松本吉郎常任理事は、新型コロナウイルス感染症に関する診療報酬上の対応等として、5月8日に持ち回り審議で、5月13日にWEB会議で開催された中医協の議論について、それぞれ解説した。
8日は、新型コロナウイルス感染症の治療薬である「レムデシビル」について、同7日に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」上の特例承認によって迅速承認されたことを踏まえ、保険診療上の取り扱いが検討され、保険外併用療養制度の評価療養を利用することで、保険適用前の同医薬品を、保険診療の中で使用可能となったことを報告した。
この点について同常任理事は、「非常にスピード感のある対応がなされたと受け止めている」と評価した上で、審議の中では、(1)本剤は特例承認されたものであり、現時点での有効性、安全性に関する情報は極めて限定的であることから、現在実施中の治験結果など、新たな情報が得られ次第、速やかに本剤の適正使用に必要な情報を医療現場に提供する、(2)無償提供の間は公的な管理の下で流通させるとしているが、供給量が極めて限定的とのことであるので、医療機関への配分に当たって、公的な管理の下、混乱のないよう、必要な患者に適切に使用できるような体制を早急に構築する、(3)効能効果は「SARS-CoV-2による感染症」であるが、「効能又は効果に関連する注意」で重篤な患者に対象を絞っているため、実施中の治験データなど新たな知見が得られれば速やかに対象拡大するよう、厚生労働省医薬・生活衛生局と連携し企業を指導する、(4)医療上必要な医薬品は速やかに薬価収載することが基本であり、公的な管理が必要でなくなる見通しが立てば、速やかに薬価収載の手続きをするよう国として尽力する―こと等、6点の要望をしたことを紹介。
その要望の背景については、「同感染症の治療手段の開発は、今、全世界で取り組まれており、ようやくその一つが前例のない迅速な手続きによって、臨床現場に届くようになったことは評価しているが、今後の知見の集積やフォローアップも大事になる」と説明した。
13日の議論の説明では、COVID-19の抗原検査キットが保険適用されたことについて、「対象となる患者や施設の考え方は、症例の集積を待つ必要があるが、新たな検査手段が増えたことに関しては大変評価している」とした。
財政的な支援を要望
また、中医協では議題に上がっていなかったものの、同感染症の影響による医業経営面への影響が緊急性を要する大きさになっていることから、財政的な支援を要望したことを報告。「医療機関は、赤字だからといって医療の質を下げることはできず、医療提供体制を縮小させることも簡単にはできない」と強調。地域の医療インフラを崩壊させないためには、感染症以外の患者を診療する通常の医療提供体制の維持も重要であることから、「今後は、診療報酬や緊急包括支援交付金等を組み合わせることで、地域の医療提供体制が維持できるような財政的な支援を検討していく必要がある」とした。
その他、記者からの質問に答える形で、同日、約1億6700万円で薬価収載された脊髄性筋萎縮症治療薬「ゾルゲンスマ」に対する日医の見解を説明。「米国における価格からすると、だいぶ価格を抑えることができた。それでも桁違いに高額であることに変わりないが、同薬を待ち望んでいた患者や家族にとっては、今回の保険適用は大変喜ばしい知らせになったのではないか」とした上で、「今後、高額な遺伝子治療薬が次々と登場してくることも予想される中で日本のきめ細やかな薬価制度が、その動きにどのように対応していくかが問われている」との考えを示した。
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