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平成31年(2019年)2月20日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

過酷な勤務に苦しむ医師が希望を持てる制度を目指す

1月23日 定例記者会見

 横倉義武会長は、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(1月11、21日開催)で示された、診療に従事する医師の時間外労働時間についての事務局案を受け、内容が国民に正しく伝わっていない側面があるとするとともに、改めて日医の見解を説明した。
 同案では、(1)2024年度からの新制度では時間外上限時間は年間960時間とする、(2)ただし、地域医療を守るため、各都道府県が認めた医療機関の医師について、年間1900時間から2000時間の時間外労働の暫定特例水準を認める―ことが打ち出されている。
 同会長は、医師の働き方改革においては「医師の健康への配慮」と「地域医療の継続性」の両立が重要であるとした上で、「事務局案は医療機関の時間外上限時間を原則960時間とするものである。これを超えた暫定特例水準での勤務をお願いする際の仕組みを検討しているのであって、全ての医師に暫定特例水準で働くことを強いるものではない」と強調。暫定特例水準の設定に当たり、使用者と労働者間で「36協定」を締結する際にも、暫定特例水準を法令上超えることはできず、暫定特例水準内であっても労働者が拒否できることを説明した。
 一方、厚労省が実施した調査では、この時間を超過している医師が10%(約2万人)いたことに言及し、「調査後の取り組みにより、現在は徐々に少なくなっているものと思われるが、まずは議論を取りまとめることによって、これらの医師を最優先で守ることに焦点を当て、追加的健康確保策を取りつつ、地域医療への影響を最小限に食い止めなくてはならない。勤務医の健康を守るためには、各医療機関がさまざまな取り組みを進めることにより、一般労働者と同じレベルまで労働時間を下げることを目指す継続的な努力が必要である」との見解を示した。
 また、この問題の解決のためには、医師が高い倫理観で患者の生命を救おうとした時に、労働時間の関係で罰せられたり、罰則適用で地域医療が崩壊することのないような制度設計が求められるとするとともに、一律の規制では、①救急医療の制限や撤退②外来を始めとする医療提供体制の縮小③産科・小児科・外科の撤退―など地域医療に影響が出る恐れがあると指摘。「医師の働き方改革によってフリーアクセスが著しく制限されるなど、国民皆保険を揺るがすようなことがあってはならない。拙速に改革を進めることで、地域医療が崩壊してはならず、慎重に見直しを行いながらソフトランディングしていくべきである。国民が不利益を被ることがないよう、医師会として引き続き主張していく」と述べた。
 更に、医師の働き方の新制度が施行される2024年4月までの5年間に、上限時間の見直しや、地域医療への影響の継続的な検証、経過措置の検討などを行うべきであるとし、「一部の医療機関に限定した『地域医療確保暫定特例水準』は、地域の実情に応じて柔軟に対応できるようにするべきだが、地域の医師会及び各医療機関が5年間最大限努力することにより、結果として少しでも多くの医療機関が暫定特例水準を適用しなくなるよう、引き続き尽力していく」と強調。3月末の同検討会の取りまとめに向けて、過酷な勤務に苦しんでいる医師が希望を持てるような制度が構築できるよう努めていく姿勢を示した。

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