横倉義武会長は、東日本大震災の発災から9年が経過したことへの所感を述べた。
同会長は、まず、9年前の同日に起こったマグニチュード9・0というわが国の観測史上最大の地震となった東日本大震災について、死亡者1万5899人、行方不明者2529人、災害関連死3739人が認定に及ぶ未曾有(みぞう)の大災厄であったとその被害の甚大さを改めて強調。今もなお、約4万8000人が避難を余儀なくされているとして、「犠牲になられた方のご冥福を心からお祈りするとともに、被害者の方々にお見舞い申し上げる」と述べた上で、被災地で再び地域医療を担っている医師、医療従事者達にもエールを贈り、「被災地となった地域の医療の復興を、引き続き支援していく」との意向を示した。
更に同会長は、「東日本大震災は、福島第一原子力発電所事故による複合災害と長期にわたる広域避難をも引き起こすなど、阪神・淡路大震災以来構築されてきた日本の災害医療体制を大きく揺さぶるものでもあった」と指摘。「南海トラフ巨大地震がいつ起きてもおかしくない今、多数の犠牲者のためにも、震災から得た教訓を未来に向けて生かしていかなければならない」との決意の下、全国医学部長病院長会議と共に立ち上げた「被災者健康支援連絡協議会」を発展させてきた他、その会長の立場で「中央防災会議」委員として参画し、現在、国の防災行政の中で医療の位置付けを高めるべく努めていることなどを説明した。
また、JMAT活動については、JMAT研修事業(平成30年)や人工衛星による災害時情報通信訓練の他、被災地を所管する県医師会が自ら編成した「被災地JMAT」の派遣など、都道府県医師会の災害対応能力も高まってきていることを紹介。「東日本大震災以来、各医師会が重ねてきた努力の賜物と言える」との見解を示すとともに、先般、大黒ふ頭のクルーズ船の乗客・乗員に対するヘルスチェックという前例のない活動を行ったことにも触れ、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉県、東京都の各医師会を始め、全ての関係者の尽力に対して感謝の意を示した。
その上で同会長は、少子高齢社会が到来する中で、要配慮者及び被災者の生命・健康や地域社会を守るためには、国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)とともに、地域の医療・介護体制の強靭化が重要になると指摘。その実現のためには、平時からの地域包括ケアシステム、医療・介護連携を中心としたまちづくりこそが最大の災害対策になるとの考えの下、加藤勝信厚生労働大臣に「今後の災害に備えた地域医療体制の強靭化に関する要望」(令和元年11月)等を提出したことを報告した。
最後に、横倉会長は、現在、災害対応能力の再点検と対策の充実に向けた検討を開始したこと、また多くの方に参考にしてもらうため、過去10年の活動をまとめた記録集も制作予定であることを明らかにし、日医の活動に対する引き続きの理解と協力を求めた。
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