向けて-」を公表いたしました。 その後、本提言をもとに政府・与党、関係当局と検討を重ねるとともに、改めて、11月22日に三師会・四病協で「地域医療を支えるための税制改正要望(最重点事項)」をとりまとめ、要望いたしました。 その結果、まず、控除対象外消費税については、消費税率が5%から8%へ引き上げられた時と同様の方法により、全額補てんされ、基本診療料へのきめ細やかな配分が精緻に行われます。11月21日の中医協「医療機関等における消費税負担に関する分科会」で示されたシミュレーションによると、補てん率はいずれもほぼ100%となり、補てんのバラツキは相当程度是正されると見込まれています。7月に厚生労働省の集計ミスにより、消費税率5%から8%への引き上げに伴う診療報酬での補てん率の大幅な下方修正が行われ、補てん不足が発覚しましたが、多くの医療機関が多大な不利益を被ることとなり、大変遺憾でありました。このようなことがないよう、実際の補てん状況を丁寧な確認作業により定期的に継続して検証し、必要に応じて見直していくことになります。 これにより、控除対象外消費税の問題は対応できるものと考えています。 一方、高額な医療機器の購入にあたっては、医療機関の消費税負担も高額となります。消費税率8%への引き上げ後、医療機関の設備投資が大幅に減少しました。そこで今回、法人税・所得税に対し、設備投資への支援措置が行われることになりました。 今回、「医師及び医療従事者の働き方改革の推進のための器具・備品、ソフトウェアの特別償却」、「地域医療構想の実現のための病院用等の建物及びその附属設備の特別償却」の2つが新たな仕組みとして導入されました。従来の「高額な医療用機器特別償却制度」の延長を含めた3点において、特別償却の拡充・見直しがなされます。これにより、医療機関の設備投資が促進され、患者さんが新たな医療の恩恵を受けやすくなることが期待できます。 精緻な配分と定期的な検証による「控除対象外消費税への対応」と新たな仕組みを含めた「設備投資への支援措置(特別償却の拡充・見直し)」はそれぞれ別の観点ですが、この2つによって税制を含めて全体で医療に係る消費税問題が解決されたものです。 次に、事業承継税制についてです。 日本医師会は、地域に必要な医療を確保するため、医業承継時の相続税・贈与税制度について、個人に係る医業承継資産の課税の特例制度の創設を求めてまいりました。これを受け、厚生労働省と経済産業省からは、個人事業者の事業承継を円滑に行うため、一定の要件の下で個人事業者が活用していた資産に係る相続税・贈与税の特例を認めるなど、事業承継時の負担を軽減するための措置を創設する要望がなされました。 今回、国税の相続税等において一定の措置がとられたことにより、地域を支える全国約42,000の個人立病院・診療所の円滑な事業承継がなされるものと考えています。 これまで、中小医療機関は中小企業の支援から外れることが多かったですが、中小企業と同等の扱いが受けられるようになったことは一定の評価をしています。 今後も日本医師会は地域医療を支える医療機関の経営が安定し、地域の住民が新たな医療の恩恵を受けられるよう、政府に求めてまいる所存です。 |