令和元年(2019年)10月20日(日) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース
地域医療構想の実現に向けて~具体的対応方針の再検証を要請された公立・公的医療機関等の公表を受けて~
横倉義武会長、中川俊男副会長
日医定例記者会見 10月2日
厚生労働省が9月26日開催の「地域医療構想に関するワーキンググループ(WG)」において、具体的対応方針の再検証を要請する公立・公的医療機関等424病院のリストを公表したことを受け、横倉義武会長と中川俊男副会長は日医の見解を述べ、「再編・統合」という言葉が先走ったことに懸念を示すとともに、地域の実情を踏まえて議論を尽くしていくことを求めた。
まず、横倉会長は、「公表の結果、大きな混乱が生じている地域もあり、大変な危惧を抱いている」と強調。「今後、人口の減少に伴って現在の機能の病床数が不要になる、あるいは機能が変更・縮小していく地域がある」との認識を示した上で、「一部マスコミの報道では、『ダウンサイジング』の趣旨が省略され、『再編・統合』という言葉のみが先走った。その結果、地域の住民が近くの病院がなくなるのではないかという懸念を抱いたことも混乱の一因である」と述べた。
また、高齢者人口の増減には地域差があり、地域のニーズや人口減少に応じて、病床の機能は変化するとした上で、「急激に病床を再編すると地域医療に混乱をもたらす可能性があり、地域でしっかりと議論し、患者さんや地域住民を不安にさせることがないようにソフトランディングをしていく必要がある」と指摘。地域医療構想調整会議(調整会議)において、今回の分析方法だけでは判断し得ない地域の実情を加味して議論を尽くすよう要望した。
公表された医療機関の中に医師会病院が入っていることについては、地域医療支援病院である医師会病院が「公的医療機関等2025プラン」の策定対象となっているためであると説明。医師会病院は、地域のかかりつけ医の紹介によって入院患者を受け入れる一方、必要な治療や検査等を行った後は、住み慣れた場所で引き続き医療を受けられるよう地域のかかりつけ医へつなげるなど、地域医療の中で重要な役割を果たしていることを概説し、「こうした医師会病院の主たる機能に関しては、今回、再検証要請の根拠となる指標には入っていない。医師会病院が果たしている役割について今後の調整会議の中でしっかりと主張し、地域の医療提供体制を守っていく」との姿勢を示した。
引き続き、中川副会長が、公表に至る経緯として、まず、今回の公表内容は厚労省が「経済財政運営と改革の基本方針2019」を踏まえ、公立・公的医療機関等の役割が民間医療機関では担えないものに重点化されているか、具体的対応方針の再検証を求めることを決め、WGにおいて、2017年度病床機能報告データに基づき審議されてきたものであると説明。
また、選定に当たっては分析対象の総医療機関数4549機関のうち、高度急性期と急性期を持つ公立・公的医療機関1455機関を対象とし、公立・公的医療機関等の役割重点化の「A.9領域の分析項目で診療実績が特に少ない場合」または、「B.6領域の分析項目で構想区域内に、一定数以上の診療実績を有する医療機関が二つ以上あり、かつ、お互いの所在地が近接している(類似かつ近接)場合」に該当する424機関(人口100万人以上の構想区域の「B.類似かつ近接」については、対象機関から除外)が公表されたとした。
その上で、同副会長は、日医はこれまで構想区域内において同じ医療機能を持つ、民間医療機関と公立・公的医療機関等が競合すると判断された場合には、公立・公的医療機関等は身を引くべきであると主張してきたと説明。その根拠として、「総務省自治体戦略2040構想研究会第一次・第二次報告の概要(抜粋)」資料を示し、2040年までの市区町村の人口増減率の図表を基に、人口減少により中長期的には各構想区域のほとんどが需要減になると指摘するとともに、公的資金の投入状況や開設主体別の税制の資料を示し、財政上や税制上の優遇措置等の状況が異なることがあるとした。
更に今後については、国が機械的に分析した結果に対し、全国の調整会議が地域の実情を十分に踏まえて結論を出すべきであると強調。今回公表するに当たりWGにおいて、(1)全国の調整会議を活性化させるものであり、議論の方向性を限定させるものではない、(2)対象機関以外にも調整会議の議論により再編・統合やダウンサイジング等を要請されることがあり得る、(3)開設主体ごとに公費の投入や税制優遇措置の温度差が大きい実態を踏まえ、調整会議が地域の実情を勘案し方向性を決める―ことについて確認したことにも触れ、「対象機関にリストアップされ再検証を要請されたのは、具体的対応方針を変更することを前提としたものではないことを確認している」と述べ、報道する際にも留意頂くよう要請した。
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