日医定例記者会見 5月22日
松本吉郎常任理事は、会内の外国人医療対策委員会(委員長:渋谷健司前東大大学院教授)が会長諮問「地域医療における外国人医療提供体制のあり方について」を受けて中間答申を取りまとめたことを報告し、その概要を説明した。
中間答申は、(1)共通、(2)訪日外国人、(3)在留外国人―を柱に構成され、(1)では、外国人に対する医療提供体制の実態を把握するため、厚生労働省が行う「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」を今後も継続することを求め、複数存在する医療機関のリストを一本化することを提言している。
また、訪日外国人への保険加入の更なる勧奨や、医療機関が加入している保険の内容を確認できる仕組みが必要だとし、在留外国人に対しては、国民健康保険等、わが国の医療提供体制を周知し、相談センター等を整備する重要性にも触れている。
多言語対応については、医療行為時だけでなく、院内の情報・広報や受付・会計時の本人確認、医療費未払いの予防オペレーション等にも必要になると指摘。通訳事業者との契約については、地方自治体などが地域の医師会の十分な関与の下で契約することを求め、医療通訳に関わる費用は、自由診療・保険診療を問わず別途請求が可能であることを更に周知すべきであるとした。
都道府県に設置する外国人医療対策協議会においては、経験豊富な民間団体等のノウハウを活用してワンストップ窓口を設けることを提言している。
(2)では、内閣官房が、過去に医療費不払い等の経歴がある訪日外国人に対し、入国審査を厳格化する方針を打ち出していることを記載。未収金発生の予防策として、まず医師自らがどこまで医療を提供するかを十分に考える必要があることに言及するとともに、未収金に対する公的補助の支援を提言している他、円滑な支払いの支援として、医療機関におけるキャッシュレス化の推進を掲げている。
(3)では、健康保険の不適正使用は外国人だけの問題ではないとした上で、在留外国人の人権、医療機関への負荷、適正な保険適用に向け、バランスの取れた制度設計が必要であることを指摘。定住外国人等の本人確認の問題について、国へ改善を求めていくことを提言している。
この他、市町村によって異なる予防接種の問診票の様式を共通化することや、在留外国人に国民皆保険であるわが国の医療保険制度を周知する重要性が強調されている。
同常任理事は、「オリンピック・パラリンピックの開催を控え、早急に外国人に対する医療提供体制を整えるべく中間答申を行ったが、年度内の本答申取りまとめに向け、更に検討を深めていく」と述べ、訪日外国人の保険加入の促進やキャッシュレス化など未収金対策を課題に挙げた。
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