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令和2年(2020年)2月20日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

『超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き4.脂質異常症』を作成

日医定例記者会見 1月29日

 『超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き』については、日本老年医学会の協力の下、2017年9月に総論編「1.安全な薬物療法」、2018年4月に「2.認知症」、2019年5月に「3.糖尿病」を発行しているが、今般「4.脂質異常症」を作成したことから、江澤和彦常任理事が、その内容を説明した。
 同常任理事は、まず、日本における脂質異常症の総患者数(継続的に医療を受けていると推測される患者数:平成29年)が220万5000人で、特に、女性の場合は閉経前後から脂質異常症が増加し、今後更に、食生活の欧米化や運動不足などによる動脈硬化性疾患の増加が懸念されていること等を説明。
 その上で、高齢者の脂質異常症の特徴として、(1)成人に比べ動脈硬化性疾患の発症リスクが高い、(2)脳血管障害、冠動脈疾患を発症した後の予後不良で、要介護状態となるリスクも高い―ことを挙げ、「動脈硬化性疾患の一次予防、二次予防に向けて適切に管理することが極めて重要になっている」と指摘。その治療法は、非高齢者の脂質異常症と同様に食事・運動療法を基本として、患者の身体状態を十分に把握した上での実施が求められているとした。
 加えて、「脂質異常症は痛みやかゆみなどの自覚症状がないために、患者が積極的に治療に取り組まない場合もあり、進行を防ぐためには適切な治療を続けることの重要性を患者に伝え、治療の意義を理解してもらう必要がある。そのため、今回の脂質異常症編では、『脂質管理目標値』として、リスク区分別の目標値の考え方を示すとともに、脂質異常症のスクリーニングのための『冠動脈疾患予防から見たLDLコレステロール管理目標設定のためのフローチャート』の他、専門の医師との連携が必要な例示等を掲載している」と述べた。

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 更に、薬物療法を行う場合には、喫煙や食事など患者の生活習慣や合併症を確認し、他の動脈硬化性疾患のリスクの有無に応じて慎重な判断が求められるとするとともに、一般的にはスタチンが第一選択薬となるが、高齢者は複数の疾患に罹患(りかん)していることも多く、それぞれの併存疾患に対して投与された薬剤同士で薬物相互作用が起こりやすいことから、それに起因する副作用の発現を懸念。参考資料として、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版」を基に作成した、「高齢者脂質異常症の治療において注意を要する薬物と推奨される使用法」を掲載していることを紹介した。
 同常任理事は最後に、本手引きを多くのかかりつけ医が患者の服薬管理を行う際の参考資料として広く活用することで、多剤併用による副作用の発現リスクを減らし、より質の高い医療提供につながることに期待感を示すとともに、次年度は、"高血圧症"についても同様の手引きを作成する意向を示した。
 ※なお、本手引きは、日医ホームページ(/doctor/sien/s_sien/008610.html)からダウンロードが可能となっているので、ぜひご活用願いたい。

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