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令和元年(2019年)11月20日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

財政審の議論を受けて日医の見解を示す

緊急記者会見

 横倉義武会長は11月1日、緊急記者会見を行い、同日に開催された財務省の財政制度等審議会財政制度分科会で医療分野について議論が行われたことに対する日医の見解を明らかにした。
 冒頭、横倉会長は、「何も反論しなかった場合、財政審等の議論や提言が既成事実化してしまう」と危機感を示し、今後も適宜意見表明していく考えを示した。
 その上で、同日行われた議論については、まず、同分科会の資料において、2007年度を100とした診療報酬本体改定率が賃金・物価水準よりも伸びているとするグラフが使用されていることに対して、「指数の動向はどの年度を起点とするかで大きく変わってくるものである。第二次安倍政権が始まった2012年度を起点とすると、2018年度の診療報酬本体の水準は賃金や物価よりも低くなる」と述べるとともに、これまで日医として繰り返し主張してきたにもかかわらず、今回も恣意的(しいてき)な資料が提出されたことに不快感を示した。

診療報酬の引き上げは地方創生にもつながる

 また、政府が産業界に改めて賃上げを要請するなど他の産業が賃上げを行う中で、全就業者の11・9%を占める医療・福祉従事者にも適切な手当てを行うことの必要性を強調。「医療従事者だけが取り残されることがないようにしなくてはならない」と述べるとともに「それにより、経済の好循環が達成できるだけでなく、特に医療従事者の就業率が高い地方等では、地方創生への多大な貢献につなげることができる」とした。
 その他、一般病院と一般診療所の収益率を比較し、診療所が病院を上回っていることから、"結果として必要な点数配分がなされていないのではないか"との指摘に対しては、診療報酬は中医協において支払側、診療側、公益側の丁寧な議論によって決められていることを説明するとともに、「病院の収益率が低いのは、消費税率8%への引き上げに伴う診療報酬による補てん状況調査において、厚生労働省の計算上の誤りにより、病院の補てん率が約8割にとどまっていたことが大きな理由として考えられる」と指摘。再発防止の徹底や、実際の補てん状況の定期的・継続的な検証・見直しを求めた上で、「11月に公表予定の『医療経済実態調査』の結果を踏まえ、医療機関の経営を加味した適切な判断が必要である」と述べた。

受診時定額負担の導入は容認できない

 更に、受診時定額負担の導入が提言されていることについては、かつて廃案となった経緯を紹介し、「国民にとって良いとは言えない案」と断言。「『大きなリスクは共助、小さなリスクは自助』という議論もあるが、公的医療保険には、既に、小さなリスクは『定率負担』、大きなリスクは『高額療養費』で対応するという基本的な考え方が組み込まれており、受診時定額負担は、こうした基本的考え方を大きく転換するもの」と述べた上で、公的医療保険では最大3割とする患者負担の原則を破ることは容認できないとの姿勢を示した。
 その上で同会長は、「財政論に基づくリスクに応じた保険理論と、社会保障としての国民皆保険とは違うものである」と述べ、財政的な事情でのルール変更は、社会保障としての国民皆保険の理念に反するものと強調し、理解を求めた。

キーワード:受診時定額負担とは
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 初診・再診料における定率の窓口負担とは別に、一定の金額を患者から徴収しようとする仕組み。日医は、社会保障としての国民皆保険の理念に反するものだとして、かねてよりその導入に強く反対している。

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